2011年2月26日土曜日

中長期的な復興

 クライストチャーチでは、まだ安否のわからない方が多くいらっしゃるようです。一人でも多くの方の生存・ご無事を祈らずにはいられません。
 さて、NZ地震直後には、レスキュー隊の方がテレビ出演されて、72時間の大切さや、それ以降も生存する可能性もあることなどを解説していらっしゃいました。PTSDの対処法も解説されることと思います。しかし、以外と報道されないのが二重ローン問題など、今後の生活再建です。
 と思っていたら、日本震災パートナーズ株式会社のサイトで、関西学院大学災害復興制度研究所の講座があったことを知りました。一部引用します。

 http://shinsaipartners.blog121.fc2.com/blog-entry-64.html
 ・震災直後の対応と比べ、長期的な復興に向けた対応の方が 
  著しく困難。二重ローンなどの問題も大きな負担となる。

 また、地震に備える無料メール講座があるのも知りました。これは、他の災害の種類に対しても応用してみる価値がありそうです。
 
https://reg26.smp.ne.jp/regist/is?SMPFORM=lbp-ldlen-53a462e092f56bbefb633435ba37fcda&corporationID=0000
 

2011年2月25日金曜日

保全対象

 昨年行われた国勢調査では、日本の人口は微増であるが、より都市部への集中が強まったのだそうです。東京都だけで人口の11%ですからスゴイものです。私は砂防の仕事によく携わるのですが、果たしてこの集落がいつまで持つのだろうかと思う事があります。防災の対する新たな”哲学”のようなものが問われてきていると思います。

2011年2月24日木曜日

清田隆先生

 何気なく朝ズバをみていたら、東大生産研究所の清田隆先生が出ておられました。ひと目みて若いという印象でしたのでググッテ見たところ、私より2歳若い方でした。

 http://soil.iis.u-tokyo.ac.jp/HP2006/Kiyo_HP/index-Japanese.htm

 まず、技術士を持っておられる方でした。地盤工学会でも調査を行うともおっしゃっていました。
 クライストチャーチの画像を垣間見る感じでは小さな河川が蛇行しているので、軟弱地盤が厚いのでしょうか。沼地を埋め立てたという話も聞きました。

2011年2月17日木曜日

雪かき砂防調査

 先日の月曜日にドカ雪が降りまして、それでも土石流堆積物と砂防堰堤の調査です。昭和ひとケタの時代に施工された砂防堰堤が、しっかりと機能している。まあ、堅岩にきちんと着岩しておれば、堰堤も擁壁もしっかり持つものだと実感します。それにしても雪がひざを超えるとしんどい、、、

2011年2月13日日曜日

寒い、、、

 昨年の漢字は『暑』でしたが、今年に入って豪雪、雪下ろしによる事故など寒波に関わるニュースも多く報道されています。そろそろCO2論議の熱も冷めるのかなあと思っているのですが、なかなかそうはいかないようです。
 それはそうと、先日行った現場は「後氷期開析前線」は初めて示されたといえる、箱根の渓流でした。この後氷期開析前線については「強すぎる冬のイメージによる心眼でみたものだ」という”批判”もあったようですが、羽田野氏がご健在ならいまの温暖化議論にどういう見解を示されたでしょうか。

2011年2月9日水曜日

地理学評論の現在

 私が大学に入りたてのころ、10年くらい経ったら地理学評論に論文が載るように、、といわれたものです。学生時代には、70年代、80年代に多く掲載された自然地理の論文「○○平野の地形発達史、段丘形成史」といった論文で、第四紀後半になにが起こったかを学びました。最近では自然地理の論文がめっきりへったなあと思ったところへ、月刊だった地理学評論が隔月になるのだそうです。

 http://www.ajg.or.jp/ajg/cat18/ 編集委員会から
 地理学評論和文号は,今年4月から奇数月の隔月発行となり,第81巻(2008年)は7号刊行されました.隔月発行は主に財政事情によるもので,総ページ数(論文数)を減らすためではありませんでした.しかし,第81巻では,論説12編,総説2編,短報11編,討論1,あわせて26編の論文掲載となり,第80巻(31編).第79巻(28編)に比べ少なくなりました. 
 掲載論文の分野別内訳では,自然地理関係6編,人文地理関係20編で,自然地理関係の論文が昨年(5編)と同様少なく,自然地理関係者のより多くの投稿を期待しています.掲載論文の筆頭執筆者を年齢別にみると,1930年代生まれが2名,1950年代生まれが2名,1960年代生まれが3名,1970年代生まれが13名,1980年代生まれが6名となっており,1970年代以降生まれが全体の4分の3を占めています. 
 掲載論文が投稿から受理までに要した期間および審査回数につきましては,昨年よりも少なくなっています.それにもかかわらず,しかも投稿論文数が減っているわけではないのに,掲載論文数が少なくなっているのは,厳しいコメントを受け取ると早い段階で掲載を諦める投稿者が多くなっているためと推察しました.


