2014年11月23日日曜日

長野県の地震 - 応用地形判読士の試験も近づいてきました

ひさびさのブログ更新です。このところ忙しくて、、、
さて、昨夜現場から帰ってきたらいきなり緊急地震速報、、みたら糸静線の真上、いまのところですが震源は神城断層と言われています

http://www.hinet.bosai.go.jp/topics/n-nagano141122/sokuho.pdf

群馬大学の早川先生のツイッターにもありましたが、『既知の著名断層が動いたのって、神戸の地震1995年1月以来、初めてじゃなかろか。』

ニュースを聞いたときは、マグニチュードや震度からみて地すべりの発生→河道閉塞を気にしましたが、まずは大規模なものはなさそうですね。でもボディーブローのように岩盤の緩みとして効いているのかもしれません。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/afr1985/1996/15/1996_9/_pdf
この論文だととても段丘面の区分が詳細に描写されているので、地形判読図の作法のいいお手本になると思います。

2014年9月15日月曜日

沖積錐か土石流扇状地か

という議論になりました。扇状地は地理の授業でも出てきますから、一般の人にわかりやすいのではないかという話です。いろいろ酒を交えてはなした結果、扇状地は形態のみであり現成かどうか、土砂流や洪水流も含まれるので激しい土石流が繰り返されているイメージがわかない、そしてもし土石流扇状地をいう言葉が定着してしまうと、沖積錐という言葉を誰も使わなくなるのでは、、という懸念もでました。

2014年8月25日月曜日

「土砂災害調査マニュアル」

私が新人の頃、以下の3冊は座右にありました。上司にも薦められました。地表・地質踏査、スケッチの経験豊富な方々が現場経験と実例に基づいて書いておられるから、災害の原因となる地形変化がどのような背景で起こるのか、臨場感があって理解しやすいものでした。

土砂災害に関わる調査方法として災害履歴調査・文献調査が説明され、巻末には災害年表も掲載されています。

今回も「雨量」「被害」「硬い堆積岩でさえ、、、」等、いかにも”未曽有”であるかのような言葉がとびかっていますが、これらの本を読むと、いずれもそうではないことがわかります。

もうこの三冊ともネットでも入手しにくい状態です。「土砂災害調査マニュアル」で検索すると基礎調査のマニュアルが多くヒットします。三冊ともPCがパーソナルなものとは言えなかった80年代の出版で今の新人が生まれる前ですが、伝えるべきことがこういうところからも見えてくる気がします。

2014年8月20日水曜日

地すべり学会にて 

平成23年もそうでしたが、大規模な土砂災害が地すべり学会と同じタイミングで起こってしまいました。現時点でまだ広島の被害全容はつかめていないようで、大変なことになっています。

今日は地すべり学会で、きいすとんの方に出会いました。きいすとんと言えばロープアクセスですが、私は成果品の鮮やかさと想像力あふれる表現力が気に入っています。

最近は「記録的」「経験のないような」「数十年に一度の災害になる可能性のある」云々と、災害史(そして”誌”)を知っとるのかいなといいたくなるような表現が続きます。

その土地の地形に記録される規模の土砂移動は、100年以上のスパンがあることも少なくありません。2009年山口県の防府土石流災害で、ひとつ古い時期の土壌の年代は500~600年前だったと聞いています。が、そういう地形を地形判読で沖積錐や崖錐と分類して、崩災や土石流は十分ありうることとして説明してきました。

応用地形判読図を作っている立場からいうと、図面に表現するということは想像力のいる作業です。沖積錐の範囲をひくにあたっても、雨量観測値として記録的であったであろう、数十~数百年前の出水時にどんな土石流が出たのか、想像しなながら書くのです。時に瀬戸内海すらなかった最終氷期の状況も思い浮かべます。道一本はさむわずかな比高が段丘面(離水面)だったりして、災害という意味では明暗を分けます。

