2013年12月28日土曜日

応用地形判読士の二次試験をやってみました(2)

まづ目を引いたのは、凡例の記入例として「火砕流台地」があること。肘折火山は火砕流台地があるのでは?と思いつつ、記入例の真っピンクの色付けは無視しました。

知識として肘折はカルデラ火山であることを知っていたのですが、文献によっては軽石流堆積物というものも
あって、空中写真判読と読図だけでここまで物性を特定できるのかと思いつつ、、、

メインテーマはキャップロックによる地すべり災害でしょう。押し出しに伴う河道閉塞や、洪水・落石災害にも着目しました。

改めて鈴木先生の読図P646-648を読みました。先生の読図結果と私の案が大きく異なるのは、

①「湖成」と定義していないこと
 カルデラであることはわかったのですが、規模からみて厚い段丘堆積物が形成できる程、湖が長持ちしえただろうか?という疑念が生じてしまい、「カルデラ台地」という造語を作ってしまいました。

②マールを定義できていない。
 先生の読図結果にある「マール」の部分が、なにか不自然な屈曲があり物性が違うなあ、とは思ったのですが特定できませんでした。

③ほか、小松倉北部の緩斜面の解釈で、先生は地すべり、私は火砕流台地としている。湖成段丘縁辺の崖錐の規模、志賀山の西側の緩斜面の解釈(先生は地すべり、私は崖錐)、三角山南部の火砕流台地の記載もれ

等でしょうか。「湖成」を用いなかったところは減点対象でしょうか。

応用地形判読士の二次試験をやってみました(1)

お世話になっております。応用地形判読の今年の二次試験の問題を解答してみました。2時間という時間制限を自ら設け、800字の原稿用紙は自前のものを用意しました。

①午前中の問題

問題を解く前に気がついたこと
・後に調べてみたら、まずこの地域ズバリの文献が存在していました。

太田陽子他(1992):佐渡島の海成段丘をきる活断層とその意義
 地学雑誌,Vol. 101 (1992) No. 3 pp.205-224

 多くのテーマを盛り込もうとして、結果としてメインディッシュが分かりにくく、全てが脇役的である。段丘対比を考えようとしたら南西側が足りないし、国中平野の水害地形を考えようとしたら、北東部が足りない。波打ち際の災害についても解答できればよかったのですが、、、

2013年11月12日火曜日

永字八法と応用地形判読

 小学校の恩師と話す機会があり、永字八法の話になりました。「永」という字には、字を書く際の基本的な8つの技法がすべて含まれているというものです。書こうとする文字の成り立ちと8つの基本的な構造を認識することで、整ったきれいな字がかけるということです。

http://www.maebashi-hs.gsn.ed.jp/tokushoku/sogo/h24_2/07.pdf

 地形判読におきかえると、地形種の認定ばかりに気をとられていて、整った(美しい)判読図を作成する技法を解説したものは皆無です。含蓄に富む名文も、誤字脱字や文字が整っていなかったりすると、実用的かつ感動を与えるものにはなりません。

2013年11月4日月曜日

災害とイメージ

<土砂災害>危険箇所4割が「警戒区域」未指定…伊豆大島も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131103-00000003-mai-soci 
都道府県が土砂災害の恐れがあるとして抽出した52万5307カ所の「土砂災害危険箇所」のうち、4割以上が土砂災害防止法で定められた「土砂災害警戒区域」に指定されていないことが分かった。(途中略) 国交省によると、これまでに指定を終えたのは青森、栃木、山梨、福井、山口の5県のみ。秋田、岩手、愛媛県などは指定率が2割前後と低い。秋田県河川砂防課によると、指定で「災害に弱い」というイメージが生じ、不動産価値が下がると懸念する住民もいるため慎重にならざるをえないという。----------------------------------
 これはよく言われていることですが、こうして記事になることは意外と少ないと思います。記事ではハザードマップの作成する重要性も指摘しています。しかし、このマップにしめされた範囲は、予想の不確実な土砂の流れを、おおむねこんなものだろう、これくらい想定しておけば無難だろうという感覚で作成されています。 たとえば、土石流危険渓流の想定氾濫域には、この規模の渓流をしてこの氾濫域の広さはないだろうということも多々あります。土と石が流れる状態にあるかどうか、という話ですが、たとえば傾斜が2.00°あるというだけで、土砂が河成岩石段丘の末端まで達している想定がありますが、地形発達史的背景から考えて1万年も土石流に覆われていない地形場(災害環境)である、、という議論を踏まえると、「災害に弱いイメージ」もそんなに広がらなくてすむはすなのです、、、、、

2013年10月30日水曜日

関西大学文学部 地理学・地域環境学教室のHP

 しらない間に出身教室のHPがリニューアルされていました。すごく洗練されたHPに仕上がっていてびっくりしました。

 関西大学文学部 地理学・地域環境学教室
 http://www2.kansai-u.ac.jp/kugeoenv/index.html

 私がいたのは91~95年ですので、まだwebという概念も教室にはなく、史学・地理学科と称していたので完全に独立してはいませんでした。その後(特に2000年代に入り)、いろんな学部の名前にカタカナが増え、地理学教室も「地圏」とか「環境」とか「○○システム」などど名前を変えていきました。そのうち”地理学教室”はなくなるんではないかと話したこともありました
 昔から人文地理が多いので、卒論のタイトルや就職先をみても地質コンサル、建設コンサルに就職する人が少ないのも変わっていません。ただ、測量士補を取得できるようになりました。JABEEによる技術士補も取得する方向に行っているようです。発展を期待します。

2013年10月24日木曜日

深層崩壊という用語

 深層崩壊という用語が度々マスコミに登場し、その地形的予測に関する仕事も増えました。用語としては”はやっている”状態です。最近、千木良先生が「深層崩壊」という本も出版されました。
 さて、千木良先生が主体となって開催された京都大学防災研究所の特定研究集会「深層崩壊の実態、対応、予測」では”私見”として以下のように述べられています。

 http://www.slope.dpri.kyoto-u.ac.jp/symposium/DPRI_20120218proceedings.pdf
 深層崩壊という用語をきちんと定義しておくべきだ,という意見をしばしば耳にするが,以下に私見を述べる。深層崩壊の意味は,それと類似した用語である大規模崩壊や巨大崩壊の用語が意味するところを考えると理解しやすいと思う。後二者は,いわば平面的に見て規模(面積)が大きいことに注目したものである。おおよそ 10 万㎥以上の崩壊が大規模,100 万㎥以上が巨大,と言われているのが一般的であるように思えるが,これらは厳密に定義されたものではない。これらの用語に厳密な定義がないことは衆目の認めるところであろう。しかし,これらは「規模が大きく,移動速度が大きく,その被害も甚大である」ということを容易に想起させ,“便利な”用語であると言える。これは日本だけの事情ではなく,英語圏でも large  landslide,  gigantic  landslide はごく一般的に用いられている用語であるが,いずれも明確な定義はない。(途中略),「斜面表層の風化物や崩積土だけでなく,その下の岩盤をも含む崩壊で,地質構造に起因したもの」であることを特徴としている。深層崩壊を強いて定義するなら,こうなるであろう。

 鈴木隆介先生の地形図読図入門では、「基盤崩落」という用語で、大規模で急傾斜の谷壁斜面、谷頭斜面や尾根の一部が、地質的不連続面とはほとんど無関係なせん面を境に、急激に破壊し、径数百mの巨大岩塊を含む物質が一団をなして急速に滑落する現象

 と、移動プロセスを含め定義されています。
 個人的には「深層」という言葉が一般用語に近く、「基盤」という言葉が専門用語に近い印象は持っています。羽田野誠一さんは「地崩れ」と呼び、私の周りでは大規模崩壊と呼ぶ人が多いのもまた事実です。
 斜面の防災地形・地質にかかわる研究者・技術者が古くから悩み続けているテーマであり、ハード面でもソフト面でもこれといった対策もないように思います。ただ、最近になって急激に増えた印象をあたえる報道の仕方は?です。

