2010年11月22日月曜日

芋川の天然ダムが語りかけるもの

下河・稲垣(2009)地すべり学会誌
 『ダムは本当に不要なのか』という本に、天然ダムと河道閉塞について述べられた文章があります。そこでは、1984年の長野県西部地震による伝上崩れや、1586年帰雲山崩壊、1693五十里洪水など、激しい洪水を伴った災害事例が列挙されています。
 ただし、その結びの文章として、脆弱な日本の国土の大変過酷な宿命が天然ダムである。今回の芋川の天然ダムは、そのことを多くの国民に知らしめる絶好の機会ではないか、、とあります。
 たしかに、地震で山が崩れ、河道をふさぐというのは物理的に激しい現象です。しかし、もう少し長い目で見る必要があります。芋川の天然ダムは、自然の歴史からいえば何度となく繰り返されてきた変化の一断面で、なおかつ一瞬の出来事です。2004年まで美しい棚田や農地が広がっていたことから、基本的には落ち着いた自然だったと言えます。 実際に中越地震以前の空中写真を判読してみると、芋川の河道周辺では農地かうっそうとした林地であり、土砂移動はかなり落ち着いていたことが伺えるし、激しい洪水、土石流氾濫で形成されるような微地形もありません。地域、流域に応じた地形発達史的背景を念頭におかないと、画一的なイメージが先行しかねません。

0 件のコメント:

コメントを投稿