2010年12月31日金曜日

マニュアル外の仕事

3年前から「あんしん宅地」と称して、地質技術の民間需要・一般産業化を目指した取り組みを行ってきました。その後リーマンショックを発端とする不況もあって、頓挫しかけましたが、このところハウスメーカーや個人からの依頼がまた増えてきました。
 今年の新たな傾向としては、基準書どおり、あるいは特に問題のない一般的な地盤調査なら自分の会社で調査をするが、宅地背後の斜面や宅地の地すべり、谷埋め盛土問題など、“イレギュラー”がある案件については、地質技術者たる私たちに調査を依頼するということがありました。たとえば、

・家の一部をリフォームしたいが、背後に斜面があり崩れる恐れはないか?
・擁壁の改修を手掛ける建築会社の依頼をしたが、既存不適格でその建築デザイン会社の技術の範ちゅうではないといわれた。なんとかならないか。
・法面が傾斜方向と斜行する方向に崩壊が拡大していったのはなぜか?

 また、マスコミで深層崩壊や谷埋め盛土の危険性を指摘する番組があった際に、自宅は果たしてどうかという調査依頼もありました。 こういう状況を見ていると、“ニーズはある”といえます。今年はiPadや電子書籍など新しいメディアも台頭しました。これから家を買うであろう、私たちの同世代を中心に、地質技術の存在を伝える機会がひとつ増えたといえます。ビジネスチャンスの開拓のために、ここは来年手を打つべきポイントといえるでしょう。

2010年12月30日木曜日

無参照世代

 昨日の記事で平成世代について書きましたが、神奈川新聞にも世代論が書かれていました。それによると、いわゆる団塊の世代、全共闘世代、団塊ジュニア世代、バブル世代、などなどいろんな名称があるなかで、いまの20代は○○世代という名称がつけられない、戦争やオリンピック、バブル経済など、時代を象徴する出来事がなく、それぞれが自己の中に入り殻を破らない。バブル世代は最後の”塊”である。と書かれていました。
 その”塊”とは、神奈川新聞の記事によると、私たちより5年くらい上のようです。この業界においては20代前半のころ絶頂期だったのだろうと思います。私は95年に社会人になりましたので、その後は、まさしく地すべりの断面図のような時代展開(急激な滑落崖と低平なだらだらとした移動体)でした。さて、これを低成長のまま続く地滑り地帯ととるのか、いやいやよくみたら繊細な環境があって生態系が豊富、傾斜地を登る体力を厭わなければ豊穣な農地にもなるじゃないかとなるか、、、いずれにしても、いい年にしたいですね。

2010年12月29日水曜日

バブルを知らない平成世代

 昨日は忘年会だったのですが、学生アルバイトも参加してくれました。いまの学生さんは平成生まれで、生まれたころにバブルがはじけ、モノごころついたときから不況です。そのせいかどこかクールです。仕事の面では、ワード・エクセル・CADが当然のごとくあった世代です。
 一方私たちの世代は、こういったデジタルとアナログの移行期、端境期でした。社会人一年目の最初の仕事はスクリーントーンの買出しでした。いまにして思うのは、手書をするときの脳みその動き、現場のスケッチの精緻さ、そして”味”、、そういったものを直接知る事ができましたので、いい経験だったと思います。来年は40になりますので、こういったところを伝えて生きたいし、ポストバブルの最初の世代として、リードできるところはリードしなければいけない年頃になってしまいます。

2010年12月28日火曜日

寒い、、現実路線

温暖化対策、現実路線への転換焦点 排出量取引棚上げ、産業界に配慮
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101228-00000015-fsi-bus_all