10年前に設置した雨量計が最大値を更新したからといって記録的と騒ぐよりは、知的生産力があがります。

2014年7月22日火曜日

地形判読のメリット - 応用地形判読士雑感 0次谷問題 特徴をふたつ!? 2

 0 次谷で特に生じやすい土砂災害形態について二つ挙げ、それぞれについて それぞれについて それぞれについて地形・地質調査における留意点について述べよ

 ①谷頭凹地からの土砂崩落・土石流
 0 次谷で発生しやすい土砂災害形態は、斜面表層の堆積土砂(崩積土、匍行土砂)の内
部あるいは基底にせん断破壊が発生し、土砂が急激に落下・流出すること伴う表層崩壊
及び土石流の発生である。
  0 次谷の地形調査における留意点として、抽出する地形図の精度及び縮尺があげられる。
広域的な調査では、縮尺 1:25,000 地形図によって抽出し、詳細な調査では建物の実形が表現可能な縮尺 1:5,000 以上の縮尺の地形図を用いて、地下水や斜面物質の移動量・落水線等の地形諸元の精度向上を図る。
 0 次谷における地質調査としては、動的簡易コーン貫入試験や土層強度検査棒等の簡便な調査手法によって、表土層の厚さの空間分布を計測する方法があげられる。ただし、直線型の谷壁斜面や基盤岩の浅い部分など土砂崩落の可能性の低い箇所を避けることに留意し、電気探査や空中電磁探査等の手法で地下水位の分布状況等を把握しておくことも有効である。

 ②深層崩壊危険斜面・地すべり地形の不安定化
 地すべりや重力変形等の影響により膨出型の斜面側部の侵食谷の谷頭部に該当する箇所では、崩壊地上部の亀裂・段差や崩落崖の後退に留意しておく必要がある。また、断層や節理面など、岩盤の広域的な破砕を示唆する地質的弱線にそった差別削剥地形と重複する地形場では、リニアメントの規模や分布密度等を広域に判読しておく必要がある。

ふたつめはかなり苦しまぎれです。

地形判読のメリット - 応用地形判読士雑感 0次谷問題 特徴をふたつ!?

 特徴を“ふたつ上げる”ことが個人的には難しい問題と思いました。最も植生に覆われやすい地形種でもあるので、航空レーザー計測の効果が高く、その意味では”発見”が多い要素でもあります。さて、、、、、、、、、

 0 次谷の地形発達メカニズムについて メカニズムについて、その他の山地斜面との違いに着目して説明せよ

 ということでしたが、私なりに考えて見ますと

 ここでは 0 次谷と1次谷以上の水系網における地形発達を比較して述べる。
0 次谷は周辺の谷壁斜面の表層や凹地内の土砂が下方に匍行して堆積する場であり、降水は伏流するため地表流は発生しにくい。ただし、難透水層や基盤岩が地表付近に存在するため雨水が飽和しやすく、パイピングを伴って土砂や岩屑とともに湧出することで表層崩壊が発生し、河谷地形発達の起点となる。1次谷以上の河谷では V 字状の横断形を呈することが多く、下方・側方侵食により線的な侵食が発生し、土石流の発生・流下区間となる。

 ということになりましょうか。この設問の答えとして、地すべりや深層崩壊といった大規模な土砂移動の発生場と比較することも考えてもみましたが、水系網の中での特質を強調するために、上述のような答えがふさわしいと思いました。

2014年7月20日日曜日

地形判読のメリット - 扇状地判読の勘所 応用地形判読士雑感(5)

この設問は、鈴木先生の読図入門第 2 巻「低地」の 298~304 頁の文章を要約せよ、という「国語の問題」として出題しても同じ答えになるほど、設問と 298~304 頁の項節の文言が一致している。問題の作り方として安易に過ぎないだろうか。

