明日から箱根方面の防災点検に行ってくることになりました。対象箇所には、根府川も含まれています。根府川といえば関東大震災及びその後の豪雨で発生した土石流により、大きな被害の生じたところです。また、私が空中写真で斜面発達史を考える上で、重要なヒントとなった「後氷期開析前線」の分布図が示された流域でもあります。
そして、根府川にはもうひとつ個人的な思い入れがあります。好きな詩人の一人である、茨木のり子さんの代表作のひとつである「根府川の海」という詩です。
根府川の海
根府川 東海道の小駅 赤いカンナの咲いている駅
たっぷり栄養のある大きな花の向うに
いつもまっさおな海がひろがっていた
中尉との恋の話をきかされながら
友と二人ここを通ったことがあった
溢れるような青春をリュックにつめこみ
動員令をポケットにゆられていったこともある
燃えさかる東京をあとに
ネーブルの花の白かったふるさとへたどりつくときも
あなたは在った丈高いカンナの花よ
おだやかな相模の海よ
沖に光る波のひとひら
ああそんなかがやきに似た十代の歳月
風船のように消えた無知で純粋で徒労だった歳月
うしなわれたたった一つの海賊箱
ほっそりと蒼く国を抱きしめて
眉をあげていた菜ッパ服時代の小さいあたしを
根府川の海よ
忘れはしないだろう?
女の年輪をましながらふたたび私は通過する
あれから八年ひたすらに不敵なこころを育て
海よ
あなたのように
あらぬ方を眺めながら…………。
音楽や詩を鑑賞するというのは、きまった手順や方法があって、こうしなけれ ばならないなどといったことはなく、自由に感じるままに楽しむことなんですが、自然を見る眼もそうです。私のような仕事に携わっていると、自然を見るというよりも科学に基づいて”診る”ことが多いので、このようなこころのゆとりをなくしがちです。
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