2013年10月20日日曜日

応用地質学会

今年の応用地質学会は私の誕生日に開催されます。ポスターセッションのネタを2つもっていて、やっと目途がつきました。ほぼ10~20年に一度の豪雨で深層崩壊が発生しているという地形変化の激しい流域で、魚のうろこのような判読図を作成しました。地形に対応して岩盤の種類や災害形態、頻度を読みかえることができるようにデータベースを構築中です。

2013年9月9日月曜日

深層崩壊地形の判読 - 応用地形判読

 深層崩壊が起こると、その斜面はしばらく(おそらく数百年以上は)抜け殻になります。ただ、表層崩壊が繰り返し起こり、いわゆる”岩が近い・浅い”状態になった地形も、ある意味抜け殻なので、空中写真で判読することは容易ではありません。
 浜松の茶畑にしても昨年の九州豪雨にしても、攻撃斜面であったり、孕んでいたり、千木良先生のいうところの"生活習慣病"的な地形種が分布する箇所を抽出するのですが、実際そんなに簡単なことではありません。
 今日届いた地盤工学会誌は「近年における斜面災害」というオーソドックスなタイトルの特集号でしたが、実際には構造地質学、第四紀後半の地殻変動、海水準変動、降水量変動など、多くの背景(災害環境)を広く把握できるような情報を提供することも、応用地形判読の役割です。

2013年9月3日火曜日

応用地形判読図の一例

 でかい画像ですが、、、地すべり学会誌に投稿した微地形分類図です。論文には「微地形分類図」と書きましたが、斜面防災を強く意識したので「応用地形判読図」といえましょう。
 さて、上の図でいう崩落崖と1990年空中写真の崩壊地の縁辺は、ほぼ後氷期侵食前線に該当すると考えています。それを示すためには、大河川まで広範囲に至る判読図を作成する必要があり、投稿に間に合わないため割愛しました。また、初生的な地すべりは地すべりブロックⅠであり、その地すべりの滑動に対応する段丘地形も残されています。
 不安定土塊のなかにはクラックや段差地形が多く認められますが、これは2年前の台風により発生した崩壊によって生じた応力解放に伴うものと考えられます。よって、この範囲は、地すべりの地形発達史の段階がひとつ進んだことになると考えています。不安定土塊内のガリーやクラックの分布状況から、今後豪雨によって地すべり(深層崩壊)がどの程度の規模で発生するか、推定することもできます。
 このように地すべりであれば、その発生から安定化に至る過程を推定できるような情報図を作成することが、応用地形学図、ひいては応用地形判読士にも求められるのではないでしょうか。

2013年9月1日日曜日

私の学会投稿 - 応用地形判読

最近地すべり学会誌と応用地質学会誌に、私が大きく関わった投稿が掲載されました、両方とも空中写真判読をもとに地形分類図(応用地形判読図)を作成したものです(両方とも私が第一著者なのですが、図面の一部を抜粋して掲載します)
 応用地形判読士の二次試験は、低地及び斜面に関する空中写真判読図を即興で作るものだと聞いていますが、地すべり学会誌に投稿したものは斜面編、応用地質学会誌に投稿したものは低地編ということになるのでしょうか。
 地すべり学会誌に投稿した報告は、斜面の植生の乱れを指標として検出した不安定領域と既往の崩壊地の規模、経年変化から、その斜面における地すべり地形の発達史を考察したのものです。
 応用地質学会誌に投稿した図面で工夫した点は、支谷閉塞低地や河成堆積低地など、地形種とその地形場(形成環境)を表現できる用語を使った点です。これらの言葉は、実は鈴木隆介先生の読図入門に用いられている言葉ですが、まだ一般化していないように思います。
 ただ、鈴木先生の言葉を拝借しただけではなく「地形災害環境」を考える習慣を意識すること、自分もそのような理にかなった言葉、図表現を考えて生きたいとおもっています。

2013年8月31日土曜日

風立ちぬ

 映画「風立ちぬ」を見てきました。物語も描写も行き交う人の心も美しい、哀しい映画でした。公開されて大分経つのですが映画館は満員でした。
 さて、この映画に対しては、「日本禁煙学会」からひとことあったということが話題となりました。専門家も関わり方を外すと妙なことになるなあと思ったのですが、最近の「ゲリラ豪雨」「経験のないような大雨」という言葉は、雨を描写する日本語には美しい言葉がいっぱいあって、その後虹を期待できることなどを忘れさせてしまう、「絵にならない言葉」だと感じます。

2013年8月29日木曜日

最新の空中写真とは - 応用地形判読

 判読業務に関わっていると、最新時期に撮影された空中写真を使ってくださいといわれることが良くあります。ここでいう「最新時期」とは、「最近撮影された」と同義です。
 しかし、応用地形判読、特に地形災害の発生場の判読にあたっては、土砂移動痕跡ができるだけ生々しく残っている空中写真が役に立ちます。そして、それがその地域が経験した規模の豪雨であり、地震動です。
 私達は現場に行ったとき、例えば20年生の一斉林の生育する土石流堆積物があった場合、それは古い堆積物と呼びます。しかし、防災に関わる規模の地形を考えたとき、それが最新・最近時期ということが出来ます。また、活断層などは、よほど地表地震断層が出現しない限り、約60年しか歴史のない空中写真の最新時期にこだわることは、あまり意味がありません。

2013年8月25日日曜日

仕事は増えているけれど、、、応用地形判読士の問題

 航空レーザー測量図が普及し、大規模な土砂災害が注目されている(昭和42年や47年、57年などの昭和の災害あたり年に匹敵するぐらいに)ためか、明らかに地形判読の仕事が増えています。事業の対象箇所から、分水界や河川まで広範囲かつ複合する災害(というかそれが本質)

 応用地形判読士の試験を受けたけど、、、という人は以外と多い。マークシートはうまくいったがが、なぜ記述でうまくいかなかったのかわからないという感想をもつ人も多い。今年の記述問題は、地形種の定義と想定される災害や防災対策について述べよというものでしたが、「地形判読」の問題としてはどうなのでしょう。実技試験の2次試験1だけでよいと思います

2013年8月6日火曜日

取り消しがきかない

キーボードの一部が壊れまして、Xの左のキーが反応しなくなってしまいました。特定の行が書きにくいのはもちろんですが、アンドゥができない、Ctrl+でやり直しが何回もできたので不自由でしょうがない。出張も多いので、なかなかブログを更新できなくなっています

2013年7月25日木曜日

JR西日本、乗務員向け避難支援アプリを開発…きのくに線の津波対策

http://response.jp/article/2013/07/24/202843.html
 きのくに線は紀伊半島の西岸沿いに線路が敷設されており、津波発生時に避難が必要となる場所も多い。こうしたことから同社は、和歌山県のハザードマップを元に、浸水区間を想定した避難地図を作成していた。
     しかし、乗務員から「地図を何枚も携帯しなければならない」「緊急時に必要な地図を探し出すのに時間がかかる」「夜間は明かりがないと地図が見えない」などといった意見が寄せられたことから、業務用のスマートフォンにインストールして使用する避難支援アプリを開発した。
------------------
 「地図を何枚も携帯しなければならない」「緊急時に必要な地図を探し出すのに時間がかかる」「夜間は明かりがないと地図が見えない」
 こういった現場の声に対応したアプリはとても実用的なものでしょう。一般にも広がってほしいし、現在地を確かめるという、地域を知るはじめの一歩にもなってほしいものです。

2013年7月15日月曜日

ファミコン30年 ニゴマンも全国整備30年

 ファミコンは今日で30年なんだそうです。娯楽が屋外から画面へと大きくシフトして30年といったところでしょうか。
 さて、25000地形図が全国整備されて今年で30年なのです。ファミコンほどの衝撃はなかったかもしれませんが、これによって段丘区分や活断層研究など、私達の暮らしに大切な地形情報が整備されるにあたり、大貢献したのは間違いありません。