扇状地地形の判読の“勘所”は(比較的小~中型の)合成扇状地の新旧地形面の交叉と土砂移動形態の差違にあります。このためには、縮尺 25,000 地形図の等高線のわずかな乱れ、切れ込みが、離水面と現成堆積面との境界であることが多く、活断層との関連などを踏まえ、空中写真判読や高精度地形図の読図など経験と知識が問われる部分です。

2014年7月19日土曜日

地形判読のメリット - 海成段丘問題 応用地形判読士雑感(4)

 まず「海岸段丘」という設問文は「海成段丘」とした方がよいでしょう。
 地形工学の視点から言えば、(海成にかぎらず河成も)段丘面の問題は開析過程にあることが多い。開析過程が谷による線的侵食だけでなく、地すべりであることも少なくなく、“紛らわしい地形の判読”のための総合的知識・技量を問うこともできる(しかしこれは高度な技術であるので、段丘と地すべりが近接する地域の地形判読は私にとっても難しい)。
 断面を書いていいということにもなっていますが、海成段丘で思うのは「吉川・貝塚・太田先生の土佐湾論文」がシンプルでわかりやすく、基本はそのころから変わっていないのかなとうことです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/37/12/37_12_627/_pdf

 地形図の読図によって真の旧汀線高度が直接求められない理由として、段丘面がローム層や、背面段丘崖の崩落堆などの被覆層により、地表面に露出していないこと、開析によって段丘面が消失していることや、段丘面の傾動や撓曲により変形し、段丘が緩傾斜面になっていることなどが理由としてあげられる。

 ということになろうと思いますが、こういう地形が先に述べてたように、堆積面の地形分類では一番難しい。ただ、段丘崖が地すべりで開析されることも多いだけに、段丘面でも「緩斜面」があった場合、きちんと判読しないと適正な土地利用・防災計画につながらい可能性があります。

2014年7月15日火曜日

地形判読のメリット 象潟問題 -応用地形判読士雑感(3)-

 まず、鈴木先生の読図入門から引用しているだけでどうかと思うのですが、しかもそれが読図演習問題として挙げられているのにわざわざ問題のレベルを低下させて出題するのはいかがなものかと思います。

 試験問題では象潟泥流を既成事実として知っておきなさい!!という問い方をしています。選択肢④は、八郎潟を思わせます。

 鈴木先生の演習問題では、砂丘の浅層の地盤構成、火山砕屑物からなる地盤を推論した上での建設工学的問題点、そのなかにあってもなお直線崖ができる要因はなにかという、地形図内で判読できる地形発達史と建設技術との関連が問われています。

 むしろ、象潟泥流という既成事実を知らなくても、なんらかの大規模な岩屑流であり、数mオーダーの巨礫しばしばで、地盤の硬軟が入り乱れ平坦地の造成には不向きであるなど、実用的な情報を読図でわかる問い方が本筋です。

2014年7月14日月曜日

地形判読のメリット 接峰面図はとても役に立つ -応用地形判読士雑感(2)-

 空中写真による微地形の判読に際して参考になる地図として、不適切なものを選ぶという問題がありました。 (1)地すべり地形分布図 (2)接峰面図 (3)1:25,000 地形図 (4)都市圏活断層図

これは (2)接峰面図とでも言いたいのでしょう。確かに地すべりや0次谷は判読できません。確かにそうかもしれませんが、いかにも素人的です。

 火山の開析前の状態や褶曲構造、地質構造を反映した差別削剥地形等は、むしろ接峰面図の方が判読しやすいことがあります。例えば逆断層の低地側への移動を示すフロントマイグレーションを反映した地形としては、段丘面の逆傾斜であったり、河川の侵食と考えるには直線的で急すぎる段丘崖等が考えられますが、これは空中写真を何枚も横に並べるよりは、ある程度大縮尺の接峰面図を作成して(陰影図でもいいのですが)全体を俯瞰した方が、地形場に応じた地形種を抽出するという意味でも実用的です。
 先の記事に書いた阿寺断層に関しては、いわゆる岡山接峰面図にも顕著に表れていて、見ていて飽きません

