2012年8月15日水曜日

「侵食」と「浸食」

 先ごろとどいた応用地質学会誌のシンポジウム記事を読んでいたら、「浸食」という文字がやたらと目に付きました。洪水や崩壊、地すべりは、水の作用で起こることが多いので”人偏のい「侵食」よりは”さんずいの「浸食」”だろうという発想や意見を聞いたことがあります。
 でもそれでは土砂崩れ、がけ崩れといったような、原因を想定できない”アマチュア言葉”に誓いのではないでしょうか。鈴木隆介先生の「地形図読図入門第4巻」に索引がありますが、「浸食」はありませんし、二宮書店「地形学辞典」にもありません。むしろ、応用地質学会誌に掲載されていたの内容は、まさに「侵食現象」でしょう

(鈴木先生の私信では、侵食(erosion)は雨,風,河流,氷河,波と流れなど,流体力によって地表が少しずつ「侵蝕」,つまり「虫が葉っぱを少しずつ,蝕む」ことを意味し,月食も少しずつ欠けていくので月蝕が正しく,本来であれば侵蝕が正字でしょう.したがって,マスムーブメントは侵蝕に含まれません.風化も含みません.風化は岩石を浸食されやすくするプロセスで,風化しただけでは,外力が加わらない限り,地形物質の移動は起こらず,侵食(erosion)は起こりません.侵蝕とマスムーブメントを一括して削剥(denudation= de + nude)と呼んでいます. とのことでした)

また、神奈川県の海岸砂防のサイトで、佐藤慎司先生が、間氷期に時間をかけて海面が上がってくる(海進:陸が海水に浸っていく)現象を「浸食」として分類しておられますが、これはなるほどと思います。http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/sabo/kouwan/sympo_ppt/vol4/vol4_ppt_sato.pdf

 ”わかりやすい”言葉は”あまり考えなくてすむ”言葉でもあると思いますが、単純にハードルを下げるだけでなく、言葉と現象の因果関係がシンプルに示されるていることともいえるでしょう。安易に”深層崩壊”といった曖昧な言葉に頼りたくないものです。

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