 あるネットのコメントで、

 昔は発想と作り手の腕が評価された時代。人数でもソフトは作れたし、味が良ければ評価され
売れた。いいゲームも駄目なゲームも玉石混交ながら、活気があった。今はグラフィックが重視されていて、どうしても手間(=開発費)が掛かり、単価も売り上げも高くないと元が取れない上、とっつきが悪いとそのまま沈没。

 というのがありました。地形図も最近はビジュアルになり格段に高精度になりました。でもなかには仕様さえ満たしていればよいとでもいうのか、縮尺が大きく等高線が多くても、尾根や谷が忠実に再現されていないものもしばしば、、”腕”とか”味”とか数値化しにくいものは評価されにくい点は共通しているかも知れません

2013年7月14日日曜日

応用地形判読士の問題 - 麓屑面

  応用地形判読士の一次試験の問題で、「麓屑面」に関する問題がありました。斜面の堆積地形を示す言葉としては崖錐が一般的で、崩積土という一種のスラングもありますが、「麓屑面」という言葉はなかなか使わないでしょう
  鈴木先生の読図入門によると、麓屑面とは「主として集団移動の定着物質から、雨蝕で洗い出された細粒物質や土壌行で再移動した細粒物質が、それらの集団移動地形の下方に再堆積して生じた緩傾斜面」と定義してあります。ただ、試験問題はそのような絵ではありせんでした。
  また、私が学んだ「麓屑面」は、神戸大学の田中・野村先生の地形学です。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1984a/59/5/59_5_261/_pdf

   どちらが正しいなどは別として、(雪崩道・アバランチシュート・筋状地形もそうですが)、複数の考え方があり、それによって防災面の意義も変わってしまうような事項ではないでしょうか。

2013年7月13日土曜日

応用地形判読士の一次試験

 昨日、応用地形判読士の一次試験を受けてきました。
 午前の部は、問題用紙の分厚さにびっくり。専門問題の読図問題が、一問につき一ページでしたのでどっさりしてたのでしょう。但し、地形の形成過程、災害環境(地形場)を考える上で微妙な問題や、地形種を説明として微妙なもあったように感じます。
  例えば、山頂付近に半円形をした地形があるため、この地形は圏谷であると考えられる、という問題肢、「山頂付近に半円形をした地形」は、カールだけに出来る地形ではないといえます。例えば七面山大崩壊やその南側の流域では、山頂・尾根付近で半円形をした地形が形成されています。いわゆる”深層崩壊跡地”であれば、そのような地形が形成されるでしょう。
 このほかでは、写真と地形図を切り抜いて、斜面の地形・地質を問う問題もありました。が、これは悩ましかった(多分、私は不正解でしょう)。全て正解に見えます。聞いたら二番目がボタ山であるので侵食に強い岩石ではないとのこと、、私は姫路か香川県などにある残丘と採石場かなあとおもいました、、周囲の地山と比較して地形場を考えさせるような問題でないとあまり意味をなさないでしょう(負け惜しみですが、、、、)。
 雪崩道に関する問題も悩ましかった(鈴木先生の本では雪崩"路”)。私はいわゆるアバランチシュートと筋状地形とを区分した考えていますが、雪崩道がどちらなのか、、、
 由利本庄市の地形図を用いて、沖積段丘の形成要因を聞く問題もありました。まづ、沖積段丘と言う用語ですが、完新世段丘と呼ぶべきでしょう。河川の沖積作用と紛らわしいからです。鈴木先生の本、今村遼平さんの本にも”沖積段丘”という言葉はでてきません。それよりも、なにもここで完新世段丘の形成要因を問うのはどうでしょうか。広域的な海水準変動や地殻変動をとらえるには図の範囲が限定されすぎています。堰き止め湖があって干上がったとするなら、結構有名なイベントとなっているはづですので、どこかで聞いているでしょう。悩んだ結果、縄文海進の影響かなあと、、関東の相模平野が向いているでしょう。
 全体的には、地質調査技士と応用地形判読士と技術士補(応用理学地質)が入り乱れて、的が絞りきれていない感じ。特に午後の部門の記述式問題は、判読のアル意味楽しみである読図がなかった分、去年より難しくなったといえるのではないでしょうか。正直私も自信がありませせん。

2013年7月12日金曜日

隠岐ジオパーク

googleアラートで届きました。

http://www.oki-geopark.jp/lifestyle/wisdom/000089.php

地すべり地形はこれまで災害要因としてネガティブにとらえられがちでしたが、美しい景色を構成する要因としてとらえられるようになってきたことを感じる記事です。

2013年7月6日土曜日

地形で岩盤を読む

いよいよ応用地形判読士の試験も迫ってきました。鈴木先生の演習問題設問3では、島の地形について、緩斜面の成因から砂浜の形成過程、離岸堤の拡張に至った背景など、多くのことが問われていますし、表層地盤の構成物質や強度を問う問題も多く、何度読んでも勉強になります

2013年7月3日水曜日

EADaS手法

http://www.jreast.co.jp/development/tech/pdf_26/Tech-26-59-62.pdf
EADaS手法に基づく災害危険度評価システムの開発

 EADaS手法では、評価対象地点の自然環境を特定するための数々の質問を、系統的かつ自動的にシステム操作者に問いかけるようになっている。操作者が地形図や地質図などを見ながら、その質問の回答を選択することにより、その地点のEA表、EAD表が作成され、評価点が自動的に算出される仕組みとなっている。
-------------------------------------------
 応用地形判読士の試験が近づいていますが、鈴木隆介先生も開発に多大な協力をしておられる読図システムです。よくありがちなのは、既存資料をコンパイルして災害に関わる要素がいくつ重なっているかというシステムですが、これだと既存資料が間違っていた場合、あるいは精度が足りなかった場合、それなりの答えが出てしまうことです。
 EADaS手法の良いところは、自分で考えながら評価が出来る点にあります。既存資料の完成度の問題は残っているとは思いますが、使用にあたっては専門的素養が必要であり、”誰でもできるデメリット”は解消されているでしょう。

2013年7月2日火曜日

地形災害の人為的側面

①天  災:構造物の有無とは無関係に、自然現象としての地形過程の必然的な結果
②未必災:①の生じる可能性のきわめて高い危険地に、知ってか知らすかは別にしても、そこに建設された受けた
③人  災:構造物を建設しなければ発生しなかった災害
-----------------------------------------------------------------------
鈴木隆介先生は②は交通事故と同様に無理をしなければ避けられると述べられています。その例として急崖直下に立地する建物の落石・崩壊による災害をあげられていますが、腹付け盛土や谷埋め盛土も該当するでしょう。

2013年6月30日日曜日

三保の松原

 三保の松原が世界遺産に登録されました。観光客も増えて警備員も増員するのだとか。もちろん富士山の見え方とセットなのですが、灯台下暗しとならないよう、三保の松原の地形・表層物質がどのようなものか、文献を調べてみました。

吉河秀郎・ 根元謙次(2008):静岡県清水海岸沖の表層 堆積層の分布 と土砂移動の変遷史
海岸工学論文集,第55巻,土木学会,601-605
http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00008/2008/55-0601.pdf

usa_hakaseのツイッター(ユーエスエーではありません)
http://togetter.com/li/498350

 報道レベルでは、あまり安倍川からの土砂供給について言及されません。吉河・根元(2008)は、海底の音波探査結果やト レンチ調査、年代測定結果から、S3層最上部は台風の暴浪時より大き

な営力を持っ海岸から沖方向へのマスムーブメン トによって形成 された、その時期は西暦1730~1810年頃と推定されるとしています。
 それは、1707年の宝永地震とその津波、富士山噴火、安部川源流の大谷崩れによる大量土砂供給という一大イベントを意味します。三保の松原の土台はこのような、富士山そのものの形成過程と密接に関わる自然現象によって形成されているのです。
 そして、砂防や治山工事、砂利採取によって、土砂供給が減り、海岸侵食が始まり、『景観』で部物議をかもす消波ブロックの造成へと繋がっていきます。
 三保の松原は文化的価値だけでなく、地形・地質遺産の意味合いからも、防災・環境保全を考える必要があります。

