2010年5月31日月曜日

シンプルで使える点検表 - リスクマネジメント -

  独立行政法人労働安全衛生総合研究所のサイトに、『斜面崩壊による労働災害の防止対策に関する調査研究会報告書』という研究成果が公開されています。

http://www.jniosh.go.jp/results/2010/0407/report_slope_201004.pdf#page=28

  タイトルが長いので”おっ”と構えてしまいましたが、読んでみるととてもわかりやすいものでした。特に、27ページ(PDFファイルのページ数では33)に示されている『異常時対応シート記載例』は手書き”ポンチ絵”つきで、しかも発生している現象と責任の分担がとてもわかりやすく臨場感のあるつくりになっています。このほか、設計、施工計画、丁張、工事中、完了時の各段階の日常点検記載シートも、斜面の災害を考えた場合重視すべき項目がわかりやすくまとめられていました(ただ、個人的には”有・無”のどちらかに○をつける方式は、面倒で実は”有る”現象が目立たないのではないかと思います。ないことは空欄にしておいて、何があったかだけをかく方がよいかも知れません)。

  最近リスクマネジメントの議論が深まり、地質リスク学会も発足しました。その地質リスク学会から「地質リスクマネジメント入門」という書籍を最近出版し、土木のコーナーで平積みになっていました。よんでみたら、トンネル工事や橋梁工事における地質構造の見立ての誤りによるムダ発生事例や、コスト削減に地質調査が貢献できる、といったことが紹介されていましたが”大所高所感”が否めませんでした。すぐに使えてイメージや目的が共有しやすいものが、実はいちばん普及する必要があり、そのための議論を深めるべきかもしれません。

2010年5月30日日曜日

斜面の一生

  今年の10月に島根で行われる応用地質学会での発表要旨をこの間送信したばかりですが、その後高野秀夫論説集「斜面と防災・別記」を読んでいたら、いま私が考えていることと似たテーマの文章を目にしました。

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『地すべりと地形』一部抜粋
  かつて地すべり地形をみて、幼年期・壮年期・老年期というように分類しようと考えたことがあるが断念した。それは、この分類は流水によるほぼ一定した削剥が行われるからこそいえることであって、地すべりのように各々まちまちの移動量を示し、かつ流水の影響を受けるような地形では、この区分法は不可能であると考えたからである。
  地すべり地形を調べるうえで重要なことは、同一地点がどれだけの距離どのように変位してきたか、また変位しつつあるかということであって、永く停止している地すべりに対しては侵食された分を加えて考えねばならない。特に断面的にどのような変位をしたかということが重要で、現地形から活動以前の地形や地下構造を推定することが求められる。
  地形解析においても単に亀裂・陥没・湿地など文応を明らかにしそこからなんらかの結論を得ようとすることが順序が逆で、地形から何を得ようとするのするのかをまず決めておいて、それに沿った事象を抽出するべきである。
  買い物をする場合には普遍目的をもってモノを買うが、何もかも手当たり次第に買いあされば目的が得られるであろうという道楽息子的な調査方法は改められるべきであるが、国の技術基準や仕様書の類もこの道楽息子的な考え方に拍車をかけている。
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私は昨年地すべり地形の発達史に関する論文をかきましたが
http://www.kankyo-c.com/landslide/hensen_kaseki.jpg 
確かに高野氏の論説にあるように、道楽的な表現でした。今度の応用地質学会でも大筋は似たようなテーマですが、”同一地点がどれだけの距離どのように変位してきたか”にスポットを当ててみようと思います。

2010年5月29日土曜日

麓屑面

 先日栃木県の斜面の地質踏査でふと思ったのですが、「麓屑面(ろくせつめん)」という言葉がいまひとつ普及していません。この言葉は1980年代に神戸大学の地形学研究により、形成メカニズムがかなり明らかにされました。それによると、流紋岩やチャートのようにブロック状に風化し、かつい細粒土砂が生産されにくい地質帯に多く、さらに最終氷期でもかなり寒い時期に凍結破砕が促進され、かなり大規模な堆積地形が形成されたというものです。
 山麓の堆積物といえば「崖錐」が最も一般的(宅建にもでるぐらいですから)、次に崩積土、これは土木業界のスラングみたいなもので明確な定義はないと思います(旧ブログでもつぶやいておりました→http://blog.goo.ne.jp/geo1024/e/b389cf3a587cf622405a69ad88ef3ca5
あとは「岩屑」とか、、、細分しすぎるとマニアックですが、安易に古期崖錐というようにまとめてしまうのもいかがなものかと思っている次第。

2010年5月28日金曜日

衣替え

6月は初夏から梅雨へと変わり半袖シャツの出番が多くなります。会社の決算もあるし、、いやいや、、ブログも2年目を向かえ、タイトルバナーに自作の画像を使って少しすっきりさせたいなあと思い、ブログを一新しました。なお、これまでのブログも自分で引用することもあるかと思ってリンクを貼っておきました。

さて、このタイトルバナーの意味ですが

まず、地しばり。これは山野の日当たりのよいところ、田んぼのあぜ、高山の崩壊地にも生えていたりします。地面を覆い尽くすその様子がが地面を縛っているように見えることからこの名前がついたようです。花言葉は「人知れぬ努力」なんだそうです。そして、私の小学校時代の恩師が、週に2~3回くらい学級新聞(B4版横1枚)を作成してくださっていた(丁寧な手書きでガリ版刷り)のですが、その新聞のタイトルが「地しばり」だったのです。読書感想文などいいものがあれば書き写して紹介してくださったり、今風にいえば教え子参加型のブログだったような気がします。

次に田んぼの真ん中にある「水神様」。四国の地すべり地域で撮影した一枚です。耕運機などの作業効率からみれば、田んぼの真ん中にこんなものがあるとあまり都合が良くありません。しかし、それを差し引いても自然の恩恵に感謝するという地元の方の心遣いに感動したのです。

あとは、日記をイメージしたノートの画像です。

というわけで、旧ブログと変わらず、できるだけ毎日更新していこうと思います。よろしくお願いします。