2010年11月30日火曜日

iPad & 地質調査

 今岡さんのブログや太田さんのメルマガが、iPadに関する記事でにぎわっています。当社の社員でiPadを持っているのは常勤技術職員9名(来年4月から10名)のうち一人だけです。では実務ではどのように使われているのかと思い、iPad & 地質調査でググッて見たら次のような記事がありました。

 業界からの期待! iPadの現場図面(PDF化した)ビュアーとしての利用法
 http://www.dosokuken.com/topics/2010/05/ipad.html
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巷では電子書籍を含めたiPadの発売でにぎわっているが、じっくりiPadの仕様とiPhoneやiPod Touchなどで便利と感じた操作性から考えると「業界の業務」でこの機能を有効活用できないかと考えてみた。特に現場で書類や図面が必要となる場合を想定してパソコンを持ち歩く場合、重さや操作性(起動時間)でかなりストレスを持っている方も多いであろう。かといって書類や図面のデータ化はコンパクト且つ即時性(電子検索など)として大変重宝しているはずである。
 (途中略)
以上、この考え方としては今後多く発表される予定の「電子書籍閲覧機器」でも可能と思われるので、ぜひ開発関係者の方は

1、PDFのビュア。(大量ファイルの閲覧・検索が可能)
2、閲覧時iPadやiPhone/iPad Touch同等の片手でできる操作性。(拡大・縮小、移動など)
3、片手でもって片手で操作でき、長時間の持続性(スタミナ電源)、とできれば防水・簡易衝撃などに対応できれば更に良い。

という「PDFビュアー」が可能な商品をご検討頂ければ幸いである。
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突き詰めると「持ち運びの軽さ」につきるのでしょうか。あんしん宅地規模の現場では、ペンタブで絵をかけるようになれば便利で”スタイリッシュ”かもしれません。

2010年11月29日月曜日

一瞬にして判断せえ

 社長の口癖です。走向傾斜がどうとか、岩級区分がCM?CL?、、え~とこっち方向に褶曲してるからあ、、とかいちいち自分の頭の中で勝手に星取表をつくって斜面の安定性を考えるよりは、まずは全体像から第一感で判断しろといわれます。それはそうなるように自費を出してでも現場を歩け、現場に学べということであると思います。野球で言えば”きた球をそのまま打て”という極意です。大体私のようになれていないものは星取表を作ってしまい勝ちです。

2010年11月28日日曜日

自然は移り気

武田邦彦先生のブログで紹介されていました。

桜井邦朋先生著「移り気な太陽」
http://takedanet.com/2010/11/post_7ba5.html

「ただ私にとって理解できないことは、2009年11月半ばに起こった“クライメートゲート事件”について、わが国のマス・メディアが沈黙してしまっていることである.わが国にも、IPCCに参加している研究者がかなりの数いるだろうに、彼らからの発言も全然聞かれないのが不思議である。」

 温暖化にしてもダムの是非にしても、自然科学や工学的見地よりは経済論理が議論の幅を利かせています。砂防計画も、土石流や地すべりの機構に関する議論は、B/Cの裏づけに回ってしまい、ハザードの議論が少なくなったと聞いています。
 この本のタイトルにあるように、そもそも自然は移り気なのでそんなこと知ったこっちゃないのです。

2010年11月27日土曜日

昭和のにおい

 今度の現場で泊まった宿で、ダメもとで聞いてみました。「ネットは使えますか」「は」「インターネットを使うためのケーブルありますか」「ああ、、コンセントならここですわ」「いやいや、インターネットを、、」「コンセントはここ、ああそうか、テレビつけたら一個しかありまへんなあ」、、、
 いまは、無線LANやipadが台頭し、コードレスでネットが出来る時代、、たまにはこのような昭和テイストの宿も良いもんだ、、
 ついでにいうと、土砂整備率や安全率に斜面の挙動をすり合わせるという方法が延々と続いているのも、ある意味昭和のまんまです。青焼きをそのままPCで使えるようになっただけで、本質的な部分はほとんど変わっていない気がします。