2013年6月12日水曜日

DJポリスと斜面防災

 ワールドカップ予選後の渋谷の混乱を治めた”DJポリス”が話題になっています。ソフトな語り口で興奮する人々を巧みに誘導して、交通を整理したというものです。まさに、北風より太陽の方法といった感じです。全体を力で押さえつけようとすると相応の反発がかかり、バリケードや機動隊などの”ハード対策”をとらざるを得なかったでしょう。
 ひるがえって、斜面防災対策はどうでしょうか。呼びかける前に暴徒化してしまった箇所に豪華なバリケードを造成することが未だにメインとなっています。また、ソフト対策といえば警戒・避難のことであり、”暴徒化する土砂(そのきっかけは暴徒化した間隙水圧)をうまく誘導しようという発想での対策がとられた箇所は、あるとは思いますが、まだ主役にはなっていません。

2013年6月10日月曜日

和歌山県の群発地震

 先ごろ和歌山県で震度2~4程度の地震が数回発生しました。1995年の兵庫県南部地震の場合は、2ヶ月前に猪名川街周辺で群発地震がありました。それにならぞえる訳ではないですが、和歌山には中央構造線があります。あまり想像したくありませんが、、、

2013年6月6日木曜日

扇状地の定義

 埼玉大学の斉藤享治先生は、扇状地研究の第一人者です。私も地形屋として、砂防屋として、扇状地を理解することは土砂災害の軽減はもとより、変動と湿潤の相克する場所なのでドラマチックなのです。
 それにしてもCINIIIで斎藤先生のお名前で検索すると、「扇状地」の文字が入らない論文を探すのが難しい。国内外のいろんな扇状地を研究されています。ひとつの地形種(地形場?)で、これほど濃密なご研究を続けておられる先生も稀有だと思います。

扇状地の規模に関する研究動向 : どんなに大きくても扇状地?
http://sucra.saitama-u.ac.jp/modules/xoonips/detail.php?id=A1002048

 上記の論文は、私達が日常用いている沖積錐、崖錐、扇状地、土石流など、いかに曖昧に用いていたかを反省させられました。周辺山地の地殻変動や堆積場としての平野の沈降、規模の違う土石流、扇状地の合成、土砂運搬形態の変化、総合科学の知識の堆積場でもあります。

2013年6月5日水曜日

いつのまにか50000

 当ブログのページビューの合計がいつの間にか50000を超えていました。ほんとに、しょーもないことばかりなのに感謝です。よく分からないは、約50000のうち7000くらいは海外なのです。しかもラトビア、ウクライナなど、あまり日本人の方がいらっしゃらないであろう国からのアクセスも3桁あります。なぜか南半球は全然ありません。わからんところですが、感謝です。

2013年6月4日火曜日

地理評から地形学の論説が消えた

 最近の地理学評論は自然地理学の論文が少ないので学会費半分でええかいな?ある先生からこんな冗談が聞こえてきました。気になったので少し調べてみたら、2012年の地理評から地形学関連の論説が消えておりました。日本地理学会は、東北地方太平洋沖地震で生じた津波の浸水範囲を明らかにしたという大功績はありますが、活断層学会など専門分化がすすんだせいか、自然地理学の論文が少なくなるのは、日本地理学会の特徴が半分消えてしまうようで寂しい感じがします。

2013年6月3日月曜日

新しい年代測定法

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130603-00000017-mai-sctch
 遺跡や遺物の年代を、樹種を問わず、少量の試料で測定できる画期的な木材の年代測定法を、名古屋大大学院環境学研究科の中塚武教授(気候学)が考案した。1年単位の高精度で安く短時間に、年代測定ができるという。論争が続く弥生や古墳時代の開始時期など、考古学や歴史学に多大な影響を与えそうだ。7月に開かれる日本文化財科学会の年次大会で発表される。

災害史も明らかにできるでしょうか。

2013年6月2日日曜日

「論文」と「報告」

 木村 学(2013):『地質学の自然観』,東京大学出版会 を読んでみました。私が学生だったころは、もうプレートテクトニクス理論がある程度定着していましたので、地球科学のパラダイムがドラスッティックに動いていた時期、大論争期を知りません。この本を読んで、そのころの熱が伝わってきました(会話調でよみやすい)

 さて、最後に「これから論文を書こうとする若い読者のために」という”付録”があります。そのなかで、日本の論文と海外の論文ではタイトルのつけ方が違うという指摘がありました。日本の地質学雑誌では「○○地域の、、、」「○○の発見、、、」「○○の研究」というタイトルが多いが、海外ではこのような言葉を省いた、一般的な事項で中身をストレートに反映した言葉が書かれているということなのです。私の師匠は、君の論文は報告の域を出ていないという言葉をよく使われましたが、にたような意味かも知れません。そういえば地理学でも「○○地域の、、、」で始まる論文がとても多いですね。

2013年6月1日土曜日

マンションの広告にみる”地すべり”

 消費税が上がる前にマンションを買いましょう!!とあおるチラシが最近良く入ります。今日の広告には、”今が買いどき”である理由として、低水準の住宅ローン金利があげられていました。1984年からのグラフが掲載されているのですが、90~91年のバブル絶頂期から95年にかけての落ち方、その後の微起伏で推移するグラフを見ていると、まるで地すべり(特に2008年の岩手宮城内陸地震荒砥沢地すべり)の断面のように見えました(もちろん、そのグラフの縦横比にもよります)。もうすぐ消費増税という降雨が来るからその前の水抜きを、といったところでしょうか

2013年5月29日水曜日

崩壊地のもつ土木工学的問題点

 今村遼平(2013):『地形工学入門』のなかに、崩壊地やそこから供給された崩積土の持つ建設計画上の着眼点として、

 既存崩壊地の分布状況は、将来の崩壊発生を考えるうえでの目安となる

 と述べられています。ここでいう”目安”とは、それ以上でも以下でもないと思うのですが、実際は崩壊跡地から算出された土砂量、崩壊地の手厚い斜面保護が”基準、指標”になっています。航空レーザー計測図を見ると、遠景では気がつかないがそろそろ崩壊予備物質がたまり始めた集水凹地があったり、微妙にコンターの乱れた斜面が危ないのですが、なかなか注目されません。
 表層崩壊ならまだしも”深層崩壊跡地””実績”といった、およそ安定した斜面をさがすことに躍起になる傾向があるのですが、やはり"目安”であって、夢中になってさがす程のことはないんだと思います。

2013年5月24日金曜日

同意した今年のサラリーマン川柳

76位 合理化の 資料作りで また徹夜

   調査のための調査、計画延長のための調査、同じ結果になってもいいから、重箱の隅々をつつき、だんだん本筋からはなれて、、、

93位 新入りを 待って幹事を 九年間

 手作業・判読、委員会では結構最年少時代がながかった、、

2013年5月23日木曜日

最先端

高校の教科書に載っている内容は

数学:17世紀まで。
化学:19世紀まで。
物理:20世紀初頭まで
生物:20世紀後半まで。

一方、地学は21世紀に展開中のプルームテクトニクスまでが扱われていて最も最先端が学べる教科です。地物出身者としてはもっと地学履修者が増えると嬉しいなあ。
-----------------------------
あるツイッターから

私は地学の応用分野に携わっていますが、こと防災事業に絡むこととなると、今もって1983年に発刊された『斜面と防災』高野秀夫著、『斜面災害の予知と防災』1985、『建設工事の地質診断と処方』1983、『羽田野誠一地形学論集』など、20世紀後半なのかもしれませ。いや、テルツァーギの、、という話になれば、もっとさかのぼるかも、、、

