2010年7月17日土曜日

土石の旅路

 山は崩れ沢を通り、平野をつくり海へ注ぐ。未来永劫続く自然の脈動は、今年は異常だ、いや10年前とくらべ、生まれてこの方はじめて、、、云々の感覚をこえています。自然はそれが仕事です。「災害」はその仕事にとって都合が悪い場所にあったとき、人間が勝手に騒いでいるだけに過ぎません。

今年も中国地方で豪雨災害がありました。そして去年もありました。去年はその土石流災害に対して、地質学的な調査研究が行われました。私も関わりました。

平成21年7月 山口県防府市土石流災害 調査速報
http://www.kankyo-c.com/Recent_investigation/2009_yamaguchi/2009_yamaguchi.htm

福岡ほか(2009):平成21年7月中国・九州北部豪雨による山口県防府市土砂災害,自然災害科学,Vol.28,No.2,pp.185~201
http://wwwsoc.nii.ac.jp/jsnds/contents/shizen_saigai_back_number/ssk_28_2_185.pdf
・真尾地区の土石流堆積物には,しばしば周防変成岩の泥質片岩礫が見られた
・源流部には花崗閃緑岩と細粒花崗岩しか分布せず,周防変成岩はさらに数百メートル東方の上流域に分布する。このことは,過去の斜面崩壊などで沢にもたらされた土砂もまた,今回の土石流の母材となったことを示している。
・今回の土石流災害は花崗岩地区の地表に風化で生成されていたマサ土の土層が谷頭で小規模崩壊を引き起こし,飽和した渓床堆積物上に急速載荷することにより土量を増大させながら大規模土石流化した
・特別養護老人ホームは上田南川の出口に立地しており,大半の巨礫はその前の緩傾斜区間で停止し土砂のみが建物内に流入したが,避難に時間がかかる入居者が多かったため被害が大きくなったと思われる。市役所から避難連絡が来なかったため避難が遅れたとされているが,極端な気象条件では自治体も機能不全になることがあり,自主判断で避難するための指針,方策を考えるべき時に来ているように思われる。

そして、ずいぶん前でが、羽田野誠一氏による土地分類基本調査が行われています。これをみると、遷級線、旧河道、沖積錐など、洪水によって形成される地形が精細に表現されています。さらには、急斜面(変成岩類・谷密度小)など、厚い風化帯を示唆する凡例が設定されています。おそらく、土石流や崩壊の発生しやすい地域のひとつとして注目されていたのでしょう。
http://tochi.mlit.go.jp/tockok/inspect/landclassification/land/5-1/3501.html

先に紹介した、自然災害科学の論文ですが、地質学的にも防災的見地からも教科書になるような結果、提言となるでしょう。こうやって情報公開されているのですから、その存在をもっと知られ、議論の機会を増やさねばなりません。

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