2013年12月28日土曜日

応用地形判読士の二次試験をやってみました(2)

まづ目を引いたのは、凡例の記入例として「火砕流台地」があること。肘折火山は火砕流台地があるのでは?と思いつつ、記入例の真っピンクの色付けは無視しました。

知識として肘折はカルデラ火山であることを知っていたのですが、文献によっては軽石流堆積物というものも
あって、空中写真判読と読図だけでここまで物性を特定できるのかと思いつつ、、、

メインテーマはキャップロックによる地すべり災害でしょう。押し出しに伴う河道閉塞や、洪水・落石災害にも着目しました。

改めて鈴木先生の読図P646-648を読みました。先生の読図結果と私の案が大きく異なるのは、

①「湖成」と定義していないこと
 カルデラであることはわかったのですが、規模からみて厚い段丘堆積物が形成できる程、湖が長持ちしえただろうか?という疑念が生じてしまい、「カルデラ台地」という造語を作ってしまいました。

②マールを定義できていない。
 先生の読図結果にある「マール」の部分が、なにか不自然な屈曲があり物性が違うなあ、とは思ったのですが特定できませんでした。

③ほか、小松倉北部の緩斜面の解釈で、先生は地すべり、私は火砕流台地としている。湖成段丘縁辺の崖錐の規模、志賀山の西側の緩斜面の解釈(先生は地すべり、私は崖錐)、三角山南部の火砕流台地の記載もれ

等でしょうか。「湖成」を用いなかったところは減点対象でしょうか。

応用地形判読士の二次試験をやってみました(1)

お世話になっております。応用地形判読の今年の二次試験の問題を解答してみました。2時間という時間制限を自ら設け、800字の原稿用紙は自前のものを用意しました。

①午前中の問題

問題を解く前に気がついたこと
・後に調べてみたら、まずこの地域ズバリの文献が存在していました。

太田陽子他(1992):佐渡島の海成段丘をきる活断層とその意義
 地学雑誌,Vol. 101 (1992) No. 3 pp.205-224

 多くのテーマを盛り込もうとして、結果としてメインディッシュが分かりにくく、全てが脇役的である。段丘対比を考えようとしたら南西側が足りないし、国中平野の水害地形を考えようとしたら、北東部が足りない。波打ち際の災害についても解答できればよかったのですが、、、

2013年11月12日火曜日

永字八法と応用地形判読

 小学校の恩師と話す機会があり、永字八法の話になりました。「永」という字には、字を書く際の基本的な8つの技法がすべて含まれているというものです。書こうとする文字の成り立ちと8つの基本的な構造を認識することで、整ったきれいな字がかけるということです。

http://www.maebashi-hs.gsn.ed.jp/tokushoku/sogo/h24_2/07.pdf

 地形判読におきかえると、地形種の認定ばかりに気をとられていて、整った(美しい)判読図を作成する技法を解説したものは皆無です。含蓄に富む名文も、誤字脱字や文字が整っていなかったりすると、実用的かつ感動を与えるものにはなりません。

2013年11月4日月曜日

災害とイメージ

<土砂災害>危険箇所4割が「警戒区域」未指定…伊豆大島も
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131103-00000003-mai-soci 
都道府県が土砂災害の恐れがあるとして抽出した52万5307カ所の「土砂災害危険箇所」のうち、4割以上が土砂災害防止法で定められた「土砂災害警戒区域」に指定されていないことが分かった。(途中略) 国交省によると、これまでに指定を終えたのは青森、栃木、山梨、福井、山口の5県のみ。秋田、岩手、愛媛県などは指定率が2割前後と低い。秋田県河川砂防課によると、指定で「災害に弱い」というイメージが生じ、不動産価値が下がると懸念する住民もいるため慎重にならざるをえないという。----------------------------------
 これはよく言われていることですが、こうして記事になることは意外と少ないと思います。記事ではハザードマップの作成する重要性も指摘しています。しかし、このマップにしめされた範囲は、予想の不確実な土砂の流れを、おおむねこんなものだろう、これくらい想定しておけば無難だろうという感覚で作成されています。 たとえば、土石流危険渓流の想定氾濫域には、この規模の渓流をしてこの氾濫域の広さはないだろうということも多々あります。土と石が流れる状態にあるかどうか、という話ですが、たとえば傾斜が2.00°あるというだけで、土砂が河成岩石段丘の末端まで達している想定がありますが、地形発達史的背景から考えて1万年も土石流に覆われていない地形場(災害環境)である、、という議論を踏まえると、「災害に弱いイメージ」もそんなに広がらなくてすむはすなのです、、、、、

