2015年3月1日日曜日

砂防施設の維持管理に関する23年前の論文

 平成24年7月の九州北部豪雨と1990年の熊本県の豪雨による、阿蘇山の土石流の発生機構・形態はとてもよく似ています。

 http://gpi-net.jp/study/aso/aso.html H24
 http://ci.nii.ac.jp/els/110002941532.pdf 1990

 このうち、1990年災害に関する論文では、いまになって騒がれている施設の維持管理についても述べられていました。

 破壊された石積み堰堤の多くは、外力に耐える石の積み方になっておらす、河床堆積土砂を埋め込んだだけというもので、昭和30年代のものがほとんどである。昭和初期と古くても、間知石で造られた堰堤は損傷はすくない。戦争によってその技術が伝承されなくなって、練石積にたよって中づめとして野面の大小礫を入れたことが構造上の問題を引き起こしている。
 土石ですでにいっぱいになったダムでは、流下してきた土石流が乗り越えるときに水通しの部分に大きな衝撃を与えた。

2015年2月24日火曜日

100㎜/h安心プラン

従来の計画規模を超える、いわゆるゲリラ豪雨に対する災害対策として、100㎜/h安心プランが進みつつあるようです。

http://www.mlit.go.jp/river/kasen/main/100mm/pdf/anshinplan.pdf

河川管理者と下水道管理者の共同で、雨水管、ポンプの能力増強、調節池の設置、河川改修、公園などにもハサードマップを掲示するなどの周知、防災の出前講演など、いろいろですが、浸水しやすい地形場や水害履歴もわかるようにしたい。私の地元に近い佐賀では、お堀(クリーク)貯留なんかもやってるようですがその一方で宅地化も進んでいますので、資産価値とのかかわりも重要になってくるでしょう。

2015年2月22日日曜日

土砂災害対策の強化に向けての提言 国土交通省の資料から

 伊豆大島の土砂災害は「表層崩壊」ということになっており(まあそうですが)、24時間雨量が800㎜、大量の流木がこれまでの計画になかったということになってます。また、気候変動の影響により降雨規模は大きくなっていくとのこと。平成24年の阿蘇火山の土砂災害とあわせ、火山地域の土砂災害は比較的短いインターバルで起こる(新しい堆積物で未固結であるから崩壊しやすいということでしょうか)ため、個々の火山の噴火形態や履歴も踏まえた「環境認識」という考え方が必要とされています。

 また、土石流が流域界を超える現象が起こる危険個所の把握、長大斜面、0次谷の分布を明らかにすべく微地形判読が必要とされています。ただ、これは伝統的な空中写真判読というよりはDM解析によるところが大きそうです。でもこのような斜面は広すぎて、結局待ち受けの砂防堰堤や導流堤ということになるのでしょう。

 透過型の砂防堰堤の整備も進められています。これは流木対策ということで紹介されていますが、そうでなくても細粒土砂で満砂して効果量がへった状態で豪雨がくるのもどうかと思うので、土砂災害の対策として一般化すべきでしょう。

2015年2月21日土曜日

下水道と防災

想定しうる最大規模の洪水・内水・高潮への対策や、比較的発生頻度の高い内水に対する地域の実情に応じた浸水対策汚水処理区域の見直しに伴い、下水道による汚水処理を行わない地域において、雨水排除に特化した下水道整備を可能とする措置を講ずる。

  http://www.mlit.go.jp/common/001080057.pdf   国土交通省の報道発表資料です。このところ河川と下水道と協力して水害対策を進めようという記事が見られます。   応用地形判読的には、旧河道、支谷閉塞低地や段丘開析谷、自然堤防の背後など、排水が悪い泥炭の集まりやすいところ、など自然基盤の理解という意味で貢献できないでしょうか。

2015年2月15日日曜日

地方消滅と土砂災害対策

 コンビニに「図解 - ひとめでわかる地方消滅 - 」という雑誌があって、買ってしまいました。国土交通白書もそうですが、人口減少にインフラの老朽化、、共通するテーマが多いからです。