2013年5月22日水曜日

ご無沙汰しました

 風邪をこじらせてしまいました。咳が出るのでなかなかブログを書く気分になれず、、、
 そうこうしているうちに応用地質学会の申込期限が迫っていました、地すべり学会の投稿締め切りも迫っておりました。砂防学会も来週開催されるし、、
 ただ、このご時勢、応用地質学的なテーマは溢れんばかりなのに発表や投稿が激減し、東北地方太平洋沖地震による斜面災害・土石流災害は比較的目立たなかったのですが、砂防学会の発表は激増、、、
 2012年は地理評の論文から地形が(自然地理学がと言ってもいい)消えたともいってもいい。日本地理学会は3.11の津波浸水図など、後世に残る詳細で貴重なデータを作成する素晴らしい活動をしているのに、、、
 学会のありようがよくわからなくなってきました。

2013年5月11日土曜日

リアス式海岸

http://ir.iwate-u.ac.jp/dspace/bitstream/10140/1700/1/erar-v57n1p125-141.pdf 岩手大学教育学部の学生82名に,海岸線の屈曲を滑らかにした白地図を与えて,図上で「三陸リアス海岸」の範囲を示させた。その結果,幾つかのことが明らかになった。

まず,正解というべきものが少ないことで,地元出身の学生が多い(岩手県出身56名)にもかかわらず,適切な回答をしたものが僅か6名に過ぎなかった。これは,地理教育において地元の身近な事象について学習することがはとんどないこと,リアスという自然地理的事象を厳密に吟味して理解する機会が少ないこと,海岸線の屈曲をなくした白地図に本来の地形が示される地図を想起して重ね合わせることが難しいこと,などの理由もあろう。誤答の多くは南限を実際よりも北にしたもので,61名であった。その大半(51名)は大船渡・気仙沼付近すなわち岩手・宮城県境付近とした。次に多い誤答は北へはみ出したものである。北へのはみ出し42名のうち,青森県までのものは10名に過きず,多くは岩手県北部のみを含めたものである。

一部は,特有の地形景観であるリアス海岸と結び付いて,固有の地域名,つまり「三陸リアス海岸」が地名として用いられることが多くなったのである。 ところが,この名が美しい風景を有する海岸という印象を与えるために,三陸の岩石海岸一帯に拡大されがちになっている。地名は変化するものであり,その指し示す範囲が時代とともに変化することは当然で,三陸海岸の範囲が変わることは問題ではない。しかし,三陸リアス海岸という地形学的に明確な景観を示す術語を含むものが,その術語の定義に反するもの,つまりリアス景観ではないものも包括するようになることば間違いであろう。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

2013年5月5日日曜日

役立つ!!地盤リスクの知識

役立つ!!地盤リスクの知識,地盤工学会 が出版されました。地盤リスクに関わる契約、保障、裁判事例など、技術者、弁護士、不動産業者、保健会社の方々で、この分野のオールスターともいうべき方々による実用的な専門書です。この内容で。定価1800円は安い!!!!!! 手前味噌ながら私が関わった事例もすこ~し書かれています。
http://www.jgs-shopping.net/products/detail.php?product_id=1000904470 

2013年4月27日土曜日

やっと妥当な見解

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130426/k10014227681000.html 浜松市の山沿いで発生した地すべりについて土砂災害の専門家は、現場を流れる川が、長い年月をかけて斜面の下の土砂を削ったため、斜面全体が不安定になっていたと分析し、今回広い範囲に拡大した背景に地形が大きく影響していると指摘しています

このため地形図を分析したところ、地すべりが起きている斜面のちょうど下に川が流れていて斜面の下の土砂が削りとられやすい地形でした。

さらに国土地理院が昭和51年に上空から撮影した現場付近の写真で斜面の下の土砂が削れて崩れた痕跡を確認できたということです。
このため池谷特任教授は、「川の流れで長い年月をかけて斜面の下の土砂が削られていって、斜面全体が不安定になり、地すべりが発生したと考えられる」と述べ、今回広い範囲に拡大した背景に地形が大きく影響していると指摘しています。

そのうえで、「地形の特性から崩れやすい状態が続く可能性があり、土砂を取り除くか、杭を打つなど対策工事を行う必要がある」と指摘しています。

----------------------------------------------------------
先日このブログに書いたコメントと同じ、判読しておられる空中写真も同じでした。南海地震や富士山噴火と結び付けようとする妙な報道もありましたが、とても妥当な見解です。そして、災害面だけが報道されますが、地すべり地形のもたらす恩恵もいっぱいあるのです。

2013年4月25日木曜日

見解は分かれるのが普通 - 応用地形判読士の試験も??

 今回の浜松の地すべりは、防災科学技術研究所の地すべり地形分布図に掲載されていませんでした。段丘かどうか微妙ですし、広域的にみれば(ケスタと言えば大げさですが)組織地形の可能性も捨てきれないと思うし、古期地すべり地形末端かつ攻撃斜面に該当していた部分が滑動を始めたいうのが妥当でしょう

 で、もしこの地すべり(じゃなくで崩落)地周辺を応用地形判読士の問題に出したら、いくら攻撃斜面で末端崩壊があったとはいえ、「考えられる災害」として抽出するのは難しいのではないでしょうか。空中写真判読は個人差があるのが「デメリット」として語られることも多いのですが、見解は分かれるのが普通です。

地すべりの対策工

 浜松市天竜市の地すべりですが、牛山先生の現地調査報告やブログなどから情報がはいってきました。実際には破砕された泥岩や頁岩の混在岩からなる斜面が、脚部侵食により応力が解放さた状態にあって発生した深層崩壊といったところでしょうか。
 ところで、地すべり防止区域だったこともあってか、集水井が施工されていました。一見すれば段丘のような(段丘かもしれませんが)平坦な地形場において、集水井?という違和感があります。
【集水井によって防止できるのも、すべり面直上にある地下水頭を下げることが可能な場合だけであって、井戸の中に横ボーリングを行って、移動層のなかにある地下水をどんなに多量に井戸のなかに出たとしても防止効果には無関係である。したがって、集水井から行う横ボーリングは、すべり面直上の透水層にそって行うべきであり、中間の地下水をわざわざ抜くことはない。中間水を抜くことは川水を井戸のなかへ流入させることと結果的に同じことである】

高野秀夫『斜面と防災・別記』

2013年4月24日水曜日

浜松市天竜区の地すべり

これから調査が進んでいくことと思われますが、私的な感想を述べます

・過去の空中写真(1976)では攻撃斜面側の表層崩壊があって、脚部は長らく不安定な状態にあったのではないか。
・防災科学技術研究所の地すべり地形分布図には示されていない。広域的な判読では、組織地形のようにも見えるが、古い(後期更新世)地すべり地形と考えた方が妥当と思う。
・地すべりというか深層崩壊というか、微妙なところ
・河道閉塞が発生しているが、大局的には蛇行区間であり直上流は欠床谷も見られるため、決壊しても”土石流”状態にはならない。報道によると仮排水路ができたようですが、この現場力・対応力は本当にすばらしいと思います。
・そして、地すべり前兆地形としてのクラックを”検出”した、整然とした茶畑。これも日本の里山の美しさで素晴らしいところです。

2013年4月18日木曜日

いつかビッグになって

 4月も3週目が終わろうとしています。今年は4月1日が月曜日ですから、新人さんにとってはスタートがきりやすかったのではないでしょうか。

 私が新人として入社した会社は、1ヶ月も研修期間がありました(あとでこの時期は仕事がないからということを聞かされましたが、、、、)。環境アセスメントや黒表紙の報告書、基準書、白書をよんで、現場で測ってきたデータは「国が定めた基準値いかなので問題ない」と淡々と述べて効率よく仕事をこなすんだ。自分の専門的な眼力・判断で報告書を書いたり事業をコントロールすることは理想で、楽しいものだが、そのようなチャンスはほんの数%だ、その割合が高いと幸せな技術者生活だといえる といわれたことを、今でも覚えています

