2012年4月30日月曜日

砂防学会の発表題目

やはりというべきか、台風12号に関する発表が多くはなっていますが、それにしても発表数が多いなあと感じます。砂防は地方支部もなくかなり独特の世界なので、いろんな分野がひとつに集中するからでしょうか。意外と明治十津川災害の再調査や比較が少ない。また、レーザー計測を使った地形解析も多いのですが、「手法」であり、そこから地形発達史や土砂移動履歴をどう読み解くかといった内容は、、、まあ私の応用地質学会のテーマとしましょう

2012年4月28日土曜日

サガン鳥栖

私の出身地に一番近いJリーグのチームは、今年からJ1に昇格した「サガン鳥栖」です。てっきり「佐賀の鳥栖」の九州なまりかとおもっていたら、チーム名の第一義は、小さな砂で固まれば岩になる「砂岩」だというのです。こんなところで地質用語がでようとは、、、、すべりとの関係、、、そんな議論はやめましょう。なんといま5位。

2012年4月27日金曜日

学会活動

砂防学会に応用地形研究部会に応用地質学会特集号への投稿と、学会活動のシーズンになってきました。砂防学会は4月の第1週に締め切られてしまうので、調査が煮え切らないまま概要集を提出して、GWに改めて調査をして、実は、、、のような苦しい流れです
 応用地形研究部会は、レーザー計測による地形分類とその実用化に関する研究、特集号は東日本大震災の液状化、共通するテーマは”場の条件”で明暗が変わるということです。

2012年4月25日水曜日

あぶりだされた谷埋め盛土

先日東日本大震災被災地のマンションの地盤調査に行ってきました。弁護士の先生、一級建築士の先生、京都大学防災研究所の釜井先生と食事をご一緒し、かけないこともふくめて濃密な時間を過ごすことが出来ました。
 次の日、谷埋め盛土の表面波探査、動的簡易貫入試験を行ってきました。しかし、クラックの向き、圧縮・引っ張りクラックの分類、陥没などをルートマップに書くと、それだけでその宅地が谷埋め盛土であったこと、まんなかに小規模な尾根地形、段丘地形が存在していたことなどがわかって、改めて自然は弱い所をついてくるなあと実感しました。定量的調査は、定性的知見の裏づけなんだということも実感しました。

2012年4月19日木曜日

やっと始まります

家族のための地盤の話
http://jibannohanasi.blogspot.jp/
その後に、皆さんには、ダーツの旅にでてもらいます。日本地図にダーツを投げて、当たった土地の安全性や危険性の話をしていくつもりです。どこに当たるかわかりませんが、一緒に旅を続けましょう。

そのダーツは私が投げます。乞うご期待。

2012年4月15日日曜日

応用地質学会最新号

応用地質学学会誌の最新号に、私の後輩の論文が掲載されたそうです(そうです、と伝聞になっているのは、いま出先だから)たしか、

 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007468463
 山梨県北部,風化花崗岩における初生すべりにいたる変形様式とバランス断面
 研究発表会講演論文集 平成21年, 49-50, 2009-10-22

 これの延長にある論文だったと思います。
 この論文の面白いところは、斜面の変形が始まって崩壊して安定するまで、いわば斜面の一生のなかで、対象地域がどの段階に位置するかということを明らかにしていることです。また、最近国土交通省が発表した深層崩壊マップでは、西南日本外帯の中高生層の分布域ばかりが目立ちますが、これまで深層崩壊の発生条件としてあまり研究のなかった花崗岩山地の崩壊メカニズムの事例として役に立つと思います。

 http://www.kankyo-c.com/line_up/syamen/syamen.html
 http://www.kankyo-c.com/line_up/syamen/poster2008.jpg

 26歳にして論説の第一著者ですから前途有望です。彼もあちこち現場を飛び回っているので会う機会がありませんが、良い刺激になると思います。

2012年4月14日土曜日

新東名高速に思う

渋滞解消のほか防災に強いというアピールのある新東名高速が開通しました。現東名高速のボトルネック由比では、高潮や地すべり、さらに津波の心配があるので、この点については確かにリスクを回避する道路にもなるでしょう。ただし、いずれにせよフォッサマグナを通ります。今日のニュースで富士川河口断層帯は、単独でもM8級の大地震を起こす可能性があることが伝えられました。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120414-00000929-yom-sci
富士川河口断層帯は、駿河トラフから内陸の地下へ続くプレート境界につながるとみられる。東名、新東名の両高速道路や東海道新幹線の直下を横切る。政府の地震調査研究推進本部は、静岡県富士宮市から静岡市までの約26キロとしてきた

私が心配なのは、これは直下型地震であるため、斜面災害が起こるのではないかと思っています。そうすると、新東名は山の津波で埋まることになります。リスクは回避するのが原則なので、新東名と現東名を縦につなぐ路線もいくつか必要でしょうか。