2010年11月26日金曜日

吉野杉にみる国土保全

 久しぶりに壮観な景色に心奪われため息をつきました。上の写真は、奈良県吉野杉の大植林地です。一本一本整然と広がる美しさ、、それにしても谷底から分水界にいたるまで本当によく手入れされています。民宿では吉野杉で作られた箸でご飯を頂きます。いまだに割り箸は環境負担だなどという風潮があると聞きましたが、この勤勉さ、そして時折もみじがあって日本の自然の繊細をみていると、そんなことなど小さい小さい、、、世界に誇るものがあるように思います。
 小椋圭氏に『山河』という壮大な曲があります。
 http://www.youtube.com/watch?v=niwkGW2IJVk  この歌詞のなかに、顧みて 恥じることない 足跡を 山に残したろうか というフレーズがあります。この植林は千年の歴史があるのかも知れませんが、恥じることない足跡が残されているだろうと思います。

2010年11月25日木曜日

Googleで「岩盤」をアラートすると、、、

 いま緩み岩盤のメッカともいえる場所にきているので、たまたま使えたネットで「岩盤」をアラートするようにしたら、まあ「岩盤浴」ばっかりお知らせされること、、、「緩み岩盤」ではマニアックすぎるでしょうか。岩盤クリープにしようか、、、最近は深層崩壊という言葉が”はやり”ですが、斜面の変形ともちょっと違うので、、とりあえず「地すべり」にとどめときます。

2010年11月24日水曜日

今日からまた現場

 今日から地すべりをやるひとなら誰しも知っている現場で踏査です。またもやネットが使えません。ツイッターみたいな記事ですが、楽しんできます

2010年11月23日火曜日

合成開口レーダーによる地すべりの監視

 Googleアラートで国土地理院の資料が届きました。リモートセンシング技術で地すべりの動きを捉えようという試みです。

 合成開口レーダーによる地すべりの監視に関する研究(第1年次)
 http://www.gsi.go.jp/common/000057297.pdf

 ”監視”という言葉に違和感を感じます。”観測”じゃダメなんでしょうか。
 それはさておき、資料をみてみると”現段階ではわからない”ことも明らかにされています。わたしも、SAR干渉画像で地すべりの移動を把握する仕事に携わったことがありますが、やはりよっぽど派手に動いてないと検出できないようです。やはり、擁壁のクラックや地盤伸縮計など”泥臭い”観測の方が、確実な気がします。

2010年11月22日月曜日

芋川の天然ダムが語りかけるもの

下河・稲垣(2009)地すべり学会誌
 『ダムは本当に不要なのか』という本に、天然ダムと河道閉塞について述べられた文章があります。そこでは、1984年の長野県西部地震による伝上崩れや、1586年帰雲山崩壊、1693五十里洪水など、激しい洪水を伴った災害事例が列挙されています。
 ただし、その結びの文章として、脆弱な日本の国土の大変過酷な宿命が天然ダムである。今回の芋川の天然ダムは、そのことを多くの国民に知らしめる絶好の機会ではないか、、とあります。
 たしかに、地震で山が崩れ、河道をふさぐというのは物理的に激しい現象です。しかし、もう少し長い目で見る必要があります。芋川の天然ダムは、自然の歴史からいえば何度となく繰り返されてきた変化の一断面で、なおかつ一瞬の出来事です。2004年まで美しい棚田や農地が広がっていたことから、基本的には落ち着いた自然だったと言えます。 実際に中越地震以前の空中写真を判読してみると、芋川の河道周辺では農地かうっそうとした林地であり、土砂移動はかなり落ち着いていたことが伺えるし、激しい洪水、土石流氾濫で形成されるような微地形もありません。地域、流域に応じた地形発達史的背景を念頭におかないと、画一的なイメージが先行しかねません。