 この問題に関してぶっちゃけますと、そう思うのはあなただけでしょ、、

 ちなみに切峰面図という文字もありますが、円の”せっせん”を”切”で習った人と”接”で習った人で世代ギャップがあると聞いたことがあります。

2014年7月13日日曜日

地形判読のメリット -応用地形判読士雑感(1)-

 今年の応用地形判読士の問題で、千屋断層、阿寺断層、跡津川断層、山崎断層のうち、横ずれの顕著でないものはどれか、というような問題が出題されました。おそらく、東北の奥羽山脈を造る千屋断層が、縦ずれの変位が顕著であるといいたいのでしょう。

 しかし、この問題(単なるクイズ)に正解できたからといって、社会基盤整備に役に立つ技術と、なんの繋がりがあるでしょう。

 例えば、王、長嶋、松井、イチロー各選手のうち、比較的ホームラン性の打球の卓越しない選手は誰でしょうと聞いているようなもので、ホームランを打つために必要な技量・体躯、駆け引き等々、本質的な「技術」を「論」じる問題ではないことはわかるでしょう。

 断層の横ずれに関する知識を問うのであれば、判読する際に、なにに着目しているか。例えば、尾根や谷の系統的なずれ、丘陵や山地の斜面が切り離されたオフセット、断層の両側に対面する三角末端面、断層線谷、断層鞍部、谷の屈曲の累積変位など、いろいろ「断層運動の本質」にかかわる現象があります。
 これらを読図でわかるためには、河床縦断が指数関数に近い”正常な”谷や斜面の連続性など、地形発達を読み解かなければなりません。さらには、横ずれ断層の末端部では応力が集中しやすいこととか、断層の分岐(フラワー構造)が形成されやすいことに触れたうえで、跡津川断層と立山トンビ崩れの関係を問うなど、地形災害の本質の理解を進めるような問題であれば、間違えた人も納得できるはずです。

2014年6月19日木曜日

段丘における建設工事の諸問題

段丘面は一般に安定していると思われがちですが、メモ書きです。
1) 切取りと開削
 岩石段丘では、後面段丘崖からの段丘堆積物の落石、切り取り法面が急傾斜している場合の層面すべり。段丘礫層の基底に及ぶ開削は地下水の低下に注意する。
2) 盛土と基礎
河成段丘面の名残川、支谷閉塞低地、上流の段丘を侵食する段丘開析谷を埋める過去の谷底堆積低地には軟弱地盤が分布している。ローム段丘では、風化火山灰の支持力が小さいので、重量構造物の基礎は段丘礫層や基盤岩に求める。
3) トンネル
谷側積載段丘では、固結岩と非固結岩砂礫層が交互に切羽に露出するので、掘削工法選定に注意。薬液注入の地下水汚染も留意。岩石段丘でも、段丘堆積物の基底部に位置するのであれば、砂礫段丘と同様に落盤や地下水湧出を招く。
段丘面の最大傾斜方向と直交する方向にトンネルを掘削する場合には、トンネルが地下ダムになってしまい湧水や地下水圧の上昇を招く。
4) ダムと池敷
一見岩石段丘にみえても谷側積載段丘である場合があるので、埋没谷の位置と規模を調査数する。砂礫段丘に段丘開析谷がある場合、貯水池からの漏水に気を付ける

