2014年1月30日木曜日

QGIS・高精度地形図と山地の地形分類

 最近は広い範囲で高精度地形図が整備されています。これがフリーGISのQGISで等高線まで変換できるととなると、これはもう推定だった後氷期開析前線がほぼ確定になります。渓岸が新鮮岩であるか、あるいは地すべり性で不安定であるかなど、発達史に基づいた地形分類が可能になります。これは25000分の1地形図の等高線では表現できません。応用地形判読士の試験でもつかっていいくらいです。そのうち試作版を作ります。

 http://gis-okinawa.sblo.jp/archives/20120822-1.html

2014年1月20日月曜日

吉野弘 さん

今日、詩人の吉野弘 さんが逝去されたというニュースがありました。
私たちは自然とふれあう仕事をしながらも、「崩れる」「すべる」など、まあろくな言葉がありません。吉野弘さんのように清冽な言葉を堆積させてみたい、、自身の結婚式では祝婚歌をスピーチしたこともあって、茨木のり子さんなどとならんで最も好きな詩人のひとりでした。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/4650/sub1.html

2014年1月17日金曜日

あの日わたしは(2)

○1995年1月17日
 成人の日の振り替え休日が終わった翌日。卒論は出したものの、恥ずかしながら単位をいっぱい残していたので、後期試験勉強のため夜更かしは続いていました
 その日の午前5時46分の衝撃はもちろん忘れることはできません。
 下宿のおばさん、娘さん、近所の方々、特に女性の方は悲鳴とともに外に飛び出していました。私もとっさに2階の窓を開けていましたが、屋根が落ちるでもなくこのあたりは大きな被害は出ていないことをひとまず安堵。と同時に、近畿の活断層分布と知人・友人の住まいの分布が自分の頭の中にプロットされ、ここでこれだけのゆれに見舞われるということは、震源地は大変なことになっている、みな大丈夫か?という心配が交錯する不思議な心理状態でした。

2014年1月13日月曜日

あの日わたしは(1)

○1995年1月13日
 奇しくも金曜日でした。正門から出て2回左折し名神高速道路の坂を下りきった、いまではR&E関大前マンションが立地する近くの家に下宿していた私は、16時に迫った卒論提出に向けラストスパートの最中でした。文学部事務室までの距離と自分の鈍足を計算しながら、まだ大丈夫と15時50分くらいまでは部屋にいて、拙い文章をこれまた拙いワープロ(2ヶ月ほど前に生協で買ったばかり)さばきで修正していました。そして、後にも先にも経験しないほどの全力疾走で法文坂を駆け上りました。みな考えることは一緒で、文学部事務室前には他の学科の人たちもいて、行列ができていました。実際に提出したのは16時を10分ほど過ぎていたでしょうか。
 卒論のタイトルは「猪名川流域の地形と洪水特性」。猪名川流域の微地形分類・土地利用の変遷と昭和時代に繰り返された洪水氾濫の形態とがどのような変遷をたどったか記載したものです。関西の災害環境特性としては水害がメインであり、地形と洪水の関係から都市形成の基盤まで推察できるのではないか、と大きなことも考えていましたが、その“4日後”でした。

2014年1月11日土曜日

地形判読記号 - 一般斜面にこそ災害要因があるのに

応用地形判読士関連ですが、地形判読記号の事例が掲載されていました。

http://www.zenchiren.or.jp/ouyouchikei/chikeihandoku.pdf

凡例の書き方については個人差があるので、これで一般的かどうかは分かりませんが(みているとどうも今村氏の1970年代半ばの応用地質学会誌に掲載された論文に似ているような気がする)、どうも斜面地形において違和感があります。

例えば、遷急線は△の記号を付与することになっています。私の周辺にいる方は、土木地質に深く関わっている方がこれに近い記号を使う傾向にあります。おそらく遷急線の奥に露岩や地質・岩相の境界をみているので断片的な分布になるのでしょう。

ところが、私のように地理・地形屋は最終氷期後半の”連続的な地形変化”を”追跡”しようとする者は、遷急線は連続するものと考えます。したがって、△マークをつけていると手が疲れて仕方がありません。よって、ケバを”ちょんちょん”とつけます(新しい時期の侵食前線は2本ケバ、古い遷急線は1本ケバなど)。