 排出量取引制度は企業に二酸化炭素(CO2)など温室効果ガスの排出枠を設定する制度。枠を超えて排出した企業は、排出量を枠内に抑えた企業から市場を介して排出枠を購入する。排出削減コストが高い企業は、コストの低い企業から排出枠を購入することになるので社会全体のコストを最小限にできるメリットがある。 
 しかし、制度運営の難しさも指摘されていた。仮に過去の生産活動の実績に基づいて排出枠を割り当てるとすれば、成長途上の企業は小さな枠しか得られず不利になってしまう。省エネ機器を生産する企業も生産を増やすことが難しくなり、環境産業の育成を阻害しかねない。気候や景気動向が排出枠の市場価格に影響し、投機を招くとの懸念も指摘されていた。
 産業界は、負担増大のほか「排出枠の割り当ては統制経済につながる」などと一貫して反発。コスト削減につながる省エネの追求は「当然のこと。排出量取引制度は省エネ化の動機付けにならない」(日本自動車工業会)との立場だ。
 制度のデメリットを回避するには運用を柔軟にするしかない。ただ、同様の制度を導入している欧州連合(EU)では、各企業に割り当てる排出枠を大きくしたため、実質的な排出削減につながっていないなどの批判が出始めている。

そろそと帰省しますが、九州は大寒波です。今年はエコポイントやエコカーの駆け込み需要でちょこっと景気がよくたったとかならないとか、、、多分そろそろビジネスのネタとしてのCO2の存在感は、本来の姿である”空気感”に戻るのでしょう。

2010年12月27日月曜日

書類地すべり

 この時期社内の大掃除をされる方も少なくないかと思います。不精な私は、机の上の書類地すべり防止対策に苦慮しております。右側部は通路となっており、応力が常時開放されています。左側部はというと、対岸の同僚の席の書類がどうも3次クリープに入りそうな勢いで、両者の谷底が埋め尽くされてしまいそうです。
 なにしろこのところ現場でばたばたでしたからアンカーも杭も排土もろくにしておりませんでした。それどころか、学会誌などをつめこんだバランスの悪いケースは蛇紋岩のごとく膨張し、アンカーがきかない状態になっていました。
 唯一不同土塊と言える場所は、たぶん元気があったんでしょう、適度な厚さでクリップ度めして指交状態にしておいたところです。あるいは、パソコン本体が押え盛土となって動きがとまったところか、、!?
 管理がいい加減なところは、クリアファイルやわら半紙、B5とA4サイズの書類が交っていたり、かなり不均質な状態です。体質でしょうか、社会人15年目ですがどうも書類地すべりが収まりません。こんなやつが、地すべり防止工事士であり、あんしん宅地やろうってんだから、、、、みなさんはきちんと未然の防災対策をしてくださいね。

2010年12月26日日曜日

テフロクロノロジーによる斜面発達史

 Googleアラート”地すべりで、徳島大学機関リポジトリに掲載されている論文が届きました。著作権の関係で、最新ではなく2008年の論文です。

 テフロクロノロジーによる徳島県神山町の高根地すべり,東大久保地すべりの発生時期の推定
 http://www.lib.tokushima-u.ac.jp/repository/metadata/62128
 
 この論文では、ATの降下前後に初生地すべりが発生、K-Ah堆積時までにも大きな変動があったことが明らかにされています。また、砂防学会誌にも、テフロクロノロジーを用いて斜面変動履歴を試みた論文がありました。

 深層崩壊発生危険地におけるテフロクロノロジーによる斜面変動履歴の解明 - 宮崎県鰐塚山の2005年崩壊地周辺 - ,砂防学会誌,Vol63,№2,2010

 こちらの論文では、7300年前に降下したアカホヤ火山灰の堆積状況から、アカホヤ降下堆積時の土層断面が安定している箇所や、二次移動している箇所、その後削剥された箇所などの関係から斜面安定度が検討されています。

 調査手法や目的は同じといってもいいのですが、”地すべり”と”深層発生危険地”という言葉が使い分けられています(宮崎の鰐塚山の判読をしたことはありますが、土塊の原型がのこって”地すべり”という言葉がぴったりの場所もあります)。斜面の地形発達史は私の研究テーマでもありますが、こういった研究を科学的、客観的に評価し、リスクマネジメントに反映されればよいと思います。事業をやるための単純化された理由付けされるのは先細りの始まりですから。最近調査のための調査が多いので、特にそう感じます。

