2010年7月11日日曜日

日本列島の地形学

 東京大学出版会から『日本列島の地形学』が出版されました。著者には6名の地形学のBIG NAMEが並んでいました。これらの先生方は、私が学生時代に第一線で活躍しておられ、新編日本の活断層や海成段丘アトラスなど、地殻変動、海水準変動、気候変動が最もドラスティックな時代の研究をされました。
http://www.utp.or.jp/bd/978-4-13-062717-7.html

 特に前半部の氷床コアや火山灰、酸素同位体比の最新の知見を用いた地形編年の詳細さは、それだけで買う価値があったと思いました。特に、45ページのテフラ対比・編年できる日本近海の海底コア、湖成層や陸上の風成層の後期更新世の気候プロキシの変化や、108ページの LGMから完新世初期までの環境変化 などに詰め込まれた知見から、改めて第四紀のドラマを想像する楽しさがつまっっています。
 ただ、段丘と地すべり、斜面変動とのコラボレーションがいまひとつ進んでいないような気がします(年代決定資料を採るのは大変ですが)。地すべりの年代については、斜面防災対策技術協会のサイトに解説があります。 
http://www.jisuberi-kyokai.or.jp/gijyoho/gijyutu/tyosa/nendai/nendai.html

『日本列島の地形学』を編纂した先生方が、最も多くの論文を書かれていた時代、○○平野の地形発達史、○○流域の段丘形成史、といった平野を中心とした地域そのものの形成過程を論じたスケールの地理学的研究が盛んに行われました。段丘は”色分け”がされましたが、それに対応するほどの斜面、地すべりの”色分け”は行われていません。これは、河川流域が丸ごと対象となる(最終氷期のはるかかなたの河口までの想像力も含めて)ので、時間も費用もかかるでしょう。壮大ですが、やってみたいテーマではあります。

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