2012年4月13日金曜日

防災格言

『 震災は、結果に於て、一の社会革命だった。 財産や位置や伝統が、 滅茶苦茶になり実力本位の世の中になった。 真に働き得るものの世の中になった。 それは、一時的であり部分的であるけれども、 震災の恐ろしい結果の中では只一の好ましい効果である。 』

菊池 寛(1888~1948 / 小説家 劇作家 文藝春秋創業者 代表作「父帰る」) 「文芸春秋社」の創業者で「芥川賞」「直木賞」の創設者である菊池 寛(きくち かん 本名は寛(ひろし))は江戸時代から続く高松藩儒学者の家柄の子として香川県高松市に生まれた。

高松中学校を首席で卒業後、京都帝国大学に在学中に、芥川龍之介や久米正雄らと第4次「新思潮」を創刊。京大卒業後、時事新報社会部記者を経て、小説『無名作家の日記(1918)』『恩讐の彼方に(1919)』などで一躍人気作家となり、記者を辞めて専業作家となった。大正12(1923)年、私費を投じて雑誌「文藝春秋」を創刊。大衆小説というジャンルを切り開いた。

大正15(1926)年、劇作家協会と小説家協会が合併し日本文藝家協会が発足させ初代会長に就任、文芸家の地位向上や生活や収入の安定、また言論の自由の擁護などの活動に尽力。自らも川端康成、横光利一、小林秀雄など新進気鋭の作家へ金銭的な援助を惜しまなかった。

昭和10(1935)年、日本文学振興会を設立すると純文学の新人作家を対象とする芥川賞・直木賞を新設。昭和18(1943)年には映画会社「大映」の初代社長を務めた。戦中に文芸銃後運動を発案し翼賛運動の一翼を担ったことにより戦後に公職追放され、失意のうちに59歳で逝去。没後に菊池寛賞が制定された。この格言は、関東大震災直後に発表した『災後雑感』(中央公論 大正12年10月)より。

2012年4月12日木曜日

ある団地の防災意識

昨日はある団地の地盤防災の相談に立ち会ってきました。会議場に着くなり資料の山、40年以上前の造成平面図、計画図に加え、ボーリング柱状図、3軸圧縮試験の結果など、黄ばんだ状態ではありましたが非常に貴重な資料が大切に保管されていました。地盤技術の専門家がおられるわけではないのですが、自ら専門書に目を通して勉強されている方もおられるなど、その資料の貴重さを十分に認識しておられ、次世代に渡したいとのことでした。
 最近、沼津市の集落が津波に対する高台移転の同意を得られたことが話題になりましたが、谷埋め盛土(丘の津波)に対する事前防災意識も高まっていることを感じました。

2012年4月11日水曜日

数学受験の文系大卒は高収入?

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120410-00001064-yom-sci
 数学になじむと論理的な思考が身に着き、様々な仕事に適応できるのだという。グループは2011年2月、国内の国公立、私立大や海外の文系学部を卒業した20歳代~70歳代の働く男女に調査した。その結果、数学受験者の40%が大企業に就職していたのに対し、受験しなかった人では34%。数学受験者の平均年収は532万円で、未受験者の443万円を大幅に上回った。

 似たような記事は以前にもあったかと思います。数学といえば、技術士試験において私が最も難関としているところでもあります。また、最近の土石流調査は、いわば、”微分方程式で得られた結果”と”地形発達史”(定量と定性)のせめぎあいです。両者をすり合わせるという仕事のための仕事に終始することが多いので、論理構成以前の段階ですが、、、

2012年4月10日火曜日

地盤技術者に求められる資格と資質

http://www.kankyo-c.com/pdf/2011_zibann64(4)_ina.pdf

地盤工学会誌の掲載された上記論文が、反響が大きいのだそうです。私がショッキングに思ったのは、「日本では技術士に対する企業内の理解が少なく、単なる理系の社員としてみなされていることが多い」という一文でした。”単なる”というのが存在感の薄さを示しているように思います。私の周りには、地域住民やインフラの維持管理のために現場で活躍されている方が多いので、サラリーマン化しているという実態は、ちょっショックです。

2012年4月9日月曜日

防災格言

自然は公平で冷酷な敵である。  社会は不正で人情のある敵である。 』
夏目漱石(1867~1916 / 小説家 英文学者 代表作『吾輩は猫である』等)

格言は随筆『思い出す事など』の十九より。明治43(1910)年、『門』の執筆中に胃潰瘍を患い伊豆修善寺で療養する。この「修善寺の大患」時期を振り返って綴った作品が『思い出す事など』である。漱石は晩年「則天去私(そくてんきょし=自己本位の考えを捨て、自然の中から物事を見極めようとする」を理想としたが、この時の大患を境に「則天去私」の境地に達したと言われている。

2012年4月8日日曜日

新潟県上越市の地すべり

産総件が新潟県上越市で発生した地滑りの調査速報を出していました。
http://www.gsj.jp/hazards/landslide/itakura.html