2010年12月25日土曜日

ひとめでわかる

 土木学会関西支部で、建設技術展近畿「土木実験・プレゼン大会」~どうして?なぜ?が一目でわかる~というイベントが開催されていました。これは、Googleアラート「地すべり」で、藤井基礎設計事務所の斉藤さんが制作された「地すべりが動く理由を知ろう」という記事で知りました。

 建設技術展近畿「土木実験・プレゼン大会」~どうして?なぜ?が一目でわかる~
 http://www.jscekc.civilnet.or.jp/secretaries/citizen/2010/kengi/
 地すべりが動く理由を知ろう  http://www.jscekc.civilnet.or.jp/secretaries/citizen/2010/kengi/02.pdf

 やってみれば高価な材料が特別な道具を使っているわけではない。実にシンプルです。もともと自然とはそういうものかも知れません。そして、わかりやすい表現をするということについて、子供にもわかりやすい模型をつくる、このことはコンサルの技術者はかななかやっていなかったのですが、”市民目線”が少しずつ浸透しているように思います。

2010年12月24日金曜日

クリスマス・イブ

 名作には印象的な出だしが多いものです。「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」のように。「雨は夜更けすぎに、雪へと変わるだろう」もそうでしょう。言わずとしれた山下達郎の「クリスマス・イブ」が発売されてから、今年で25年だそうです。私は九州出身ということもあり、実際、雨が夜更けすぎに雪へと変わった瞬間をみたことはありませんが、日本の自然を美しく描写していると思います。

2010年12月23日木曜日

基礎自治体(市町村)の役割と防災

 斜面や渓流の点検をしていると、よく話しかけられることのひとつに「ここはよく崩れるから役場に対策してくれと言ったが、何もしてくれん」と愚痴をこぼされることがあります。邪推ですが、役所としてはそりゃあ県の仕事だ、という意識があるのでしょうか。殆どの住民の方は、まず市町村に駆け込むというのが、全国的な傾向です。特に裏山や沢を背後に抱えている人は、大雨が降るごとに災害を身近に感じますから、身近な役所に相談するのでしょうか。県の仕事で、、と言うと”意外”な表情をされます。

2010年12月22日水曜日

ホームページビルダー15

 ホームページビルダーが15までバージョンアップしていることを知りました。いわゆるSEOやCSSに対応したテンプレートが多数そろえられているようです。

http://www.justsystems.com/jp/products/hpb/css_template.html

 私たちの業界は、一般社会向けではないために、洗練されたデザインが少ないような気がします。というようリは公共事業調達において、このようなセンスは問われません。ホームページビルダーは安価ですので、ちょっと試してみようと思っています。

2010年12月21日火曜日

研究分野の断層

 今日からの現場は、いわゆる近畿トライアングルの東側に当たる鈴鹿山脈の近くです。山地、丘陵地、台地、平野の配列でとても教科書的で、私たち地形屋のいうところの”きれいな地形”の典型です。山地の境界は活断層で画されているわけですが、山地側は地質学、丘陵と台地は地形学、活断層関連はもちろん活断層学会と地理学評論、平野は地盤工学会誌がメインという、研究分野の断層も明快なところです。

2010年12月20日月曜日

暑?

 少し前の話題になりますが、今年の漢字は『暑』だそうです。毎年、まあそうかとある程度の納得はしていたのですが、これはちょっといかがなものかと思います。ヨーロッパでは大寒波が来ているし、これからクリスマスにかけては”記録的”に寒くなる可能性だってあります。そもそも地球の”ちょっとしたゆらぎ”で暑くなっただけ、例えば100年まえからいまの気象観測網が整備されていたら、新記録ではなかったかも知れないのです。政局を代表する節操のなさ、代わり映えのなさからいって”滞”かもしれません。前向きな字ではありませんが、、、

2010年12月19日日曜日

土壌汚染調査管理技術者試験

 という長~いタイトルの試験を受けてきました。まあ、実務に関わっておらず座学でちょこっとやったくらいですから受かっているわけはないのですが、技術論ではなく手続き論が問われているなあというのが率直な感想です。"技術”より"管理”の方が、、