谷側積載段丘 - Valley-side superposition-

段丘は一般に形成時期と起源で分類することが一般的です。起源とは、堆積低地が段丘化したフィルトップ段丘とフィルトップ段丘が侵食されてできたフィルストラス段丘(砂礫侵食段丘)。侵食低地を起源とするストラス段丘(岩石侵食面段丘)です。
 鈴木先生の段丘分類法の一つに、段丘堆積物の厚さによる分類があります。段丘崖の比高に対する段丘堆積物の厚さで、砂礫段丘、谷側積載段丘、岩石段丘、サンゴ礁段丘に分類する考えです。このうち、谷側積載段丘という用語は個人的あまり聞き覚えがありませんでした。貝塚先生が1952年に地理学評論で、Valley-side superposition という用語で短報を書いておられました。
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/25/6/25_6_242/_pdf
 基盤岩石の表面起伏に対して河川がどの位置を下刻するかによって、ひとつのフィルトップ段丘が前面段丘崖を見る限り、部分的に砂礫段丘にも岩石段丘にも見えるというもので、一様な内部構造をもたす砂礫岩石交錯段丘ともいえるとされています。
   相模川流域の津久井湖周辺では、関東の地理学科の学生が伝統的に段丘地形の巡検を行っているようですが、教科書的な段丘だけでなく一見するとだまされやすく、古くても価値のある文献があるのだということを学ぶのにいい論文と思います。

2014年5月23日金曜日

組織地形 という用語

 これもよく使う言葉です。地形学の大家、貝塚爽平先生が、地質構造を強く反映した言葉として「構造地形」とされていたものを、第四紀の地殻変動を反映して、変動地形と組織地形という言葉に分けようと提唱されたのだそうです。
 鈴木隆介先生は、「組織地形」では「気候地形」と同様にあいまい、地形の組織とは「地表を構成する岩石物質、つまり組織物質」を示すとすれば、すべての地形はなんらかの組織地形であるとされてた上で、差別削剥地形という言葉を用いられています。

2014年5月15日木曜日

扇状地 という用語

 地形用語で最も一般的な用語の一つと思います。甲府盆地等を代表例として、教科書にもよく登場します。春や新緑の季節になると、果物の花が咲き、脊梁山地の風景とともに美しい景色の土台を作っています。
 鈴木先生の読図入門では、扇状地の特徴をすべて列記するならば

「谷口緩傾斜凹型尾根型河成砂礫堆積現成面」 となるとされています。天竜川のように5eの古いさでも巨大な扇状地として地形面が残っている場合は、現成→段丘面となるのでしょうか。”扇”になっていなくても”扇状地的な堆積環境”という言葉は聞いたことがあります。このほか崩積土とか組織地形とか、いまひとつあいまいに使っている用語がありますので、自分の勉強を兼ねて整理していきたいと思います

2014年4月17日木曜日

あの日わたしは(4)

○2011年4月29日

 東日本大震災では、液状化現象も多数発生しました。上司が千葉県の稲毛海岸の液状化が特徴的な分布をしているというので、調査に同行させてもらいました。埋立地の旧河道というべき澪筋に液状化が集中し、1987年千葉県東方沖地震でも類似した傾向があることが分かりました。やっていることは空中写真や旧版地形図の判読、現地調査にヒアリング、微地形分類図の作成と、卒論とまったく同じです。やはり、現地を歩き写真と古地図といった定性的な情報の記載、モデリングが原点であるという思いを新たにしました。この思いは、応用地質学会誌vol54,№2に投稿した報告で「現行の地形分類では「埋立地」と一括されることが多いが(中略)地形発達史的背景や土地利用履歴、地質情報との関連を明らかにすべき」という結びに込めました

2014年4月15日火曜日

地すべり地形学図- これこそ応用地形判読

応用地質学会環境地質研究部会の例会に参加してきました。そのなかで、専修大学地理学教室の苅谷愛彦先生のご講演があり、北部飛騨山脈の地すべり地形学図というA0版資料を頂きました。先生のホームページや学会誌にも発表されていました。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/122/4/122_122.768/_pdf

かつて氷河・周氷河作用で形成されたと考えられていた堆積性の緩斜面が、実は地すべり・マスムーブメントによって形成されていることが多いということを中部山岳地域を中心に研究されています。形成時期は後氷期に多いようです。