そして、この事例では、一般斜面は記号を表示しないと書いてあります。一般斜面ってなんでしょうか。おそらく遷急線下部で崩壊地でも地すべり地でも崖錐でもない斜面といいたいのでしょうが、実はそこに”崩壊予備物質”があるといえないでしょうか。ここに掲載されている地形記号(記号とはまさにある程度定着して化石となり過去形である)、災害が発生してしまった後の状態を表していて、実は災害要因は一般斜面にこそあるのではないでしょうか。

そうすると白い部分のない地形判読図を作らなければならなくなるので大変ですが、なにも書かなくてよいといってしまうと見えるものも見えなくなってしまいそうです。

私は昨年度の応用地質学会で、この点をなんとか解決しようと思ってポスターセッションしました(相当うまくやらないと見苦しいことを実感しました)


http://www.kankyo-c.com/topics/2013oyogakkai/p21_01.jpg
また、白い部分のない地形判読図に近いイメージとして、以下のような論文も見つけました。

仙台周辺の丘陵地における崩壊による谷の発達過程 宮城豊彦、地理学評論Vol. 52 (1979) No. 5 P 219-232 この論文の第3図が近い(ただし、広域で作成するのはとてもしんどい)

2014年1月9日木曜日

地すべり地形の発達史とその丁寧な記載 - 応用地形判読にむけて

 私もたまに後進の指導をする機会があります。地形・地質を理解するためには、空中写真判読や地表・地質踏査を繰り返し解釈をしゃべるのが種なのですが、こと地形分類図作成にあたっては、丁寧な記載の仕方、お手本が以外とないように思います。
 
 その点、北海道立地地質研究所の田近先生は、地形学的解釈はもちろんのこと、とても丁寧、精緻な図表現をされるので、若手には、対象地域の空中写真を判読し図の精度を真似てみろ、と言っています。スケッチをすると脳みそが極めて活発に動くので、勉強になります。
 応用地形判読士の試験においても、キーワード探し的な採点もさることながら、現象をどれだけ精緻に描写しているかも見るべきです。精緻な表現ができるということは、地形発達史を的確に把握している事の十分条件になるからです。そのためにも、ただ単に多くの地形種を読み取らせることを目的として、何が主体がわからない出題範囲を設定するのではなく、一つの地すべり地形だけにしぼって、滑落崖の侵食度や後氷期開析前線との関連、末端崩壊、腕曲状水系の発達など、地形発達に基づいた危険度区分が読み取れるような問題意識があってもいいでしょう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jls/47/2/47_2_91/_pdf

2014年1月6日月曜日

後氷期開析前線と斜面崩壊 - 急斜面の応用地形判読

平石 成美・千木良 雅弘・松四 雄騎
紀伊山地北部天川地域に分布する遷急線
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/nenpo/no56/ronbunB/a56b0p76.pdf
京都大学防災研究所年報 (56), 731-740, 2012

「遷急線」というキーワードが直接使われており、かつ斜面地形発達に関する最先端の論文であると思います。この論文のFig10に示された遷急線下部の不安定斜面(一見明瞭でないところが)を抽出することは、昭和28年災害以来の斜面地形研究の課題であり、地形判読の個人差が一番大きい部分でもあります。試験にするのであれば、判読図作成にこだわらす、最終氷期から今までの地形変化・環境変化をどれだけ述べられるか、文章問題にしてもよいのでしょう。

2014年1月5日日曜日

面を構成していない斜面こそ-応用地形判読-

 先日応用地形判読士の二次試験問題を解答してみましたが、両方の問題とも「地形面」が分布する地域でした。確かに肘折カルデラに分布する「地すべりブロック」は活動的であり、円弧状クラックや陥没等も多いので、地すべりが形成した地形面を抽出することは有意義です。
 しかし、これが(表層にしろ深層にしろ)急速に崩壊する斜面の地形分類となるとどうでしょうか?これまでは崩壊地、崩壊跡地が地形分類図の主役になってきましたが、実はそれらは安定した地形種です。地すべり地形とて、明瞭であれば、それは一旦活動して安定状態にあると考えることもできます。危険なのはまだ崩壊していない、地形的には一見なんの変哲も内容に見える斜面で、航空レーサー計測図でなんとか他の斜面や侵食前線で区別できる程度です。そのような斜面の地形分類法は今考えているところですが、応用地形判読士の試験にでるような25000地形図ではなかなか難しいでしょう。