2010年12月18日土曜日

専門学校大卒者の入学増加

 なんともへんなニュースです。

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101218-00000005-maip-soci
 就職活動で企業の内定を得られなかった大学生が卒業後、専門学校で「就活」に再挑戦するケースが増えている。文部科学省の調査では今年度、大学卒業後に専門学校に入学した学生は約2万人で、前年度に比べ4000人近く増加した。専門学校に進むことで、「既卒」ではなく「新卒」扱いとなり、有利に働くのではとの思惑も背景にあるという。“超氷河期”の中で就職先を探す大卒者らを対象に、新コースを設ける専門学校も出てきた。

 本質である独創、実証的研究が、あくまでツールである資格に使われるということでしょうか。由々しき事態です。

2010年12月17日金曜日

難しい数式が多く出てきてよくわからない

 砂防学会誌で「日本の国土の変遷と災害」の講座が始まっています。この講座をはじめるにあたり、アンケートをされたそうですが、その際「難しい数式が多く出てきてよくわからない」という意見が多かったそうです。なんと率直な感想でしょう。数式の難解さもさることながら、結局初期条件によってなんとでもなるし土砂移動実態は再現、解明は基本的に無理だろうという思いもあるのではないでしょうか。わかることを着実に観察していくという地道な活動の報告が、結局読みやすい、理解しやすいということになるのでしょうか。

2010年12月16日木曜日

倚りかからず

もはや できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて 
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
倚りかかるとすれば
それは
椅子の背もたれだけ

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この詩は私が最も好きな詩のひとつです。茨木のり子さんが1999年に出版された本で、15万部近くを売り上げたそうです。

http://www.amazon.co.jp/%E5%80%9A%E3%82%8A%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%9A-%E8%8C%A8%E6%9C%A8-%E3%81%AE%E3%82%8A%E5%AD%90/dp/4480803505

このところの仕事は、調査者の判断よりもPCの計算式に依りかかってしまっていて、起き上がるのもむつかしい状態になっています。踏査をしていると、依りかかるのが椅子ではなく転石だったりしますが、できあいのデータには依りかかりたくないものです。

2010年12月15日水曜日

砂防学会に入会しました

 一度はやめていたのですが、砂防学会に入会しました。最近相次いだ土石流災害の調査報告が多く掲載され、古期土石流堆積物の年代測定や、アカホヤ火山灰を使った崩壊履歴の判定など、地形発達史を考える上で面白い論文が多く掲載されていること。そして、来年5月で横浜で学会が開催されるため、川崎住まいの私にとっては好都合だったからです。

 そして今日、平成22年度に発刊された砂防学会誌が全て届きました。以前よりも表紙も洗練されたとおもったら、よく見ると緑と砂防ダムの構造という”いかにも”なデザインでした。

 昨年7月に発生した山口県防府の土石流災害では、古期土石流堆積物のC14年代から、概ね140~200年といったスパンで昨年のような土石流が繰り返されていること、庄原の土石流災害の報告では、崩壊の発生素因となる不透水層は”相対的”な存在であることが示されました。

 これらは土砂移動現象を理解する上でとても重要な知見であり、効果的な砂防計画にも生かされるべきですが、なぜか”魔法の土砂整備率”と一率の土質定数とTINの精度でどうにでもなる計算モノばかり、、斜面や堆積物の気持ちが理解できる雰囲気ができないと、またやめたくなっちゃいます。

2010年12月14日火曜日

論文一本

 今日応用地質学会誌が届きました。薄いなあと思ったら掲載された論文が一本でした。今年10月に松江で行われた学会で、各セッションの座長さんが『いまご発表された内容をぜひ投稿してください』と盛んにアナウンスされていましたが、ここまで少ないとは思いませんでした。 学会の発表数はとても多いにも関わらず、それが論文化されない背景についれ詳しい事情は知りませんが、さすがに今回の51巻5号は寂しさを感じました。そういう私ですが、このところ現場三昧でなかなか論文に仕上げる時間が取れません。