(応用地形判読士の問題では”あえて”いろんな地形要素を読ませようとしていると感じますが、地滑り、重力変形地形の問題一つとっても第四紀後半の地殻変動・気候変動を理解しないと詳細な分類図は作成できません。ですから、重箱の真ん中を出題してもいいと思います)

2014年4月6日日曜日

あの日わたしは(3)

○2011年3月11日

 仕事で丹沢山系の防災施設点検を行っていました。丹沢山系というのは神奈川県北西部の山地で、1923年9月1日の関東大震災で多数の谷壁斜面が崩壊し、その後砂防堰堤も造成されました。凝灰角礫岩の風化・破砕が顕著であり冬の北風で落石のパラパラという音が聞こえるほどですが、砂防堰堤の築造されている場所は新鮮岩が露出する箇所にあり、80年以上経過しても健全な状態を保っている。名工は地形・地質をよく見ているという格言を実感しました。インフラの維持管理が声高に叫ばれる昨今ですが、古いから傷むという単純化された考え方が支配的です。そうではなく、歴史的建造物や古民家など何度も大地震・風雪に合いながらも立派に耐えているのは、その土地の地理的条件に応じた建築技術が用いられているからです。
 話を“その日”に戻します。午後5時頃携帯電話の電波が通じる場所まで車を走らせ会社に業務連絡をしようにもつながりません。すると九州の兄から安否を確認する電話があり、車のラジオをつけて何が起こっていたかを知りました。

2014年3月2日日曜日

道路防災点検と地形

 応用地質学会誌にも報告されていましたが、いま道路防災点検が再び脚光を浴びています。しかし、昔から思っているのですが点数の高い斜面は崩壊しなくて、中途半端な点数のところが崩壊します。また、資料には事例となる写真が多く掲載されていますが、ベストショットを苦労して集めたと思います。 高精度地形図と土検棒でなんとかしたいところです。

http://www.geocenter.jp/lec-road/docs/anteido1.pdf

2014年2月8日土曜日

地すべり学会誌の論文から

 最新の地すべり学会誌第51巻1号が届きました。興味深かったのは、伊藤陽司他:活動地すべりの時系列判読による地すべり斜面の活動性評価 という論文です。ありったけの空中写真を判読し、地すべりの運動様式や頻度、形態について詳細に分類された研究で、オーソドックスであり定性的でなものです。釜井先生は「地すべり地形を調べるもっとも強力な手段は空中写真判読であることに変わりはない」と述べておられますが、それを根気よく実証された論文だと思います。定量化はやりの近年では、このような論文が逆に新鮮に感じられるほどです。
 応用地形判読という意味では、活動性の高いの判定された斜面領域での後氷期開析前線とのや周辺部侵食との関係などを明らかにしてみたいところです。

2014年2月5日水曜日

手書き

 最近GISで直接地形判読図を作成したり、はたまた手書きだったり色々な仕事のパターンがあります。A0版の図面に全面色塗りという懐かしい仕事もしましたが、等高線をトレースするなど手書き三味をやらないと、地形が立体的に見えない。最初からPCだと自然観も狭まるなあと感じます。

2014年1月30日木曜日

QGIS・高精度地形図と山地の地形分類

 最近は広い範囲で高精度地形図が整備されています。これがフリーGISのQGISで等高線まで変換できるととなると、これはもう推定だった後氷期開析前線がほぼ確定になります。渓岸が新鮮岩であるか、あるいは地すべり性で不安定であるかなど、発達史に基づいた地形分類が可能になります。これは25000分の1地形図の等高線では表現できません。応用地形判読士の試験でもつかっていいくらいです。そのうち試作版を作ります。

 http://gis-okinawa.sblo.jp/archives/20120822-1.html

2014年1月20日月曜日

吉野弘 さん

今日、詩人の吉野弘 さんが逝去されたというニュースがありました。
私たちは自然とふれあう仕事をしながらも、「崩れる」「すべる」など、まあろくな言葉がありません。吉野弘さんのように清冽な言葉を堆積させてみたい、、自身の結婚式では祝婚歌をスピーチしたこともあって、茨木のり子さんなどとならんで最も好きな詩人のひとりでした。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Hemingway/4650/sub1.html