2010年11月21日日曜日

ダムは本当に不要なのか

 昨日の地質技術勉強会で、『ダムは本当に不要なのか』という本を1割引きで販売するということで希望を募っておりました。この勉強会は、ダムとトンネルの話題となると目の色が変わる人が大多数なので、一押しなんだろうとは思いましたが、、
 実際に読んでみると、激烈な文章が並んでいます。最近のマスコミの論調に対する「怒り」を必死に抑えているという感じです。地質の話はないし、土木の技術論も多いとは言いがたい。懇親会の2次会ともなるといつも「ダムが減っている、仕事が減ってる、、ダムがないから地質技術が、、、」ぼやきばかりです。
 じゃあ「ダム必要論」を再燃させて、公共事業をふやしたところで、実はそんなにムードは変わらないと思います。潜在的に皆が渇望しているのは、ダムやトンネルの「事業」がないと存在しえない技術ではなく、社会が求める必然的な技術として自立したマーケットを持つことだと思うからです。

2010年11月20日土曜日

東京時層 iphoneのアプリケーション

 時代はどんどん便利になるなあと言った感じです

 http://itunes.apple.com/jp/app/tokyo-jisou-maps/id392574706?mt=8&ign-mpt=uo%3D4
 今までかさばる古地図を片手に東京の町歩きしていた方はすぐに乗り換えましょう。GPSが古地図上でも有効なので現在の町並みと古地図のギャップにもう迷うこともありません。しかも、地形図まで入っていて至れり尽くせり。ブラタモリやタモリ倶楽部の町歩き企画の好きな人は絶対ハマれますよ

 私は”あんしん宅地”で実務として使いますが、現場でiPadで旧版地図を眺めるという時代がくるのでしょうか。

2010年11月19日金曜日

システムコストが惹き起こす主客転倒 - 木内里美氏のコラムから

 『DMがきません(その3)』というタイトルにしようと思いましたが、我が意を得たりに近いコラムがありました。大成建設の木内里美氏の記事です。

 システムコストが惹き起こす主客転倒
 http://it.impressbm.co.jp/e/2010/11/15/3034

 これによると、りそなホールディングス(HD)傘下の3銀行が、大学などと提携して通常の教育ローンより低い金利で入学金や学費などの資金を貸す「提携教育ローン」の新規取り扱いをやめた理由が、銀行は所管の経済産業省に業者として登録し、立ち入り検査も受ける。また、カード・信販会社が加盟する信用情報機関に、融資先のローン残高などを定期的に報告しなければならず、新たなシステム構築に数千万~数億円の費用がかかる場合もある。こうした手続きや負担を避けるため提携ローンをやめたケースが多いとみられる、ことだというのです。
 http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/news/20100818-OYT8T00643.htm

 これは、いまの土砂災害基礎調査にもそっくり当てはまります。本来、土砂災害の原因となる地すべり・崩壊・土石流といった諸現象は、地形発達史・地質的背景に関する知識・経験を持った技術者が地図を片手に踏査して、地域社会の諸事情も念頭に置きながら考えぬくという”数値化も圧縮も出来ない経験知を用いる調査”です。ところが、いまのやり方は、地すべり・崩壊・土石流といった土砂移動現象にたいしてそれぞれ個別のGISを導入しなければなりません。ですから、”本来の経験”を持っている人も、「地すべりはできません(システムコストがかかるから)」という人も少なくありません。そうしているうちに、本来の経験を持つ未来の人材が失われていくのではないかと懸念されます。

2010年11月18日木曜日

11月18日は「土木の日」

 今日11月18日は「土木の日」だそうです。土木という字を分解すると十一と十八になるんだそうですが、なかなか覚えにくい。地質の日が5月10日ですから実に半年、季節は逆ですね

 http://www.jsce.or.jp/committee/day/day.shtml

 ただ、これに関連した行事で「土木コレクション2010」というイベントがあります。このポスターは技術の伝承をイメージしやすい雰囲気を出していると思います。青焼きの手書きの図面も掲載されていますが、とても精緻に描かれていて、CADではなかなかでない”行間を読む”雰囲気を感じます。
 全体のタイトルが『HAND & EYES』。手に職を持ち、目で学ぶ(盗む?)。そもそも技術とはなんなのかということを感じるキャッチ・コピーです。Googleのロゴになるくらい普及すれば、もっと地域社会へのアウトリーチが進むと思うのですが。

