2011年11月17日木曜日

地形学らしい論文

以前私が書いた論文に丁寧な質問を下さった方が、「地形」に山地斜面の発達史に関する論文を投稿されていました。

 平石成美・千木良雅弘(2011):紀伊山地中央部における谷中谷の形成と山体重力変形の発生,地形Vol32,№4,pp.389-409

 まず、第一印象は、地すべりとは違い堆積物の残りにくい西南日本外帯の急斜面の発達史について、よく文献を精査しておられること、次に、遷急線、侵食前線の考えかたがよく整理されていて分かりやすい論文だと思いました。「谷中谷」という言葉は、おそらく新しい概念だと思いますが、我々が実務でいうChやCm級の堅岩が連続しているようなイメージでしょうか。
 私も実務ではレーザー計測地形図をみて、この論文にあるように下位遷急線がシャープに追跡できるところとそうでないところがあることは実感していました。「平成」と「明治」の十津川災害が、第四紀後半の地形発達史のなかでどう位置づけられるか、方向性と課題が示されました。急斜面の地すべりを勉強するにあたっても、充実した論文だと思います。

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