2014年1月17日金曜日

あの日わたしは(2)

○1995年1月17日
 成人の日の振り替え休日が終わった翌日。卒論は出したものの、恥ずかしながら単位をいっぱい残していたので、後期試験勉強のため夜更かしは続いていました
 その日の午前5時46分の衝撃はもちろん忘れることはできません。
 下宿のおばさん、娘さん、近所の方々、特に女性の方は悲鳴とともに外に飛び出していました。私もとっさに2階の窓を開けていましたが、屋根が落ちるでもなくこのあたりは大きな被害は出ていないことをひとまず安堵。と同時に、近畿の活断層分布と知人・友人の住まいの分布が自分の頭の中にプロットされ、ここでこれだけのゆれに見舞われるということは、震源地は大変なことになっている、みな大丈夫か?という心配が交錯する不思議な心理状態でした。

2014年1月13日月曜日

あの日わたしは(1)

○1995年1月13日
 奇しくも金曜日でした。正門から出て2回左折し名神高速道路の坂を下りきった、いまではR&E関大前マンションが立地する近くの家に下宿していた私は、16時に迫った卒論提出に向けラストスパートの最中でした。文学部事務室までの距離と自分の鈍足を計算しながら、まだ大丈夫と15時50分くらいまでは部屋にいて、拙い文章をこれまた拙いワープロ(2ヶ月ほど前に生協で買ったばかり)さばきで修正していました。そして、後にも先にも経験しないほどの全力疾走で法文坂を駆け上りました。みな考えることは一緒で、文学部事務室前には他の学科の人たちもいて、行列ができていました。実際に提出したのは16時を10分ほど過ぎていたでしょうか。
 卒論のタイトルは「猪名川流域の地形と洪水特性」。猪名川流域の微地形分類・土地利用の変遷と昭和時代に繰り返された洪水氾濫の形態とがどのような変遷をたどったか記載したものです。関西の災害環境特性としては水害がメインであり、地形と洪水の関係から都市形成の基盤まで推察できるのではないか、と大きなことも考えていましたが、その“4日後”でした。

2014年1月11日土曜日

地形判読記号 - 一般斜面にこそ災害要因があるのに

応用地形判読士関連ですが、地形判読記号の事例が掲載されていました。

http://www.zenchiren.or.jp/ouyouchikei/chikeihandoku.pdf

凡例の書き方については個人差があるので、これで一般的かどうかは分かりませんが(みているとどうも今村氏の1970年代半ばの応用地質学会誌に掲載された論文に似ているような気がする)、どうも斜面地形において違和感があります。

例えば、遷急線は△の記号を付与することになっています。私の周辺にいる方は、土木地質に深く関わっている方がこれに近い記号を使う傾向にあります。おそらく遷急線の奥に露岩や地質・岩相の境界をみているので断片的な分布になるのでしょう。

ところが、私のように地理・地形屋は最終氷期後半の”連続的な地形変化”を”追跡”しようとする者は、遷急線は連続するものと考えます。したがって、△マークをつけていると手が疲れて仕方がありません。よって、ケバを”ちょんちょん”とつけます(新しい時期の侵食前線は2本ケバ、古い遷急線は1本ケバなど)。

そして、この事例では、一般斜面は記号を表示しないと書いてあります。一般斜面ってなんでしょうか。おそらく遷急線下部で崩壊地でも地すべり地でも崖錐でもない斜面といいたいのでしょうが、実はそこに”崩壊予備物質”があるといえないでしょうか。ここに掲載されている地形記号(記号とはまさにある程度定着して化石となり過去形である)、災害が発生してしまった後の状態を表していて、実は災害要因は一般斜面にこそあるのではないでしょうか。