2010年11月17日水曜日

Googleアラート - 高谷先生のブログ-

 Googleのサービスに『Googleアラート 』というものがあります。検索キーワードを登録しておくとそれを含むニュース記事がメールに送信されてきます。私のブログも『「地質」や「防災」というキーワードでヒットしたので読んでみて面白かったのでお気に入りに登録しました』という、うれしいことをおっしゃった方もいます。このたび「地すべり」というキーワードを追加したら、いきなり南九州大学の高谷先生の面白いブログがあることがわかりました。

地すべり山くずれ研究所 - 地すべり山くずれについて,現場からの情報を発信する -
http://hibari1977.blog108.fc2.com/

「盛土」のキーワードでは、先日報道ステーションをみた自分のブログの記事もとどいておりました。また、以下のニュースは、「盛土」の「地すべり」といった感じです。

ブラジルの港で地すべりが発生
http://www.youtube.com/watch?v=8YiHKopmyUo

2010年11月16日火曜日

巡検案内マップ試作の楽しみと課題

  月一恒例の地質技術勉強会という会合があります。今月の案内が届きましたが、そのなかで「巡検案内マップ試作の楽しみと課題」というタイトルがありました。この発表者の方は、ダムや道路法面の地質調査、いわば地質調査の王道を歩んできた方です。先月の応用地質学会でも「応用地質学的ガイドマップ」を作成されました。私も同じ委員会に属しているので、”楽しみ”の部分をどのような語ってくださるのか、興味深いところです。

2010年11月15日月曜日

RCCM

太田さんのブログで知ったのですが、RCCMが個人登録できるようになったのだとか。
 http://www.jcca.or.jp/qualification/rccm/introduction/101101.pdf
 さらに、以前は例えば大卒+13年、すなわち浪人・留年・失業(な、な、、なんちゅう3点セット、、、!?)なしで普通にコンサルタント勤務(技術士の在籍する)35歳になれば、管理技術者になれますよ(私の勝手な解釈ですが)であった受験資格が3年短くなるのだそうです。私は、先述3点セットのうち2つを経験しているので、従来のルールで積算するとやっと受験資格が出来たところでした。 ○○技術士事務所というのは聞いた事があるのですが、○○RCCM事務所って起業する人はいるのでしょうか。

2010年11月14日日曜日

電子地図は何を便利にしたか

 このほど新語・流行語大賞候補なるものが出てきまして、いわゆる”ネット用語”も多くノミネートされていました。丁度10年前の対象が『IT革命』でしたが、例のビデオ公開のニュースなど見ていると、ここに来てやっとその威力を見せ付けられたような気がします。その10年前から電子地図の整備が加速しました。レーザー計測技術も登場し、ものすごく高精度・大容量のデータが得られるようになりました。
 しかし、そのツールでしかないはずの電子化に、本来定性的で個性的であるはずの「調査」が飲み込まれてしまいました。地すべりの兆候など調べたいと思っても、電子地図がまだできていませんから、あるいはデータ構造に不備がみつかり、、といった理由で仕事がはじめられないという事態がこのところ頻発しています。
 昔は、精度は低くても平面図さえあれば、あるいはなくても自分の足でルートマップを作りながら踏査をしたものでした。そういった職人技も、いつのまにか飲み込まれてしまいました。
 確かに、3次元安定解析に必要な座標データの取得、横断図、縦断図の作成、修正は圧倒的に便利になりました。しかし、紙に書く(描く)ことや観察することは、電源を入れてデータ解析することとは同じではありません。そこを仕分けないと、地図がますます不便になるような気がしてなりません。

