2010年9月19日日曜日

環境地質学の活躍の場

奥村他(2007)地学雑誌116(6)pp.894

地質学を学ぶと岩石、炭素、海洋など、循環系の自然観を養うことができます。例えば、上図のように、地殻表層部はマグマが冷却固結して火成岩が生成されるところから始まり、岩石中に含まれる元素の循環は、風化作用、水の運搬・堆積作用→続成作用→堆積岩の形成といった現象です。

冒頭の図が掲載された論文は、地学雑誌の「小特集 土壌汚染-環境問題への地質学の役割」において、その当時自然由来の土壌汚染に対しては法の適用外であることを批判的に指摘していました。しかし、奥村他(2007)が指摘しているように、人類が生活する地殻表層部のあらゆる部分で重金属の濃集・化学的形態変化が起きうるわけです。

また、なにかが汚染されないと、循環する自然観を養うことができないわけではありません。最近話題の深層崩壊も、例えば四万十帯の岩石の形成→隆起→河川の下刻→重力変形による緩み・岩盤クリープ→崩壊→扇状地・氾濫平野の形成→海への土砂排出→続成作用→やがては堆積岩へ、、という循環です。最近の化石燃料の消費によって急増したかどうかは、このような自然観を持っていれば自ずとわかることです。自然にとってみれば淡々とした業ですが、人間生活にしてみれば確かに十津川災害のように故郷を遠く離れるほど劇的ではありますが、、、、

今年、土壌汚染対策法が改正され、自然由来の汚染も法の対象となりました。環境地質学的視点を持った技術者が活躍すべき場と思われます。そして、こういった自然観を持ちつつ、暮らしに密着したリスクの扱い方が問われるのが、地質リスクマネジメントだと思います。どうも今の地質リスクの議論は”なんぼ安くできるか”という”事業目線”が強すぎるような気がしてなりません。

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