2010年12月13日月曜日

地すべり地の悲哀

 いままた現場です。地すべり調査をしています。地滑り地には緩斜面に畑が広がり、日本の原風景を形成しているのですが、いまの現場は限界集落がとても多い。この素晴らしい景色が知られなくなってしまうのではないでしょうか。

2010年12月12日日曜日

砂防学会(深層崩壊を考える)

 砂防学会の特別シンポジウム『深層崩壊を考える』が、来年1月18日に東大で開催されるとのこと。

 http://www.jsece.or.jp/news/2010/201011-4.pdf
  最近注目を集めている深層崩壊について、これまでの研究の成果から深層崩壊の実態を明らかにするとともに、その多様性について議論し、今後の対策の方向、研究の方向を探る。

 地質学会や応用地質学会は共催になっていません。うちの会社でもどういうわけか砂防学会の会員はいません。もうすこし譲歩した方がよいように思いますが、、、

2010年12月11日土曜日

次のテーマ

 私は応用地質学会の応用地形学研究小委員会に属しています(なんで”小”がついているのか)。この委員会は平成7年に始まったといいますから、私が社会人になってからずっと続いていることになるのですが、なんと未だに私が最年少です。そのせいか、ちょっと委員会のHPもないし、ちょっと古さを感じます。いまは電子書籍もあることですし、「市民のための地形、地質学」や応用地形学的ガイドマップも電子書籍化することを提案してみようかと思っています。

2010年12月10日金曜日

手計算で安定解析

 うちの社長は地すべりの安定解析を関数電卓片手によく手計算しています。その方がどこに問題点があるのかわかるということなのです。最近はエクセルでも2万円弱で地すべりの安定解析ソフトを購入できるようになっています。

 Excelによる安定計算(円弧/複合すべり),斜面補強工設計(データ入力 等),法面施工管理ツール
 http://www.vector.co.jp/soft/win95/business/se324739.html

 一方で、ネットでいろいろと調べていたら、盛土の安定解析の苦労話(手計算で徹夜でやり直した)という話もありました。

  http://www5b.biglobe.ne.jp/~kstree/intro/010.html

2010年12月9日木曜日

レーザー計測と地生態図

 地理学評論の2010年11月号に、地形と生態系に関する以下の論文が掲載されていました。

 佐藤浩ほか(2010):航空レーザー測量データ及びハイパースペクトルセンサーデータを用いた白神山地・泊の平地区における地生態学図の作成,地理学評論83巻6号,pp.638-649

 固有名詞がすごく長いのですが、航空ハイパースペクトルセンサーによって、地形や地表を覆う植生の状況が高精度にわかるというものです。
 地生態学の意義は社長が以前から論じていたところではありました。例えば

 応用地生態学  http://www.kankyo-c.com/geo_eco.html
http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jjseg1960&cdvol=47&noissue=5&startpage=297&lang=ja&from=jnlabstract

 地理学評論の論文では、先行研究の植生分布図、線的に行われている現地調査の結果をもとに作成されているため、一様な精度で面的に図化するのは難しいと指摘されています。これは難しいというよりは、企業の職員としてやるには時間がないといったほうが近いと思います。当然のことながら、頭の中では面的に把握しているわけです。現場を歩くときは調査側線をメインとはしながらも、周囲の地形、地質(転石、露岩、断層の有無、集水地形かどうか、、、)など、いろんな”系”を想像しながら歩くわけで、ルートマップは面的に作成していますし(メンタルにはもっと)、地理学評論が指摘するほど難しいわけではないと思います。この域に達するには、10年くらいは空中写真判読と地形図と現地調査のフィードバックを繰り返さなければいけませんが、地表・地質踏査の醍醐味でもあります。
 ただ、レーザー計測の精度はやはり圧倒的です。あくまでツールとして、強力な味方にはなります。うまくハイブリッドして、環境調査にも活かし、仕事にしてみたいところです。

2010年12月8日水曜日

土壌・地下水汚染原位置浄化技術

 土壌汚染関連の話題を続けます(といっても現場で携帯から書いているので手短です)。日本工業出版のサイトで、上記タイトルのような500円の小冊子があるのを知りました。