2010年11月13日土曜日

Cradle 出羽庄内地域文化情報誌

 今日は、銀座にある山形県庄内地域で取れた野菜を用いたレストランに行ってきました。妻が教えてくれたのですが、ヘルシーで素朴かつ新鮮、久しぶりに自然の恵みを堪能しました。

 Cradle 出羽庄内地域文化情報誌  http://www.cradle-ds.jp/

 レジの前にフリーペーパーがおいてあったので手にとってみたら、庄内平野の成り立ちや豊富で良質な湧水が多い理由、それが野菜や果物の生産基盤としてとても良いものであることがわかりやすく解説されていました。先月の応用地質学会では、「地域の社会基盤形成における地形情報の意義を視覚化した応用地質学的ガイドマップの作成 」ということでポスターセッションを行いましたが、この意義は「大人(団塊の世代)の修学旅行」が趣旨ですから、ちょっとカタイのです。
 そこへいくと、”食”という楽しみのなかに地形・地質情報を織り込むこと、なにより若い女性が楽しめること、ビジネスの原点を感じました。

2010年11月12日金曜日

基礎工 - ハザードマップ最前線

 基礎工という雑誌で「ハザードマップ最前線 - その成り立ちと活用 - 」という特集があることを知りました。地すべり地形分布図や宅地耐震化の記事もあるようです。
 http://img.fujisan.co.jp/digital/actibook/3547/1381681615/401871/_SWF_Window.html?mode=1063

 今日はこれから出かける用事があるので、早速注文しました。こういったハザードマップはどちらかというと理学系の人が携わることが多いのですが、工学的な分野にも利活用されると存在意義が大きくなるだろうと思います。

2010年11月11日木曜日

危険な谷埋め盛土 - 報道ステーションから

 今日の報道ステーションの特集は、『危険な谷埋め盛土』でした。レポーターと一緒に京都大学防災研究所の釜井先生がわかりやすく解説してくださいました。釜井先生は、無数にある谷埋め盛土の管理体制がないことが問題であると指摘され、リポーターは『これからは維持管理の時代』とコメントし、古館キャスターは「ほほお」。影響力のある番組ですから、今後どうなりますか、、、

2010年11月10日水曜日

異常な露頭、正常な露頭

 踏査の目的地に向かっている途中、思わず急ブレーキをかけてしまう露頭があります。上の写真は、秋田県にある地すべり地帯で見つけた露頭です。 写真の左半分は地すべりの末端隆起、右半分が河岸段丘の露頭です。地すべりが滑動すると、末端部がグニャリとせり上がるように隆起することがあります。河川の堆積作用では、こうはいかないので、私と社長は”おかしい、異常な露頭だねえ”と口をそろえました。河岸段丘との関係からみると、最終氷期最盛期(2~3万年前)?かなと思われます。

2010年11月9日火曜日

釜井先生の講座から(3)

最近の動向
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 これまで地すべり対策の現場では,土質試験結果はあまり使用されてこなかった。その背景としては,ともかく目前の災害に対処することが求められていた事,均質材料(単一すべり面強度),代表断面(二次元解析)を前提とした古典的な土質力学的手法が,地すべりの現実とかけ離れていた事が挙げられる。こうした状況を改善するには,地盤の不均一性を前提とした不安定化機構の理解が必要である。地盤の構造(地質)や地学的プロセスを考慮した不安定化(破壊)機構の理解が重要な意味を持つと思われる。
 そうした試みの一つとして,順算による三次元安定計算の事例がある。すべり面の場所(頭部,底部,側部)や地質によって異なる上質試験結果を適用したところ,妥当な安全率が求められた。これらの解析では,側部抵抗の割合は全体の10~50%に達しており,適切な解析のためには,側部抵抗の評価が重要であることが示された。
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2010年11月8日月曜日

釜井先生の講座から(2)