 砂防をやっている身として気になるのは、中山間地域の土砂災害対策でしょうか。
 集落だけでなく、その間をつなぐ道路が寸断されれば孤立するし、地形的に携帯電話の電波も届きにくいことが多いし、、、氾濫区域内に避難場所が立地する場合は警戒避難、ソフト対策だけでなく、砂防堰堤の整備や土石流に耐久できるような非木造とし、二階建てにするとか、いろいろな対策も出てきます。電線の地中化を推進し、崩壊による電柱倒壊に伴う通信遮断を防止する。幹線道路や避難路の斜面点検、衛星電話の設置、、、、まあいろいろ
 ほぼ安全な段丘面をしっかり判読し、防災拠点として提案できるかということも、応用地形判読士の視点です。

2015年2月14日土曜日

地すべりであることの判読 - 基本的な判読と応用地形判読

 地すべりの危険度(明瞭度ともいわれる)を考えるとき、第一歩として空中写真を判読します。10年くらい前に、地すべり学会でAHP法に基づく危険度判定法が確立されています。

http://www.gsh.hro.or.jp/download/ls_manual/ls_manual_lq.pdf
 地すべりの地形発達、発生→安定化に至るプロセスの模式図もとても詳しく勉強になります。

・・・・・・・・・・・・・が

 問題はそれ以前、そもそも地すべり地形であるかどうかの判読です’(たぶん応用地形判読士の創設目的の原点です)。急斜面と緩斜面の組み合わせはなにがあるか、段丘地形、崖錐、差別削剥地形等‥、、、紛らわしい地形の判読は、斜面の判読をLPで、広域的地形・地質的背景を25000~50000程度の(まさに流域一貫の)視点を同時にもつことが問われます。

2015年2月12日木曜日

”賃金で言えば・・・”好調な業種?

日刊建設工業新聞の記事に、建設業は離職率も低くなっており、賃金もあがり好調という記事がありした。

http://www.decn.co.jp/?p=22968

でも肝心の「人手は不足している」ことが解決されていません。
原因はいろいろあるかと思いますが、基準書どおりで新たな発見がないことかもしれません。

2015年1月29日木曜日

ダムの堆砂対策

国土交通省の資料に上がっていました。古くから語られていると思っていたのですが、総合土砂管理の観点からも重要になってきたのでしょう。

緊急対策の目標] 長期対策完成までの暫定措置として、ただちに実現可 能な対策を行う。 ・貯水池上流部の堆積土砂を除去し、建設当初の洪水 調節機能の回復に努める ・極力、有効容量内の堆砂を進行させない

でもちょっとスケールが、、、

2015年1月25日日曜日

新たなステージ - 地形種形成の規模と頻度の階層性

http://www.mlit.go.jp/common/001066501.pdf
国土交通省の報道発表資料(2015・1・20)に、新たなステージに対応した 防災・減災のあり方という記事が掲載されていました。

長期的な観点からは、自然災害から命を守るためには、災害の発生の 危険性が高い区域にはできるだけ人が住まないようにすることが重要で ある

というのは、地形学・地質学の関係者はよく言っていたことですが、常にそんなことは言っても、、、という答えが付きまとっていました。桜島の大噴火や最近の水害事例が想定を超えることがあったこと、海外では超過確率年が500とか10000年といったプランもあるとか

鈴木先生の読図第一巻に、地形種形成の規模と頻度の階層性という表があります。応用地形判読では、空中写真や地形図の混沌から地形形成過程の規模と頻度の観点から秩序を見出す仕事をしているので、「新たなステージ」というよりは「ここまできたか」という印象です。企業のBCP、ソフト対策、警戒避難対策、安全な箇所への移転など、踏み込んだ内容です。

最近の河川の氾濫ではやはり旧河道沿いで破堤・長時間の浸水がおこり、土石流扇状地のなかにも段丘化した避難適地がることなど、応用地形判読士の出番かもしれませんが、いまのところ試験問題の出し方を見ていると、狭い業界内での内輪話的であり、このような課題にはまだ踏み込めないようです。

2015年1月21日水曜日

粘り強い防潮堤

http://www.aric.or.jp/03_book/111_120/no114/topics/114-3.pdf
津波に対し粘り強い防潮堤(中央防災会議)。
東日本大震災では、1)津波以前に地震による損傷があった、2)津波が防潮堤に衝突した際に生じる波力による破壊、越流、背後地盤の洗掘があった

ということで、「三面一体化構造」ということで、天端工、表工、裏工、を鉄筋やジオテキスタイルで一体化させる。のり先にセメント改良土を施工することで引きはがれに対する抵抗力を強化するという案が示されいました。宮脇先生は緑の防潮堤を併設することを提案されていました。そもそもの地盤条件も考慮べきでしょうが、これからでしょうか。