 話はガラッとかわりますが、私の同級生が銀座でマッサージ店を経営していました。http://blue-t.jimdo.com/ 彼のブログに母親に地元に帰らないか?ときかれ、そのうちビッグになってかえる→ビッグとはなにか→九州支店を出せるほどに利益を稼ぐことだ(ブログではもっとほのぼのと書かれていますよ)。とあります。彼の仕事の成果は、お客さんが健康で快適な体になることですからとても分かりやすい。引き換え私の仕事は実力が目に見える形にならないことも多く、豪雨や地震時にあまり動かない成果品がいいともいえるので本質的に目立ちません。
 長谷川町子さんは、他人の職業がうらやましくなったときがスランプということをご自身の漫画で書かれていた記憶がありますが、時々そうなることがあります。ですが、上記の”ほんの数%”が昔よりはあがっていると思うし、それを下の世代にもクールに見せていくことが、最大の新人研修になるのでしょう。自分はまだまだ小せえ、、、

2013年4月17日水曜日

2013年4月13日淡路島地震でおもうこと

 2013年4月13日に淡路島で地震が発生しました。震度6弱という報道でしたので、大きな被害がでたのではないかとも思いましたが、震度のわりには被害は少なかったようです。

 さて、”未知の断層”ということでしたので、文献を調べてみました。
 東部瀬戸内堆積区の形成と淡路島の隆起,地学雑誌Vol90№6
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography1889/90/6/90_6_393/_pdf

 この文献の図にも今回の震源、余震分布に対応するリニアメントは掲載されていません。空中写真を判読すると、河川の侵食ではありえない直線構造があることはあるといったところです。花崗岩類の周辺に軟質な堆積岩が分布しており、地すべりによる棚田も広い範囲で形成されていますので、これを活断層として抽出するのはちょっと無理だと思います。

 地表に崖がよく現れていないところで地震が発生したのは、もちろん今回が初めてではありません。2000年鳥取地震、2005年福岡県沖、2007年能登半島、2008年岩手宮城県内陸地震など、、、 とはいえ、”未知”いうとランダムに発生するという印象を与えかねませんが、力の伝わりやすい弱線はあると思います。

2013年4月14日日曜日

「間抜けの構造」を読んでみました

 映画でも3Dがはやっているけど、これも奥行きという”間”を埋めちゃうことになる。立体を具体的に説明しようとして、かえって立体的に感じなくなる。本物というか現実に近けりゃ近いほど、粗も見えてくる。平面だったら想像力が働くけど、3Dだとそれをそいでしまう。やっぱりある程度"間”がないとダメなんだけど、なんか人間というのは、技術の進歩とともにその"間”を埋めようとする。

ビートたけしさんの「間抜けの構造」という書籍の一節です。

 私の専門とするところの地形分類図では、1986年に行われた東北地理学会シンポジウムで、”土地条件図は食い合わせの悪い詰め込み弁当”といわれましたが、これも間を埋め尽くそうとした結果なのでしょう。航空レーザー計測図も、あまりに詳しすぎてみているだけで地形解析の目的を達したような気分になってしまって、考察を入れる"間”を埋め尽くしているという一面もあります。羽田野誠一さんは、地形の質的構成がひと目でわかり、使うひとに”感動と実益”を与えるものでなければならないと仰っていますが、良い間合いで必要な情報が精度よく描写されていることを求められているということでしょう。
 ビートたけしさんの本でも、「こうやれば客は笑うというマニュアル的なアプローチとは逆で、やてみてから「今のはだめだった、今のはけっこういけたな、と実践を積み重ねるなかで自分で考えていくしかない」とありますが、我々の仕事でも同じことがいえます。

2013年4月12日金曜日

応用地形判読士の試験の背景

 応用地形判読士に合格した方に話を聞くことができました。その方は、判読図の作成とそのコメントを作成するにあたって、与えられた時間が2時間というのはいかにもきついということをおっしゃっていました。確かに模擬問題をみていて、できんことはないかなとは思ってましたが、2時間となるとやはりきついですね。
 合格率が低下したもうひとつの要因は、低地の地形分類は得意でも山地は。。あるいはその逆、、といったことではないかという話もでました。この資格が生かせる業務(発注要件にはなっていないようですが)として道路防災点検が紹介されていますが、やはり斜面がメインで、平野部の旧河道や支谷閉塞低地における盛土の沈下などに関する地形との関係は、影が薄いような気がします。

2013年4月10日水曜日

デジャヴ - 春の嵐に崩壊した擁壁

以前上司がテレビ番組に出演し、このようにはらみ出したよう壁は崩壊しやすい、と指差した斜面が、先日の爆弾低気圧に伴う豪雨によって崩壊してしまいました。ここが危険と言った箇所に限って隣が崩れるといったことは、技術者の間でよくある話ですが、ストライクはなかなかありません。人的被害がなかったのでまずはよかったともいえますが、このように老朽化したよう壁は無限にあるため、公助を待ちきれないという事情も多いでしょう。

2013年4月3日水曜日

お手本とマニュアル

  最近「美文字」なる本や言葉がはやっています。確か火曜日の夜の番組だったと思いますが、、先生のお手本をみて、有名人がいかに整った(整ったと美しいは同義だと思います)文字を書けるかということを点数化して競うのです。
 このように、お手本とは普通のレベルを超えたところにあって、ちょっと真似できんなというものであるべきだと思います。ただそうすると”みんなができない”ので、公共事業の多い防災関連業務は発注しにくいのでしょう。
 こうなると、最低限コレだけは、という指針(マニュアル)が出てきます。
 私が携わる仕事では、災害地形判読図、ルートマップ、地表地質踏査結果図、といったものが成果品になります。最近では、建設技術者のための地形判読演習帳(初級~上級まで)なるものもありますが、いまのところ圧倒されるのは『羽田野誠一地形学論集』と鈴木隆介先生の地形図読図入門(入門といってもこれだけ内容が充実していると辞書みたいなものです)だけです。
 美文字のよさは、手書きにあり五感を直接使って判断力が鍛えられるところです。図面もそうです。数値計算の前に手書きを一度はやるべきです。

2013年4月2日火曜日

土検棒の手ざわり感の信頼

 同業者からたまに聞く言葉で、「今後の課題は現地調査」、「現位置試験との対比」があります。これは指針に掲載された土質数値を入力した値を使って計算した土砂移動の解析結果に対する、漠然とした不安感があります。人間の感覚の7割は視覚とも言われますが、医療のCTスキャンや内視鏡などの技術は、みえる化するための技術です。技術士補や土木施工管理技士の試験で、最初の方に出で来る土の状態変化とコンシステンシーの状態の説明でも、液性はコンソメスープ状、塑性態は適当な硬さのバター状、半固結はバター状、固態はビスケット状など、手ざわりの感覚で解説されます。
 土検棒も同じような信頼できる手ざわり感があります。地中は最も見えにくい現象のひとつですが、できるだけ近そうな値で計算するよりは、その場での五感の方がたよりになります。特に、土検棒で表土層の厚さを調べるときは、その絶妙な感覚にいつも驚きます。

2013年3月29日金曜日

見直すということ

 少し古い記事ですが、治水地形分類図の更新に関する報告がありました。 http://www.mlit.go.jp/chosahokoku/h21giken/program/kadai/pdf/innovation/inno2-03.pdf
 しかしながら、現行の治水地形分類図の基図となる1/25,000 の地形図が約 30 年経過していることに加え、・地形と微地形区分が混在していること、・微高地旧河道等の微地形表示が不十分、などの課題があり、現状、あまり利活用されていない状況にあった

 と言い切ってしまうところはなかなかできません。私も地形分類を仕事としており、旧河道の判読は平野の災害地形を考えるキーポイントです。そして、最も個人差ができる部分でもあります。それこそ、催眠術といわれたこともあります

 後氷期開析前線を提唱した羽田野誠一さんも、あんたにしかみえない、心眼だ、となんども言われたそうですが、地質学の斉一観や斜面の安定(不安定)を診断する観察眼は、”そう思ってみないと”なにも見えません。だから、断層に関する誤判読も必要以上に責めるでなく、むしろそのようなことをあると認めたことを冷静に受け止めるべきでしょう。