それでも安定計算 - 逆算法の魔力
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 実際には,すべり面については何となくわかるけれども,せん断強度(抵抗)に関する困難さの方が深刻であるという場合が一般的である。したがって,地すべりでは土質試験データを直接使用しないで済む逆算法が広く用いられてきた。逆算法はとにかく現状の安全率を適当に決めて,せん断強度をそれに合うように修正してゆくやり方である。通常はせん断力を概知とし,現状安全率を1.0と置いてせん断抵抗力を求め,せん断強度定数(c,φ’)を逆算する。ついで,設定した計醐安全率に達するのに必要なせん断抵抗力の増加量(杭やアンカー等による),間隙水圧(地下水位)低下量(排水施設による)を求める。この場合,せん断強度は,あくまでも安定計算用で,土質試験結果とは異なるのが普通である。
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ここでひっかかるのは”適当に”の部分です。基礎調査では土石流でもレッドゾーンが小さくなるようにという意味で”適当に”断面を決めます。もともと計画流出土砂量とこれに基づいて算出される「土砂整備率」もかなり”適当”ですが、”適切”かたらは乖離しているように思えます。

2010年11月7日日曜日

バブルへGO! をみた - そのあたりからの自然観の変化

 釜井先生の地すべり(初級講座)のことを書こうと思っていましたが、プロ野球日本シリーズから続いた『バブルへGO!』にのめりこんでしまいました。1990年当時予備校生だった私は、高校時代は理系のクラスにいたのに文系へと転じたり、教師になることをずっと目指していたのに親に就職が悪いから経済学部へ行けと言われてケンカしたという友人をみてきした。そのころから理系離れが加速していたのではないかと思います
 当時は、地球温暖化という言葉が登場したばかりで、オゾン層の破壊、砂漠化など、経済とともにグローバルという掛け声のもとに世の中に広まりました。私は、そのムード(バブル?)的なムードに、あまり根拠はありませんでしたが妙な違和感を覚え、もっと地域に密着した調査がひつようなんじゃないかと思っていました。 牛山先生は、「豪雨災害が増え続けているといった漫然としたイメージ」もこのあたりから出てきたような気がします。

http://design-with-nature-simogawa.blogspot.com/2010/06/blog-post_28.html

2010年11月6日土曜日

釜井先生の講座から(1)

 最近地すべり「調査」とは名ばかりの、機械的な作業に終始しています。私としては、地すべりの滑動について地形発達史的背景を考えたいのですが、有無をもいわさず(紅葉ではありませんが)黄色か赤に色づけられます。DMの一昼夜変換し続けないと使えんし、、、 こういう状況の解毒剤とも言える本があります。前のブログでも紹介しました。

 高野秀夫論説集『斜面と防災・別記』  http://www.ctt.ne.jp/~myama/slope_landslide.pdf
 (※リンク元のHP等は不明)

 秋の夜長に読んでもいいのですが、釜井先生の講座もコンパクトでわかりやすく、地すべりの本質、解析のありようについて解説されていました。

 地すべり(初級講座) 地盤工学会誌57巻9号, pp.45~51 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007361199
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・ 最近は,比較的簡単に地形図の画像が閲覧でき、Google Earth等の普及もあって,パソコンの前に居ながらにして地形を観察する事が可能である。しかし,依然として,地すべり地形を調べる最も強力な手段は,空中写真の実体視である事には変わりがない。