2013年10月30日水曜日

関西大学文学部 地理学・地域環境学教室のHP

 しらない間に出身教室のHPがリニューアルされていました。すごく洗練されたHPに仕上がっていてびっくりしました。

 関西大学文学部 地理学・地域環境学教室
 http://www2.kansai-u.ac.jp/kugeoenv/index.html

 私がいたのは91~95年ですので、まだwebという概念も教室にはなく、史学・地理学科と称していたので完全に独立してはいませんでした。その後(特に2000年代に入り)、いろんな学部の名前にカタカナが増え、地理学教室も「地圏」とか「環境」とか「○○システム」などど名前を変えていきました。そのうち”地理学教室”はなくなるんではないかと話したこともありました
 昔から人文地理が多いので、卒論のタイトルや就職先をみても地質コンサル、建設コンサルに就職する人が少ないのも変わっていません。ただ、測量士補を取得できるようになりました。JABEEによる技術士補も取得する方向に行っているようです。発展を期待します。

2013年10月24日木曜日

深層崩壊という用語

 深層崩壊という用語が度々マスコミに登場し、その地形的予測に関する仕事も増えました。用語としては”はやっている”状態です。最近、千木良先生が「深層崩壊」という本も出版されました。
 さて、千木良先生が主体となって開催された京都大学防災研究所の特定研究集会「深層崩壊の実態、対応、予測」では”私見”として以下のように述べられています。

 http://www.slope.dpri.kyoto-u.ac.jp/symposium/DPRI_20120218proceedings.pdf
 深層崩壊という用語をきちんと定義しておくべきだ,という意見をしばしば耳にするが,以下に私見を述べる。深層崩壊の意味は,それと類似した用語である大規模崩壊や巨大崩壊の用語が意味するところを考えると理解しやすいと思う。後二者は,いわば平面的に見て規模(面積)が大きいことに注目したものである。おおよそ 10 万㎥以上の崩壊が大規模,100 万㎥以上が巨大,と言われているのが一般的であるように思えるが,これらは厳密に定義されたものではない。これらの用語に厳密な定義がないことは衆目の認めるところであろう。しかし,これらは「規模が大きく,移動速度が大きく,その被害も甚大である」ということを容易に想起させ,“便利な”用語であると言える。これは日本だけの事情ではなく,英語圏でも large  landslide,  gigantic  landslide はごく一般的に用いられている用語であるが,いずれも明確な定義はない。(途中略),「斜面表層の風化物や崩積土だけでなく,その下の岩盤をも含む崩壊で,地質構造に起因したもの」であることを特徴としている。深層崩壊を強いて定義するなら,こうなるであろう。

 鈴木隆介先生の地形図読図入門では、「基盤崩落」という用語で、大規模で急傾斜の谷壁斜面、谷頭斜面や尾根の一部が、地質的不連続面とはほとんど無関係なせん面を境に、急激に破壊し、径数百mの巨大岩塊を含む物質が一団をなして急速に滑落する現象

 と、移動プロセスを含め定義されています。
 個人的には「深層」という言葉が一般用語に近く、「基盤」という言葉が専門用語に近い印象は持っています。羽田野誠一さんは「地崩れ」と呼び、私の周りでは大規模崩壊と呼ぶ人が多いのもまた事実です。
 斜面の防災地形・地質にかかわる研究者・技術者が古くから悩み続けているテーマであり、ハード面でもソフト面でもこれといった対策もないように思います。ただ、最近になって急激に増えた印象をあたえる報道の仕方は?です。

2013年10月20日日曜日

応用地質学会

今年の応用地質学会は私の誕生日に開催されます。ポスターセッションのネタを2つもっていて、やっと目途がつきました。ほぼ10~20年に一度の豪雨で深層崩壊が発生しているという地形変化の激しい流域で、魚のうろこのような判読図を作成しました。地形に対応して岩盤の種類や災害形態、頻度を読みかえることができるようにデータベースを構築中です。