 1970年代生まれが全体の75%ということは、30代がメインになっているということですから、それ自体はいいことだと思います。ただ、厳しいコメントを受けると早くにあきらめるというのは、どの学会にも共通した課題かも知れませんが、日本地理学会は研究職の割合が高いので論文が載らないのは死活問題かもしれないですね。

2011年2月8日火曜日

木下是雄「日本語の思考法」から

 理科系の連中にはある仮説なる方針なりを立ててやってみて、うまくいかなけれればまた仮説なり方針なりをたててやってみるというやり方 - トライアンドエラー - がほとんど生得のもののように定着しているのに、法科の人たちにこの考え方は受け入れられない。彼らには、いったん原理なり方針なりを立てたらそれを絶対のものとしてつらぬき通そうとする教条主義的精神があるらしい。

 - 原典『キャリア ガイダンス』1982年11月号

 飲み会の時には「文系は自然には絶対解があると信じている人がいる」というのが、よくグチとして出てきます。地質学では、歩くごとに仮説をたて、クリノメーターをかざしては検証し、、という トライアンドエラー があります。そこが「学びなおすと地学は面白い」点でもあると思います。

2011年2月7日月曜日

ドラッガーと大相撲問題

 このところ大相撲八百長問題が盛んに報じられています。序列ごとの月給制になっており、十両か幕下かで雲泥の差があるため、地位を保持するために八百長に走るのだとか、、かつて談合が若手技術者のモチベーションを下げたような状況がありましたが、そっくりです。
 さて、「まんがと図解でわかるドラッガー」という本の、まさにChpter1-1に、『従来の誤った考え』として、『もうけることが正義となる - 利益によって人は動くという前提が間違い』と出てきます。利益優先だと、本来の事業はなにか見えてこないというのです。
 スポーツの世界では、新しいファン層の開拓などということがよく言われますが、八百長による安易な保身は、まさに利益によって人が動くという前提の最たるものといえるでしょう。 いまの公共事業の低入札合戦なども、本来の防災、インフラ整備に対する考え方や技術論が見えないし、新しい市場を開拓するムードをなくしているといえるでしょう。

2011年2月6日日曜日

新燃岳の噴火

 文献がありました。

 井村隆介,霧島火山の地質 http://repository.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/dspace/handle/2261/13131
 東京大学地震研究所彙報. 第69冊第4号, 1995.3.31, pp. 189-209

 霧島火山は,九州南部に位置する第四紀の複成火山であり,歴史時代の噴火記録も多く残る活火山である.20あまりの小さな火山体と火口が北西-南東方向に長い30kmx20kmのほぼ楕円形をした地域に集中している.霧島火山の活動は,加久藤火砕流の噴出(約30万年前)に引き続いて起こり,休止期をはさんで古期と新期に区分できる.古期の活動では,その基盤の上に多くの火山が形成され,現在見られる霧島火山の土台が完成した.新期の火山活動は,古期の活動後数万年の休止期をはさんで,約10万年前にはじまり,現在にいたっていると考えられる.新期の火山活動では,多くの小型成層火山,マール,単成の溶岩流などが生じた.霧島火山には西暦742年以来多くの噴火記録があるが,そのほとんどは御鉢と新燃岳で起こっている.新期霧島火山の活動を通じて,長期のマグマ噴出率は日本の第四期火山の平均に近い.しかし,詳しく見ると,活動は一様に行われてきたのではなく,溶岩流出型活動期-静穏期-爆発型活動期という変遷を休止期をはさんで2回繰り返していることがわかる.

2011年2月5日土曜日

山の気持ちになった表現

 「学びなおすと地学はおもしろい」から
 http://www.beret.co.jp/books/detail/?book_id=387

 山道を歩いていると、植林された樹木が、坂の斜面に倒れそうになってきて、しかもそれを必死に修正して鉛直に伸びている。

 まあよく見かける風景ですが、こうやって表土のクリープを説明するつかみとして、山の気持ちになった表現としておもしろい。こういった表現が本全体にちりばめられています。 

2011年2月4日金曜日

浪速の語源

 河田恵昭『津波災害 - 減災社会を築く』を読んでいて、津波考古学という節に興味深い指摘がありました。以下、引用します。

 ・縄文時代の遺跡が西日本に多いのは、東日本では津波で流されたからではないか。
 ・古代の大阪湾の地形を復元し津波のシミュレーションをしてみた。
 ・M8.4の地震を発生させたところ、生駒山地のふもとでも津波の波高は5mに達した。
 ・上町台地北端の天満橋では潮流の最大流速は毎秒数mに達した
 ・浪速の語源になったとしてもおかしくない。
 ・このような知見は社会科学からは出てこないので、考古学の定説の再検討が必要。