 土壌・地下水汚染原位置浄化対策
 http://www.nikko-pb.co.jp/products/detail.php?product_id=2237

 民間がマーケットだけに、地形・地質に関する調査技術よりもこのような企業の競争が活気があるような印象です。

2010年12月7日火曜日

土壌汚染対策法

 Googleアラートで「土壌汚染」に関するニュースがヒットするように設定してますが、あるブログに、「国と地方の温度差」という記事がありました。

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よく誤解されるのだが、土壌汚染対策法とは「土壌汚染を根本的に浄化する」ことを目的にした法律ではない。第1条を見てもらえば分かるとおり、土対法はまず「汚染状況の調査・把握」を目的とする法律であり、その上で「健康被害の防止」を狙いとする。健康被害の防止というのは、必ずしも「その土地の汚染を根本的に、完全に除去する」ことを目的とするのではなく、むしろ「拡散の防止を図る」ことの方が重要である。
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 多分この方の文章から透けて見えるのは、技術論よりも手続き論が優先されてしまう現状があることでしょうか。土砂災害対策法に基づく基礎調査などはまさにその典型ですが、この”利系の発想”こそ拡散を防止すべきです。土石流やがけ崩れは、よけられないほとの突発的な現象であるとはいえ基本的に目に見える現象ですし、”コトが収まれば”しばらく動きませんし斜面がなければ発生しません。これに比べると土壌汚染は資産集中部でのことですから、自然科学を客観的に評価する目がより重要ですので、マニュアルを免罪符にしてほしくないものです。

2010年12月6日月曜日

アセス法改正 - 異例の継続

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http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101203-00000011-mai-pol
 臨時国会が3日で会期末を迎え、環境影響評価(環境アセスメント)法改正案が時間切れで継続審議になることが確実になった。今年の通常国会で参議院を通過し、今国会でも衆議院で可決したが、同じ国会で衆参両院の議決を得られなかったために不成立という異例の展開となった。
 改正案は、風力発電所を新たに環境アセスの対象事業に加えたほか、事業の検討段階からアセスを実施する「戦略的環境アセスメント」を事業者に義務づけるもの。今年の通常国会に政府提案で提出され、参院で4月に可決した。
 しかし鳩山由紀夫首相(当時)辞任の影響などで衆院では継続審議となった。臨時国会は衆院から先に審議し、11月25日、全会一致で可決したが、与野党対立の余波で参院の審議時間が足りなくなった。
 法案の成立には「同じ国会で衆参両院が可決する」というルールがある。年明けの通常国会では、来年度予算の審議が優先されるため、成立は春以降になる公算が大きい。
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地味な記事ですが、このような街づくり、区画整理など、暮らしに密着した政策に関する議論がどんどん遅れると、そのときになって”知らなかった”事態になりそうです。私も環境アセスメントに携わった事がありますが、基準書・白書・去年の例などに合わせて、如何に手際よく量をこなせるかが評価の対象でした。時にアワスメントと揶揄されながら。。。本当のアセスメントを持っていくために、地質や環境評価を科学に基づいた客観的な判断を行うといった、議論の成熟まではものすごく時間がかかるような気がしてしまうわけです。本当に地味ですが、社会的損失のリスクがあります。

2010年12月5日日曜日

ハザードマップの比較(道路と砂防)

 以前にも紹介した「基礎工」2010年8月号ですが、なんとなく読んでいるうちに『道路斜面防災におけるハザードマップとその活用』と『土砂災害ハザードマップとその活用』とを比べてみると、、「ハザードマップ」の意味合いがちょっと違うのではないかという印象をもちました。
 
 両方とも『斜面から発生する土砂移動現象』という”ハザード”の部分は共通のはずなのです。まず、道路防災の方では、「道路防災地質図」「土砂到達範囲の予測」といった技術論がまとめられています。一方で、土砂災害ハザードマップの方では、設定された危険区域は既成事実として、その住民へのアウトリーチを主眼としてまとめられています。
 これは土砂移動によるリスクが道路か人かの違いであり、後者は「土砂災害防止法」があり、法律論にもなっています。後者のハザードは「(急傾斜地の)崩壊」「土石流」「地すべり」の3種類であり、最近は「深層崩壊」も仲間入りしそうな感じですが、土砂移動や斜面の挙動が法の網にひっかかってくれたら苦労はないのです。むしろ「防災」という目的をシンプルにして、土砂移動に関する議論は現場に基づき個別の議論があった方がよいように思います。

