就職してから数年は、活断層関連の仕事に従事しました。折しも情報技術が飛躍的に伸びる時代でもあり、物理探査・地震探査技術を用いた研究や、地球科学的視点からの活断層研究も発展していきました。そのなかで、活断層は地表に明確な崖・リニアメントを残すとは限らない、むしろ、地殻のストレスの通り道としての結果であって、地表に出なくても活断層が潜んでいるという考え方に発展していきました。ですから、空中写真判読にあたっても、地下数十km以上に潜む活断層までを考える、高度な空間思考が求められるようになりました。2000年代半ばからは、レーザー測量という画期的で超高精度の測量手法の台頭により、学生時代から手がけてきた地形分類も新境地に入っています。
ただ、ここ十数年は、自然災害はもとより「経済災害」とも言うべき不況風強烈な時代でもありました。私が4回生のときが元年と言われた「就職氷河期」も厳しさを増していると聞いています。歴史を紐解くと、大地震や火山噴火の直後は経済活動がますます疲弊する傾向があります。
さらに「情報洪水」もとても厄介な「災害要因」です。圧倒的かつ玉石混交な情報が絶えずあふれているだけに、その情報を分析し価値あるものを抽出すること自体が仕事になってしまいました。また、コンピュータ・シミュレーションの多用により、scientific であるということは、「数値化すること、計算すること」という認識ができあがってしまっています。先に書いた経済災害と情報洪水に、我が強く不器用な私は何度か振り回されました。 しかし、ここまでなんとか踏みとどまっていられたのは、地理学教室で受けた薫陶がベースになっていたのだろうと、感謝しています。やはり、自然現象でも社会現象、歴史の断面でも、その現場を歩き、定性的なモデリングを構築する。机上の空論ならぬ「地上の正論」は、地理学の本懐であると思うのです。
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