周辺地域は主に完新世の地層で覆われる高田平野と新第三紀~第四紀初めの地層からなる東南東側の丘陵地からなる。平野と丘陵地の境には断層面が東南東に傾く逆断層である高田平野東縁断層が存在し、東南東側の丘陵地が上昇していることが知られている。今回の地すべりは、丘陵地の西北西端で発生した。

この報告をみていると、地すべりと同じくらい活断層に注目してしまいます。盆地ができるということは活断層があるということ、そして山と平野がくっきり分かれ、扇状地が形成されやすいことです。今回のぞ地すべり土塊の挙動は、実は扇状地の傾斜が鍵を握っているのです。

2012年4月6日金曜日

擁壁大国

また、擁壁を見てくれという依頼がありました。いや、このところ、”見て”ではなく”診て”と具体的な要求をされる方が確実に増えました。擁壁の依頼は、たいがい、これはやばいなあというものが多いのですが、最近では対策工にはいくらかかるか、など人生設計を踏まえた具体的な突っ込みが増えました。いろんな引き出しを用意しないといけません。

2012年4月5日木曜日

牛山先生のブログから

新しい想定は正しい想定か
http://disaster-i.cocolog-nifty.com/blog/2012/03/post-c318.html
いかなる「被害想定」についても言えることですが,想定は,様々な条件設定の上に計算されます.地震・津波の場合,「どのような地震が起きるか」という条件設定を想定することが難しく,かつ,条件の決め方次第で結果(震度や津波高)が大きく変わってしまうものです.このため,「想定されたとおりの現象」が起きると考えてもらっては困ります.防災計画をたてる上では,何らかの目安を設けないと計画することができませんので,「想定」を行います.「想定」はこのための基礎資料であって,「次に起こる災害の姿を正確に予想するもの」ではありません.

地震や津波に関する話題ですから注目を集めましたが、地すべり、崩壊、土石流に関しても「計算」と「想定」が跋扈しています。

2012年4月4日水曜日

事前防災の依頼

このところ個人や団地単位での地盤調査の依頼が増えています。首都圏では直下型地震の確率が高くなっただの、立川断層や三浦半島活断層の活動性が高まっただのいろんな報道がありましたので、防災意識が高まっていることは確実です。
 ただ、依頼される人の多くが「擁壁」が心配、亀裂があるようだ、、という段階になってご連絡を頂いています。さらには、その擁壁だけではなくて谷埋め盛土の切盛り境界に当たることも多いので、周辺の道路、斜面も含めて変状がないか調べることになります。
 昨日はある団地の方から、地震時の団地の地盤災害の危険性について物理探査を含めた本格的な調査をしてほしいという依頼がありました。いくつかの業者を調べ、費用面、調査方法、対策工の提案を比較検討するというので、コチラとしてもやりがいがあります。事前防災を進めるために、セカンド、サードとオピニオンを求めて対策を練る。先進的な事例です。

2012年4月3日火曜日

爆弾低気圧

インパクトが圧倒的で分かりやすい言葉ではあります。鈴木隆介先生は、地形用語においてその成り立ちをイメージできないような言葉は「アマチュア用語」と仰っていますが、この場合突如として爆発的な暴風に発達するのだからよしとなるのでしょう。少なくとも「極端気象」「ゲリラ豪雨」よりは、納得の行く言葉です。えげつない現象ではありますが、、、、、

2012年4月2日月曜日

苔の生すまで

昨日は一昨年9月の豪雨で土石流の発生した渓流を踏査してきました。砂防ダムが埋没し典型的な沖積錐が形成されていたので、これは斜面崩壊、ややもすると深層崩壊が起こっているかも知れないと考えて、土砂発生源を求めて歩き続けました。そしたら、右岸側に限って渓岸崩壊が連続し、左岸側には全面苔むした礫が大量に堆積する古崖錐が存在しいて、土石流はその二次侵食として発生したものでした。過去の空中写真を見ても崩壊履歴がないので、少なくとも100年はそこにじっとしているのかなあ、、と、しかし、岩盤の緩みからみて、今度大地震があったら大崩壊が起きて、河道を閉塞するのかもしれない。そんなことを考えた休日、、

2012年4月1日日曜日

古いハザードマップがあたっていた。

日本地理学会公開シンポジウム
http://plaza.rakuten.co.jp/chizulove/diary/201203290000/
衝撃的だったのは我孫子市の液状化について、古いハザードマップは当たっていたということ。当時はマニュアルはなく、技術と経験で作っていた。マニュアル化の弊害の典型例だろう。

今日の朝刊各紙は南海トラフの巨大地震におる最大クラスの震度分布が掲載されていました。四国なんかは殆ど全て震度6以上になっていて、スゴイことになっています。アナログ人間の私としては、山のなかまで震度7にべったりと塗ってあるのはどうのか、段丘や切土のように安定した地盤もあれば、谷埋め盛土もある、、そいいった暮らしに密着した部分も伝えないと、、と思ってしまいます。あくまで計算結果なのかもしれませんが、”そのとき”の運命を分けるものは"技術と経験(災害の記憶と想像力に基づく?)”だからです。