2015年1月18日日曜日

岩松先生の文章から

1986年、「片状岩のクリープ性大規模崩壊」という論文を書いたことがある。その中で、宮崎県椎葉村本郷地区の山腹に凸地形(いわゆる胎み出し地形)があり、その下部に末端崩壊がある。この末端崩壊は大規模崩壊の前兆現象であって、やがて崩れるであろうと述べた。その写真を鹿児島大学のホームページ「かだいおうち」にも載せておいた。ところが、2005年9月6日、台風14号により、まさにその場所が大規模崩壊を起こしたと、メールを頂戴した。さて、20年前の予言が当たったとして胸を張って良いのであろうか。過疎地のため、人的被害がなかったからよいものの、もしも人命が失われていたら、恐らく責任を追及されたに違いない。学術雑誌の片隅に書いておいただけで、住民にも行政にも警告しなかったからである。その後、崩壊地頭部に林道が建設されたことも知らなかったが、当然、ルート変更を提案すべきだった。なぜ、積極的に働きかけなかったのか。「やがて崩れる」というだけで時間の目盛が入っていないことが示すように、遠い将来と考えていたからである。活断層の話でも、明日動いても不思議ではないし、1,000年後かも知れないなど言って、地質家はひんしゅくを買っている。われわれの世代の地質学では、人間の寿命のオーダーでの予知予測が出来なかったのである。次の世代の方々にはぜひ土砂災害でも短期予知が可能になるくらい学問を進歩させていただきたいと願っている。
------------------------------------------

http://www.geocities.jp/f_iwamatsu/retire/hyperopia.html

岩松先生はこのあとの文章で、若手に託したい夢として
① 切り土地すべり、地震地すべりの研究は依然として必要
② 三次元解析・GPS応用のさらなる発展
③予知予測の精度向上
④ 住民参加、地すべりとの共生
⑤ ロングライフ工法
 
を挙げられています。ロングライフはいま長寿命化としてキーワードになっています。気になるのは、「全国地すべりポテンシャルマップを人工衛星やレーザプロファイラ、GISなどを駆使して研究することが必要であろう。ただし、基本は現地踏査である。」というところ、ハサードマップの整備状況は国土交通白書にも詳しく掲載されていますが”ポテンシャルマップ”となると、、、

UAVで地形判読できるだろうか?

国土交通省のサイトに”新技術の活用と維持管理・更新の担い手の育成”というサイトがあります。盛り沢山なタイトルですが、新技術が社会貢献できるというモチベーションは本来刺激的ですので、業界の平均年齢を下げる効果はあるはすです。

橋梁点検は各地で行われているの聞きますが、ここにUAVシステムが用いられていることが紹介されていました。しかし、特段の技能が必要でなく誰でもできることは、刺激を失うことで、あまり大々的にアピールしない方が良いかもしれません。2013年に関越自動車道の利根川橋の点検・診断、岐阜でも活用され、補修が必要になる箇所を工事着手前に解明できたメリットも紹介されていました。予防防災のためには有益だろうと思います。

東京ゲートブリッジでは、維持管理の省力化、ライフサイクルコストの低減、劣化メカニスムの分析ができる「橋梁モニタリングシステム」が紹介されていて、技術士試験のキーワードになりそうな予感がします。橋梁の長寿命化修繕計画や道路ストック総点検の一環でトンネルについても垂直補完により9市町村15トンネルの点検業務を県が受託するなど、この取組みは広がりを見せている。のだとか

そのわりには維持管理・更新にあたる技術者の育成に力を入れているかというと、研修を行っているのが4割、取組みを行っていないのも過半数なのだとか。。。。。

UAVに話をむけると、いろんな新発見ができそうです。斜面防災や砂防分野では人の入れない崖地や線状凹地の新発見、レーサースキャナーを搭載すれば高精細な地形情報が得られそうです。ニゴマンの読図などいかにも昭和テイストの地形判読だけでなく、新しい技術は試してみたいところです。 http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/html/n1233000.html 

2015年1月17日土曜日

20年目の1.17

私の住む川崎は今日も寒い夜になりました。1995年に大阪で揺れを経験し、その後東京に出て20年、今思えば個人的には金融機関の破たんの方が断層の活動よりも”ありえない”、その破たんした機関の床清掃のアルバイトをしていたというのも加わり衝撃的でした。