2013年3月27日水曜日

17名 - 応用地形判読士

 私は受験していませんが、応用地形判読士の合格発表があって、受験番号を数えてみたら二次試験合格者は、17名でした。率に直すと数%でしょうか。17名のうち、4名は応用地形研究部会で知る方ですから、実に濃いメンバーだと思います。
 空中写真判読をしていてよく言われるのは人によって解釈が違うので正解がないということです。部会のメンバーと話していたのは、これ資格試験問題をつくることができるのか、、ということでした。であれば、ある程度(せめて20%)くらいは合格者を出さないと資格として衰退する一方、、、登録料も含めると1年で5万円もかかる。認知度もとても低い段階なのに、これだけハードルをあげてしまえば受験者は増えないし、、、応用地質学会誌も投稿が激減しているそうですが、その要因に、ある種の厳格主義があるようです。

2013年3月26日火曜日

砂防関係就職説明会

 という記事が砂防学会誌65巻6号に掲載されておりました。そのなかで、「将来砂防関係への就職を考えている・少しは思っている」という回答が、”昨年の97%から86%に下がった”という記事がありました。これは下がったいうより殆どかわらんと言った印象です。参加者の専攻分野の83%が農学系であったり、理学部にも案内を出してほしかったという、独特の狭さを何とかするべきでしょう。学部の垣根をとるというよりは、応用地質学会、土木学会、地すべり学会など関連学会などとの合同、都会の斜面問題等に本気で取り組まないと広がっていかないし、そもそも”若手人材育成委員会”と言った時点で若手が入りにくいという逆説もありそうです。

2013年3月22日金曜日

想定と記録

先日南海トラフ地震に関する被害想定が発表されました。

南海トラフ地震:被害想定220兆円 避難者950万人
http://mainichi.jp/select/news/20130319k0000m040015000c.html

一方で、東日本大震災による津波詳細地図が古今書院の書籍や関連学会から公表されています。この津波詳細地図を作成した原口・岩松両先生は、「記念碑の類はいずれ忘れ去れてしまい、あまり役にたちません。正確な科学的事実を残すことこそ、後世の減災につながる」と記されています。
http://www.city.kesennuma.lg.jp/www/contents/1253258421312/files/shinsuimap_coment.pdf

先に述べた被害想定は、科学的ではありますが手法(定量的手法)です。パラメータでいかようになるともいえます。ただ、数字のインパクトは絶大で、既成事実化することもあるでしょう。原口先生の科学的事実は努めて定性的です。でも、政府の被害想定の数字の前にいまひとつ目立たなくなっているような気がします。

2013年3月15日金曜日

社内高齢化とある「習慣病」

 先日ある会社の方と、社員が高齢化しているという話になりました。聞けば80人前後の社員の平均年齢が47歳に達するのだとか。これは、いわゆる失われた20年の間に、不景気のため若い人の採用を控えたことや、そもそも若い人がこの業界に魅力を感じなかったことなどいろいろあるでしょう。しかし、その方がさらに言ったひとことで、気付かされたことがありました。

「このままでは毎年、ほぼ1年づつ物理的に平均年齢があがってしまう」

 その話を聞いた帰りにAmazonからのメールで、【習慣病」になったニッポンの大学―18歳主義・卒業主義・親負担主義からの解放 (どう考える?ニッポンの教育問題】
http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4284304453/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1

 という本が紹介されました。この本の著者は別の論考で、「日本的特質は、「18歳主義」「卒業主義」「親負担主義」の3つであり、この3つが、日本的家族システムの影響を強く受けて、ワンセットになっている。加えて、この日本的大学が、日本的雇用システムと深く連動している。つまり、日本の大学と新人は、日本的家族と日本的雇用に羽交い締めにされ、身動きが取れなくなっている。と述べておられますが、この状態でマニュアルやシミュレーションで自然現象に対する見方・観察眼をさらに羽交い絞めにされてしまったら、平均年齢を下げたところで思考が柔軟にならないということにもなりかねません。しなやかな樹は根っこからというところでしょうか。

2013年3月11日月曜日

あの日の今頃

 丹沢の現場を午後五時過ぎに出発しました。凄まじい渋滞、壊滅、M8.8(後9.0)、悲しいニュースを淡々と繰り返すカーラジオ、、いま2330ですが、あの日の今頃はようやく横浜市内をのろのろと走っておりました。家路につく凄まじい人波に、あたらめて東京一極集中の怖さを感じました。これは防災に対する考え方、価値観の大転換が起こると予感していました。
 でも実際のところは、"防災に関わる事業”がナンボでもでてきて、明らかに忙しくなりました。予算を工期内に消化するという事業のあり方はかわっていません。ただ、忙しいなかでも個人から依頼は増えたし、問い合わせてこられる方のリテラシーも増えました。やりがいのある仕事も、ぼちぼち増えてきました。

2013年3月10日日曜日

防災の日

 今日は猛烈な黄砂で目がかゆく風も強い、春の風物詩といえばそうなのかもしれませんが、快適というには程とおい日でした。思えば東日本大震災の発生した一昨年の3月11日はとても寒い日でした。阪神・淡路大震災は1月17日と、1年で最も寒い時期です。その点今年90年目を迎える関東大震災は9月1日です。台風さえ来なければ概ね天気は安定しやすく、1年で一番暑い時期もちょっとすぎています。なんかの番組で、重要な決断・議論は冬にしない方がいいということを行っていましたが、実際そうかもしれません。

2013年3月1日金曜日

東大の地理の入試問題

 昨日有名大学の入試問題が掲載されていました。そのなかで東京大学の地理の問題に、興味深いものがありました。ある意味、今流行の”深層崩壊”に関する問題です。

問題:http://nyushi.yomiuri.co.jp/13/sokuho/tokyo/zenki/chiri/images/mon.pdf
解答例:http://www.yozemi.ac.jp/nyushi/sokuho/recent/tokyo/zenki/chiri/images/kai.pdf
     http://nyushi.nikkei.co.jp/honshi/13/t01-53a.pdf

 解答例はいくつかあるでしょうけれど、日経新聞社の解答例の方がオーソドックスでしょう。ちなみに、この問題に使用された地形図は、1984年長野県西部地震によって発生した木曽御岳伝上崩れです。ただ、この問題は文系学部用の問題であって、私達の業界に入ってくるような学生が受験してはいないでしょう。そして、防災の面で、このような低頻度大規模災害にどのように対処するかは、まだ解答がえられていません。

2013年2月24日日曜日

仕事の量と種類

 久しぶりのブログ更新です。まあ忙しくて寝る(ブロクの文章を練る)ヒマもありません。仕事の量は沢山あるのですが、種類は意外とすくない。深層崩壊と道路・鉄道防災です。
 学生のこらから斜面地形を少々かじっておりましたので、深層崩壊や地すべりといった地形発達史的背景を考えながらの業務は楽しいといえば楽しいのですが、最近どうも様子が違ってきています。マニュアル化の動きがあるのです。GISや自動抽出という言葉が使われだすと、たいがい地形発達史は影が薄くなっていきます。定量的解析と定性的解釈の相克です。
 道路や鉄道関係は、航空レーザー計測図をもっと使えばよいのです。昭和時代に作成された”台帳”の地形図は災害要因の分布域までカバーできておらず古い情報なのですが、なぜかそれが基図にされることが多いのです。確かに航空レーザー計測図は引き出すことのできる情報が無尽蔵にあるので作業が大変ですが、それを手作業で地道にやるべきです。

2013年2月6日水曜日

「聞いた事がない」けど繰り返されている 

 私も投稿した砂防学会誌65巻5号に、

多田泰之・大丸裕武・三森利昭;古今近畿水害の特徴とその差異

という興味深い記事がありました。
被災地域の齢80をこれる老人が「このような災害は聞いたことが無い」というセリフは、古文書にも繰り返し書かれているし、現代の災害でも頻繁に聞くのですが、丹念に調べると過去に何度も同じ地域で発生している。
この事実は、1)災害の生じやすい場所はある程度決まっている、2)甚大な水害の発生周期は人間の寿命を超えている、3)一生に一度あるかないかの災害時に避難等で適切な判断を下すのは非常に難しい
  人生のベテランでも災害のベテランにはなりえない。地形発達史的背景、地質的背景の視点もつと、人間が災害と呼んでいる現象が自然にとっては日常の仕事であることわかります。問題は、東日本大震災ほどのことがあっても、なかなか地学教育が盛り上がらんことです。”就職によいから”いう軽いモチベーションで"理系人気”といわれていますが、”理科離れ”とは違うものです。