2010年12月4日土曜日

マニュアル外の仕事

3年前から「あんしん宅地」と称して、地質技術の民間需要・一般産業化を目指した取り組みを行ってきました。その後リーマンショックを発端とする不況もあって、頓挫しかけましたが、このところハウスメーカーや個人からの依頼がまた増えてきました。
 今年の新たな傾向としては、基準書どおり、あるいは特に問題のない一般的な地盤調査なら自分の会社で調査をするが、宅地背後の斜面や宅地の地すべり、谷埋め盛土問題など、“イレギュラー”がある案件については、地質技術者たる私たちに調査を依頼するということがありました。たとえば、

・家の一部をリフォームしたいが、背後に斜面があり崩れる恐れはないか?
・擁壁の改修を手掛ける建築会社の依頼をしたが、既存不適格でその建築デザイン会社の技術の範ちゅうではないといわれた。なんとかならないか。
・法面が傾斜方向と斜行する方向に崩壊が拡大していったのはなぜか?

 また、マスコミで深層崩壊や谷埋め盛土の危険性を指摘する番組があった際に、自宅は果たしてどうかという調査依頼もありました。
 こういう状況を見ていると、“ニーズはある”といえます。今年はiPadや電子書籍など新しいメディアも台頭しました。これから家を買うであろう、私たちの同世代を中心に、地質技術の存在を伝える機会がひとつ増えたといえます。ビジネスチャンスの開拓のために、ここは来年手を打つべきポイントといえるでしょう。

すべての尾根、谷を歩いた

 明日から千木良先生の論文の対象となった現場へ行きます。これは以前にも書きました。

 http://www.journalarchive.jst.go.jp/jnlpdf.php?cdjournal=jjseg1960&cdvol=25&noissue=4&startpage=182&lang=ja&from=jnltoc

 千木良先生の著書に『風化と崩壊』という本があります。このなかで、対象とした地域は、ほとんど全ての尾根、谷に私の足跡がついているはずである、という文章がありました。普通の人なら「豪語」といわれそうですが、その綿密な地質図、スケッチを見ていると、地質学の基本を教わっている気分にひたることができます。

2010年12月3日金曜日

歩く力、書く力

 私は運動は昔から得意ではなかったし、持久走も中の下といったところでしょうか。ところがこの会社に入って急激に踏査が増えたので、山を歩くことに対する不安が小さくなっていったと同時に多少体力もついたような気がします。同じように、ブログを書いていると知的生産に関わる基礎体力のなさも痛感することがあります。物事に対する理解度がもろに出てしまいますので、、、

2010年12月2日木曜日

宅地診断のトリアージ?

 なんとかしてあげたい気持ちはありますが、こりゃあどうにもならんということがあります。個人の相談なので詳しい話は触れませんが、地盤条件はもとより、もう変状がすすんでどうにもならん、あるいは誤った対策工によって個人の費用ではどうにもならんことがあります。トリアージみたいに、あきらめの境地になることがあります。

2010年12月1日水曜日

立山に氷河?

 日本初、氷河の可能性
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101130-00000154-jij-soci

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立山カルデラ砂防博物館(富山県立山町)は30日、同県の北アルプス立山連峰・雄山(3003メートル)の東にある御前沢雪渓に、氷河が存在する可能性が高いと発表した。氷河が確認されれば、日本初となる。 標高が高い山の谷や沢で、夏でも雪が解けずに残る地域を雪渓と呼ぶ。氷河は、雪渓の下にある巨大な氷の塊(氷体)が1年以上、継続的に流動するものと定義されている。
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うがった見方かも知れませんが、地球温暖化に伴う豪雨を背景に砂防を進めてきた一方で、氷河の発見もあるのだから、最終氷期からの気候変動の議論が活発になる??