そうすると白い部分のない地形判読図を作らなければならなくなるので大変ですが、なにも書かなくてよいといってしまうと見えるものも見えなくなってしまいそうです。

私は昨年度の応用地質学会で、この点をなんとか解決しようと思ってポスターセッションしました(相当うまくやらないと見苦しいことを実感しました)


http://www.kankyo-c.com/topics/2013oyogakkai/p21_01.jpg
また、白い部分のない地形判読図に近いイメージとして、以下のような論文も見つけました。

仙台周辺の丘陵地における崩壊による谷の発達過程 宮城豊彦、地理学評論Vol. 52 (1979) No. 5 P 219-232 この論文の第3図が近い(ただし、広域で作成するのはとてもしんどい)

2014年1月9日木曜日

地すべり地形の発達史とその丁寧な記載 - 応用地形判読にむけて

 私もたまに後進の指導をする機会があります。地形・地質を理解するためには、空中写真判読や地表・地質踏査を繰り返し解釈をしゃべるのが種なのですが、こと地形分類図作成にあたっては、丁寧な記載の仕方、お手本が以外とないように思います。
 
 その点、北海道立地地質研究所の田近先生は、地形学的解釈はもちろんのこと、とても丁寧、精緻な図表現をされるので、若手には、対象地域の空中写真を判読し図の精度を真似てみろ、と言っています。スケッチをすると脳みそが極めて活発に動くので、勉強になります。
 応用地形判読士の試験においても、キーワード探し的な採点もさることながら、現象をどれだけ精緻に描写しているかも見るべきです。精緻な表現ができるということは、地形発達史を的確に把握している事の十分条件になるからです。そのためにも、ただ単に多くの地形種を読み取らせることを目的として、何が主体がわからない出題範囲を設定するのではなく、一つの地すべり地形だけにしぼって、滑落崖の侵食度や後氷期開析前線との関連、末端崩壊、腕曲状水系の発達など、地形発達に基づいた危険度区分が読み取れるような問題意識があってもいいでしょう。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jls/47/2/47_2_91/_pdf

2014年1月6日月曜日

後氷期開析前線と斜面崩壊 - 急斜面の応用地形判読

平石 成美・千木良 雅弘・松四 雄騎
紀伊山地北部天川地域に分布する遷急線
http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/nenpo/no56/ronbunB/a56b0p76.pdf
京都大学防災研究所年報 (56), 731-740, 2012

「遷急線」というキーワードが直接使われており、かつ斜面地形発達に関する最先端の論文であると思います。この論文のFig10に示された遷急線下部の不安定斜面(一見明瞭でないところが)を抽出することは、昭和28年災害以来の斜面地形研究の課題であり、地形判読の個人差が一番大きい部分でもあります。試験にするのであれば、判読図作成にこだわらす、最終氷期から今までの地形変化・環境変化をどれだけ述べられるか、文章問題にしてもよいのでしょう。

2014年1月5日日曜日

面を構成していない斜面こそ-応用地形判読-

 先日応用地形判読士の二次試験問題を解答してみましたが、両方の問題とも「地形面」が分布する地域でした。確かに肘折カルデラに分布する「地すべりブロック」は活動的であり、円弧状クラックや陥没等も多いので、地すべりが形成した地形面を抽出することは有意義です。
 しかし、これが(表層にしろ深層にしろ)急速に崩壊する斜面の地形分類となるとどうでしょうか?これまでは崩壊地、崩壊跡地が地形分類図の主役になってきましたが、実はそれらは安定した地形種です。地すべり地形とて、明瞭であれば、それは一旦活動して安定状態にあると考えることもできます。危険なのはまだ崩壊していない、地形的には一見なんの変哲も内容に見える斜面で、航空レーサー計測図でなんとか他の斜面や侵食前線で区別できる程度です。そのような斜面の地形分類法は今考えているところですが、応用地形判読士の試験にでるような25000地形図ではなかなか難しいでしょう。