2015年1月8日木曜日

日本人74%が災害危険地に居住 国交省推計、洪水・地震・津波

http://www.excite.co.jp/News/society_g/20150107/Kyodo_BR_MN2015010701001247.html
国土交通省は7日までに、日本の人口の73・7%(9442万人)が洪水や土砂災害、地震、液状化、津波のいずれかで大きな被害を受ける危険のある地域に住んでいるとの推計をまとめた。危険地域は国土面積の34・8%を占め、災害が起きやすい場所に人口が集中する現状が浮き彫りとなった。
 国交省は、新たな国土形成計画の策定に生かす。
 推計は全国的な傾向を大まかに把握するのが狙い。洪水は国や都道府県が想定する主な河川の浸水区域、土砂災害は土石流や崖崩れなどの危険箇所、地震の揺れは30年間で震度6弱以上になる確率が25%以上の地域。津波は、過去のデータから予測した

これを国土計画・国土形成計画に生かすとのこと。一方で水害区域面積は1970年代に比べ7分の1に減っているというデータもあります。まあ沖積平野にはスムなってことでしょうか


2015年1月7日水曜日

大規模崩壊監視警戒システム

・斜面崩壊に伴い発生する地盤振動から崩壊発生位置や規模を推測する振動センサー
・崩壊位置の確認や規模の計測を行う画像解析
・雨量レーダー等の技術を組み合わせて関係機関への情報配信を行う

これって、どこで崩壊が発生しやすいかというハザードマップを基礎資料として、応用地形判読が生きてくる話です。試験では読み取れないことを問われましたが、わかることを確実にする方がよいに決まってます。

2015年1月6日火曜日

応用地形判読からの水害対策

 私の卒論は「猪名川流域の地形と洪水特性」というものでした。河成堆積地形や段丘の開析谷等で、何回浸水したか、破堤であったか内水であったか等を記録したものです。論文というより調査報告に近いものでした。
 国土交通白書によると、洪水ハザードマップは火山・土砂災害・高潮・津波等に対して最も整備が進んでおり、河川と下水道が相互協力し危険情報周知、水防活動、雨水の貯留施設や幹線を整備する、100㎜・h安心プランに11県の登録があるようです。京都桂川、福知山市、H24矢部川の水害等は、破堤による外水氾濫でした。
 ここで注目したいのは、旧河道や段丘を開析する浅い谷、支谷閉塞低地等、浸水の発生しやすい地形場があるということです。昨年は調布で雹が降り話題となりましたが、段丘開析谷に雨や雹が集中していました。河川ではありませんが、東日本大震災の津波の浸水も、「地形分類によ
る浸水・非浸水の違いは有り,海岸平野・三角州の方が,谷底平野・氾濫平野よりも浸水しやすい傾向はあるものの,最終的にはその理由は標高に依存しているとみなすことが出来る.」程度の差はあるようです。http://www.gsi.go.jp/common/000064460.pdf

応用地形判読で安全な土地を探す 人口減少社会への移行と土砂災害

国土交通白書によると、2050年には1965年の人口規模に戻ると予測しています。さらには、約二割が無居住化するとのこと。1965年といえば今のインフラが集中して整備された時期です。しか
し、2014年時点で土砂災害危険箇所は52.5万か所、警戒区域は35万か所、特別警戒区域は20万か所と増えており、年平均1000件の土砂災害が発生しているとされています。個人的には危険住宅の移転の促進です。安定した場所に住めば特別な工法は必要としないことがほとんどです。平成25年度は、がけ地近接等危険住宅移転事業の活用が推進され、28戸が除却され危険住宅に代わる18戸が建設されたそうです。

私が知るところでは、1967年の羽越災害後に、土石流で被災した集落が最終氷期に形成された段丘面に移転した例があります。言い換えれば、1万年くらい土石流から離水した土地です。比高5m以下はイエローだけど、どうかないう前に、地形発達史的にみて大丈夫な土地があるわけです。比較的新しい時期の段丘であれば、避難する際にしんどい坂もありません。

そういった地域防災計画のための応用地形判読もあっていいはすです。地形図と空中写真判読からわからないことを推定させるというひねくれた問題をつくるよりは、地域住民の役に立つ技術を問うてほしいものです。