 ちょっと端折りましたが興味深い指摘です。地形の復元には地質データも解析されています。このような、”利系(事業誘導型)”の論理の働かない本当に科学的なシミュレーションなら、とても役に立つと思います。

2011年2月3日木曜日

深層崩壊を考える - 砂防学会シンポジウム

 砂防学会のホームページに、特別シンポジウム「深層崩壊を考える」の講演集PDFがアップロードされていました。

 砂防学会ホームページ  http://www.jsece.or.jp/indexj.html

 ちょっと不鮮明なのが残念ですが、、、
 不鮮明といえば、深層崩壊と地すべりの違いも本来不鮮明なものです。結果論として10万m3以上の土砂が生産されたか、土石流化したか土塊が原型を保ったか、突発的(初生的?)であったか、、などが定義として述べられていますが、実際明確な”線引き”は出来ないと思います。結局以前このブログで述べたことと、全然変わっていませんでした。ソフト対策やシミュレーションに重点が置かれています。実際は空中写真判読と地表・地質踏査がαであるωだと思うのですが、、

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http://design-with-nature-simogawa.blogspot.com/2010/08/blog-post_12.html

 別紙1深層崩壊推定頻度マップ 別紙2深層崩壊発生事例 これは、あげだしたらきりがないのでしょうが、こういう確実な情報は綿密に調べてほしかった。例えば、昭和58年山陰豪雨による浜田市の崩壊は赤丸が付いていますが、昭和51年兵庫県一宮市の抜け山の崩壊は入っていません。こういうと昭和51年の抜け山の災害は”地すべり”だといわれそうな気もしますが、、大まかには「四万十帯に多いですよ」と言うことなのでしょう。 それと、もう少し深層崩壊のメカ二ズムについても解説がほしかった。例えばアメリカの地質調査所では、深層崩壊をLandslideのひとつと位置づけて、A~Jの10タイプに分類して解説されています。 

LandSlide Types and Processes
http://pubs.usgs.gov/fs/2004/3072/fs-2004-3072.html
http://pubs.usgs.gov/fs/2004/3072/images/Fig3grouping-2LG.jpg

2011年2月2日水曜日

技術とビジネス

 スポーツの話題ですが、興味深いものがありました。

 0円移籍:Jクラブ苦悩
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110202-00000132-san-socc

 欧州主要リーグの冬の移籍市場は日本代表DF長友佑都のインテルミラノへの電撃移籍で1月末に幕を閉じた。アジア・カップで優勝した(略)日本選手の「0円移籍」が話題となっており、欧州のクラブからは、タダで選手を獲得できる“おいしい”市場と見られている。選手の夢の実現のため海外移籍に寛容な姿勢を示していた国内クラブも、見返りなしの移籍が続けば経営悪化を招き、Jリーグ自体が空洞化する懸念も浮上している

 私の仕事の関連で、先日聞いた話では、とにかく安くてもエントリーしておけば次の受注につながるだろうという夢(あまりに現実的か!?)を持って落札するものの、その見返りがないということも、、まあ、高くても安くても”外注さんまかせ”の風潮も確かにあります。技術の空洞化という言葉を聞くようになって久しいのですが、子供にも大人にも夢を売るスポーツの世界もそうなると世知辛すぎます。

2011年2月1日火曜日

知られざる貴重な資料

 現在の省庁に再編されるまえ、国土庁において「災害類型別土地保全調査」という業務が行われていました。
http://tochi.mlit.go.jp/tockok/inspect/landclassification/land/l_national_map_d.html

 私が興味を持ったのは、1994年の相模湾の土地保全基本調査、この開析斜面の考え方と描写の精密さは、山地斜面の地形発達史を考える上で、とても参考になるものです。

http://tochi.mlit.go.jp/tockok/tochimizu/F6/MAP/610001.jpg

 しかも、関東大震災で発生した崩壊やその後の豪雨で発生した崩壊、それがどのような斜面で発生しているか、、箱根火山の地形発達史との関連もわかる、非常に高度な調査です。
 また、松江の地形分類図も注目に値します。凡例設定は沖積低地の地形要素としてオーソドックスですが、細かい谷まで沖積低地のあるところは細かく記載されています。

 http://tochi.mlit.go.jp/tockok/tochimizu/F6/MAP/609008.jpg

 こういった優れた成果は確かにあるのです。でも、その後の省庁再編のせいでしょうか。とんと知られなくなりました。