2013年9月9日月曜日

深層崩壊地形の判読 - 応用地形判読

 深層崩壊が起こると、その斜面はしばらく(おそらく数百年以上は)抜け殻になります。ただ、表層崩壊が繰り返し起こり、いわゆる”岩が近い・浅い”状態になった地形も、ある意味抜け殻なので、空中写真で判読することは容易ではありません。
 浜松の茶畑にしても昨年の九州豪雨にしても、攻撃斜面であったり、孕んでいたり、千木良先生のいうところの"生活習慣病"的な地形種が分布する箇所を抽出するのですが、実際そんなに簡単なことではありません。
 今日届いた地盤工学会誌は「近年における斜面災害」というオーソドックスなタイトルの特集号でしたが、実際には構造地質学、第四紀後半の地殻変動、海水準変動、降水量変動など、多くの背景(災害環境)を広く把握できるような情報を提供することも、応用地形判読の役割です。

2013年9月3日火曜日

応用地形判読図の一例

 でかい画像ですが、、、地すべり学会誌に投稿した微地形分類図です。論文には「微地形分類図」と書きましたが、斜面防災を強く意識したので「応用地形判読図」といえましょう。
 さて、上の図でいう崩落崖と1990年空中写真の崩壊地の縁辺は、ほぼ後氷期侵食前線に該当すると考えています。それを示すためには、大河川まで広範囲に至る判読図を作成する必要があり、投稿に間に合わないため割愛しました。また、初生的な地すべりは地すべりブロックⅠであり、その地すべりの滑動に対応する段丘地形も残されています。
 不安定土塊のなかにはクラックや段差地形が多く認められますが、これは2年前の台風により発生した崩壊によって生じた応力解放に伴うものと考えられます。よって、この範囲は、地すべりの地形発達史の段階がひとつ進んだことになると考えています。不安定土塊内のガリーやクラックの分布状況から、今後豪雨によって地すべり(深層崩壊)がどの程度の規模で発生するか、推定することもできます。
 このように地すべりであれば、その発生から安定化に至る過程を推定できるような情報図を作成することが、応用地形学図、ひいては応用地形判読士にも求められるのではないでしょうか。

2013年9月1日日曜日

私の学会投稿 - 応用地形判読

最近地すべり学会誌と応用地質学会誌に、私が大きく関わった投稿が掲載されました、両方とも空中写真判読をもとに地形分類図(応用地形判読図)を作成したものです(両方とも私が第一著者なのですが、図面の一部を抜粋して掲載します)
 応用地形判読士の二次試験は、低地及び斜面に関する空中写真判読図を即興で作るものだと聞いていますが、地すべり学会誌に投稿したものは斜面編、応用地質学会誌に投稿したものは低地編ということになるのでしょうか。
 地すべり学会誌に投稿した報告は、斜面の植生の乱れを指標として検出した不安定領域と既往の崩壊地の規模、経年変化から、その斜面における地すべり地形の発達史を考察したのものです。
 応用地質学会誌に投稿した図面で工夫した点は、支谷閉塞低地や河成堆積低地など、地形種とその地形場(形成環境)を表現できる用語を使った点です。これらの言葉は、実は鈴木隆介先生の読図入門に用いられている言葉ですが、まだ一般化していないように思います。
 ただ、鈴木先生の言葉を拝借しただけではなく「地形災害環境」を考える習慣を意識すること、自分もそのような理にかなった言葉、図表現を考えて生きたいとおもっています。