2013年2月3日日曜日

深層崩壊地下水から予測 渓流の電気伝導度から危険箇所絞る

http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20130201ddlk40040391000c.html
ECは岩石から溶け出すイオンの量を示し、ECが高ければ地下水の割合が高いことになる。渓流のECを測定すれば、湧水(ゆうすい)地点の特定につながり、斜面ごとの危険度判定に生かせる。実際、05年に深層崩壊が起きた宮崎県・鰐塚山(わにつかやま)の渓流で測定したところ、ECの高低と崩壊場所が符合。地形や地質の調査と合わせれば、さらに精度が高まるという。
ECの有効性に気づいたのは出水市で学生らと調査活動していた時のこと。「学生が休憩中、暇つぶしに何カ所か測ったら全く違う数値が出た。なんでなんで、となった」。地すべりが発生した後、現場で地下水の状況を調べることは一般的だが、深層崩壊の事前の予測に利用する発想はそれまでなかった。
---------------------------------------------
地下水とその圧力を見える化するという意味で興味深いと思います。小渓流、ガリーレベルでの検証は難しいかも知れませんが、航空レーザー測量による高精度地形図を用いた微地形分類図と地質踏査など、地道な調査を重ねていけば、良い結果がでるかもしれません。

2013年2月1日金曜日

Simple is

砂防学会誌の技術ノートを投稿しました。

http://www.jsece.or.jp/indexj.html
Proposition of simple cone-penetration test measurement and slope conservation countermeasures

-A case study of debris disaster caused by heavy rain in North Kanagawa, September 2010-
About 90%or more of the slope disasters occur as surface collapses. As a case study,we report debris disaster coused by heavy rain in Nothern Kanagawa, September 2010. This report proposes Handy type method of Soil slide survey and countermeasure without removing vegetations

図表タイトルも英文キャプションがついていますが、Simpleばっかりです。確かにこれで崩壊深と土質強度と対策ができるのですから便利なものです。

2013年1月12日土曜日

マニュアル・データ化と技術者の育成

今日の神奈川新聞の経済面より

『老朽化、防災に2.2兆円 公共事業』
地方自治体が管理するインフラの点検、補修は「防災・安全交付金」で支援。点検マニュアルの作成や結果のデータ化、技術者の育成など、ソフト面を充実させる。

さらっと書いてありますが、マニュアルを作ってしまうとイレギュラーを見逃しやすくなります。崩壊地は山地斜面全体の数%もいけば大災害となってしまいます。、崩壊跡地という抜け殻で丈夫な箇所が要対策になってしまい勝ちですが、様式を満たせばよいのであれば、大多数の崩壊予備斜面を見ないことに陥る事態はさけなければなりません。そういう着眼点をもった人材育成こそ全てであり、記事のように並列でサラッと流せない問題と思います。

2013年1月11日金曜日

自分で判断

体罰を受けた子は、「何をしたら殴られないで済むだろう」という後ろ向きな思考に陥ります。それでは子どもの自立心が育たず、指示されたことしかやらない。自分でプレーの判断ができず、よい選手にはなれません。そして、日常生活でも、スポーツで養うべき判断力や精神力を生かせないでしょう。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130111-00000042-asahi-soci
--------------------------------------
この事件で述べられている体罰は別の記事にゆずるとして、スポーツではなくても全ての「技術職」に関する警鐘のように聞こえます。

2013年1月7日月曜日

ガソリン難民?

今日の新聞の1面でした。

http://www.sankeibiz.jp/business/news/130107/bsg1301071826002-n1.htm
 縮小傾向に追い打ちを掛けているのが、改正消防法に基づく規制強化だ。対象は設置から40年以上経過した地下のガソリンタンクなどで、事業者が対応しない場合は使用許可が取り消される可能性もある。
 総務省消防庁によると、地下タンクの老朽化などによる油漏れ事故は23年に61件発生しており、腐食防止措置などの対策を求めている
--------------------------------------------------------------
昨年の笹子トンネル事故で一気にインフラの老朽化が脚光を浴びました。正月に江ノ島電鉄極楽寺駅の斜面崩壊は、水道管の破裂が原因でした。作ったころは標準仕様だったのでしょうが、標準でなくなってきました。。。えらいことですが、少数精鋭の現場技術者が活躍しなければならないでしょう。 

2013年1月6日日曜日

浸水域ハザードマップの見直し

http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/121230/dst12123011160010-n1.htm
 東日本大震災で数百人の犠牲者を出した岩手県釜石市鵜住居地区で、想定浸水域の外側に居住していた住民が多数亡くなるなど、ハザードマップがあったためにかえって住民の避難を阻害する事例が近年、目立ってきた。このような状況に対し、防災研究者らは「避難勧告・指示が出されたときに、避難すべきかどうか、どこへ避難すべきか、住民が判断できる材料が乏しい」などと指摘し、ハザードマップの見直しを求めてきた。
 平成16年に豪雨災害で9人の死者が出た新潟県三条市は、専門家の指摘を受け、自治体では独自のハザードマップを作成した。浸水想定をもとに住民の居住環境を考慮。
木造の平屋や2階建て、鉄筋の平屋や上層階のケースごとに5段階で危険度を評価した上で、避難のタイミングを「浸水前」と「浸水後」で想定。
 それぞれについて、「在宅避難」か「自宅外避難」など具体的な避難方法を提案した。
---------------------------------------------------------------------------
新潟県三条市豪雨災害ハザードマップ
http://www.city.sanjo.niigata.jp/data/gyousei/heavyrainfall_hazard_guidbook/
--------------------------------------------------------------------------
三条市のガイドブックは、河川ごとに浸水域が示され、どのような状況になったら逃げたらよいかのガイドラインも示されています。さらに、自然現象の不確実性(実際どのように洪水が氾濫するかはそのときになるいまで分からない)についてもふれており、自分の判断で逃げることを促しています。現在のハザードマップでは、模範といえるのではないでしょうか。

問題は”白い地域”です。土地は洪水や土石流、掃流、様々な形態の土砂移動現象によって形成されます。昨年、私のふるさと柳川市では大変な水害にみまわれましたが、となりの(矢部川左岸側の)みやま市のハザードマップは、ほとんど”白い地域”でした。

堤防が決壊した場所はCの字状の旧河道が発達する場所で、昭和51年度に作成された治水地形分類図には明記されていました。ところが、平成19年に作成された浸水想定区域図では、この地点の決壊は想定されておらず、浸水も想定されず。 川の気持ちになって、現場の経験を生かして作ったハザードマップのほうが役に立つこともあります。

2013年1月4日金曜日

「はじめに」

 昨年(2012)年は、学会誌に3本の報告を投稿しました。テーマ、学会誌ともそれぞれ違うのですが、研究の目的と背景を述べる「背景」は、共通するものがあります。概ね、以下のとおりです。

 ①近年地震や豪雨により大規模な地盤(斜面)災害が発生している。
 ②インフラが更新時期を迎えている。
 ③だから危険箇所を抽出し、評価・地図表現(ハザードマップ)を考えねばならない。

 ①については2004年の中越地震あたりから現実に頻発するようになりました。②については、これまで盛土造成地や擁壁の点検・調査の最中に、なんかそろそろ、、、と思っていたところに笹子トンネルの事故が起こりました。ですから対策まで見据えた調査報告をまとめることが今年の課題と思っています。③は、高精度地形図を使ってもうそろそろ応用地形学図、工学的地形分類図を完成させたいところです。

 一昨年の3.11以降、明らかに忙しくなりました。昨年はそれにかまけてブログの更新頻度も低くなってしまいましたが、今年はもっと頑張りたいところです。