2011年8月20日土曜日

災害科学と科学コミュニケーション

 先日応用地質学会誌とともに届いたJGLに、東大地震研究所の大木先生の記事がありました。最近、私たちも斜面の問題、谷埋め盛土の地滑りに関することなど、地域住民の方から問い合わせを受けることが多くなりました。そのたびに専門用語の問題や、自然現象を過不足なくイメージしてもらうようにどうすればよいかなど、迷うこともあります。 
 大木先生は、科学者として改善すべき点、として、以下のように述べられています。

 科学の世界が「目安」として出した情報が、外に出た瞬間に「科学的根拠」と認識される。進行中の科学の分野においては、研究成果から得られる情報は常に曖昧さを含む。社会の構成員が科学と対峙するときに真に必要となるのは、あいまいな情報から各自が判断をする力である。

 地震予知のみならず、私がよく関わる斜面の土砂災害の問題においても、常に曖昧さは付きまとっています。そもそも地形図の等高線にしても、いわゆる”えいやッ”を連発しながらつくるものです。ましてや地質図や地形分類図は、斉一観、自然観を総動員して作成するものなので、定量≒科学とイメージしている人には、なかなか存在意義を伝えにくい、残念ながら概要図以上の扱いを受けないことも少なくありません。
 これらのことは、ハザードマップを作る立場になれば実感できると思うのですが、なかなかそうは行かないようです。地形・地質に関わる専門家は、かつての津波堆積物や深層崩壊に起因する土石流堆積物の分布をつぶさに記載しても、それは何万年と繰り返されてきた地形変化、自然現象の”一断面”でしかない、という謙虚な気持ちを持っていると思います。しかし、「基準」「根拠」を求められたとき、形にならない部分をどのように発信するのか、いつも考え続けていると思います。

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