2010年11月6日土曜日

釜井先生の講座から(1)

 最近地すべり「調査」とは名ばかりの、機械的な作業に終始しています。私としては、地すべりの滑動について地形発達史的背景を考えたいのですが、有無をもいわさず(紅葉ではありませんが)黄色か赤に色づけられます。DMの一昼夜変換し続けないと使えんし、、、 こういう状況の解毒剤とも言える本があります。前のブログでも紹介しました。

 高野秀夫論説集『斜面と防災・別記』  http://www.ctt.ne.jp/~myama/slope_landslide.pdf
 (※リンク元のHP等は不明)

 秋の夜長に読んでもいいのですが、釜井先生の講座もコンパクトでわかりやすく、地すべりの本質、解析のありようについて解説されていました。

 地すべり(初級講座) 地盤工学会誌57巻9号, pp.45~51 http://ci.nii.ac.jp/naid/110007361199
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・ 最近は,比較的簡単に地形図の画像が閲覧でき、Google Earth等の普及もあって,パソコンの前に居ながらにして地形を観察する事が可能である。しかし,依然として,地すべり地形を調べる最も強力な手段は,空中写真の実体視である事には変わりがない。

・ 斜面における地下水分布は複雑で様々な場所に地下水が存在する事,深い部分では被圧されている事,地下水が通りやすい「みずみち」がある。

・地すべりの安定解析は難しいわけ
理由1:すべり面せん断強度の問題
安定計算に不可欠であるが,簡単には決められない。ピーク強度?残留強度?はたまたその中間なのか?地すべりによる変形がどの程度進んでいるかは、一応の目安ではあるが決め手を欠く。さらに,地すべりが運動する速度によっても,せん断強度が変化する(高速流動時の粒子破砕等)。 いずれにしても地すべりは大変形問題なので,リングせん断試験等の特殊な試験が必要になる。
理由2:異方性の問題
地すべりの頭部と末端部では,応力状態が大きく異なるので,均質な材料であっても誘導異方性の問題が発生する。平均的な強度として、直接せん断の結果が現象と一致することが多いといわれている。しかし、そもそも地すべりは,地質構造影響を強く受けており,構造異方性が卓越する現象なので, 単純にはいきそうもない。
理由3:間隙水圧の問題
地すべりにおける地下水のあり方は後難である。通常のボーリング孔内水位を無条件に静水圧とするのは無理がある。さらに,破壊時の過剰間隙水圧がどうなるかは,計測事例もほとんど知られていない。
理由4:破壊の非斉時性の問題
クリープ現象が存在することから明らかなように既存のすべり面が存在する場合でも,最初から地すべり全体でせん断抵抗力は発揮されない、実際に、変形(ひずみ)が伝播する現象が観測されて、活動の度にすべり面では馬所破壊と破壊の伝播が,繰り返されていると考えられる。
理由5:三次元形状の問題
現状では二次元安定計算が主流である。そのためには代表断面を決めることが必要であるが,地すべりの場合,形状が複雑なのでそれは容易ではない。
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 つづきは明日にします。 

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