・ 斜面における地下水分布は複雑で様々な場所に地下水が存在する事,深い部分では被圧されている事,地下水が通りやすい「みずみち」がある。

・地すべりの安定解析は難しいわけ
理由1:すべり面せん断強度の問題
安定計算に不可欠であるが,簡単には決められない。ピーク強度?残留強度?はたまたその中間なのか?地すべりによる変形がどの程度進んでいるかは、一応の目安ではあるが決め手を欠く。さらに,地すべりが運動する速度によっても,せん断強度が変化する(高速流動時の粒子破砕等)。 いずれにしても地すべりは大変形問題なので,リングせん断試験等の特殊な試験が必要になる。
理由2:異方性の問題
地すべりの頭部と末端部では,応力状態が大きく異なるので,均質な材料であっても誘導異方性の問題が発生する。平均的な強度として、直接せん断の結果が現象と一致することが多いといわれている。しかし、そもそも地すべりは,地質構造影響を強く受けており,構造異方性が卓越する現象なので, 単純にはいきそうもない。
理由3:間隙水圧の問題
地すべりにおける地下水のあり方は後難である。通常のボーリング孔内水位を無条件に静水圧とするのは無理がある。さらに,破壊時の過剰間隙水圧がどうなるかは,計測事例もほとんど知られていない。
理由4:破壊の非斉時性の問題
クリープ現象が存在することから明らかなように既存のすべり面が存在する場合でも,最初から地すべり全体でせん断抵抗力は発揮されない、実際に、変形(ひずみ)が伝播する現象が観測されて、活動の度にすべり面では馬所破壊と破壊の伝播が,繰り返されていると考えられる。
理由5:三次元形状の問題
現状では二次元安定計算が主流である。そのためには代表断面を決めることが必要であるが,地すべりの場合,形状が複雑なのでそれは容易ではない。
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 つづきは明日にします。 

2010年11月5日金曜日

土壌汚染対策ガイド

 今年の4月から平成22年4月の改正土壌汚染対策法の全面施行されました。その後、土壌汚染調査技術管理者という資格も作られました。以前に触れましたが、そのガイドラインのまあ分厚いこと。その概要版的なものがないかなあと思っていたら、北海道経済産業局 資源エネルギー環境部 環境・リサイクル課がわかりやすい冊子を発行していました。

 http://www.hkd.meti.go.jp/hokni/dojo_guide/dojo_guide.pdf
 
 調査段階の30mメッシュ、10mメッシュの区切り方など、詳細はありませんが、どこが変わったのかはわかりやすくなっています。あとは、自然由来の土壌汚染も調査対象となっていますので、地学雑誌の論文をもう一度読み返してみたい方がよいかなあと思います。

2010年11月4日木曜日

ぽってり山

 千木良先生の『崩壊の場所』という書籍に、”ぽってり山”という表現が出てきます・岩盤の緩みにより、斜面の中央部から下腹部!?が凸型に変形した斜面のことで、いまでいう深層崩壊の前兆現象となります。昨日行った渓流は、ぽってり山というには険しすぎるのですが、これから崩壊するであろう斜面は、崩壊地の上部にまだまだ残っています。陽射しの方向にも恵まれ、なかなかいい写真が撮影できました。ここでは土石流による河道閉塞も懸念されます。

2010年11月3日水曜日

深層崩壊の断面

 ここはおそらく1998年の豪雨によって深層崩壊を起こした現場です。ここにいたるまで35°くらいの崖錐と土石流堆積物、その上の激流を延々と登ってきました。一歩進むとスレーキングした粘板岩がずるずると下方にすべり、ムーンウオーク状態。水しぶきに打たれびしょぬれ(おかげでちょっと風邪気味です)でたどり着きました。もう少し上れそうですが、帰る時間を考えるとここでGIVE UP。
 青く澄んだ空の下にベージュ色の砂岩層があって、亀甲状の割れ目が無数に発達し、いかにも透水性がよさそうです。その下に硬い粘板岩、泥岩があって、その間から湧水し、滝が形成されているようです。多分そのことが深層崩壊の引き金になっています。

2010年11月2日火曜日

目的と手段

 このブログで「DMがきません」という記事を書いたことがあります。今年はとくにそれが多い。PCがなければ文章が書けませんという作家はいないと思います。DMやTINてのは、ごく参考までに土砂の挙動を確かめてみようかあ~程度に使うもの。それが出来ないから「調査」ができないなんてのは本末転倒もいいところ。住民が猛反対するわけです(とある西日本の温泉街でそういうことがありました)。

2010年11月1日月曜日

ちょっと一息

 雨にたたられ薮も多くしんどい現場だったのですが、絵になる風景がありました。東北地方はこれから色づく季節になります。青空だったらもっと絵になる風景だったのでしょうけれど、汗をかいたあとに見つけただけに、ちょっとほっとしました。