地質と調査2010年2号に、上記のタイトルの論文があります。著者の牛山先生は豪雨記録の解析から、1990年代以降豪雨が急増しているという印象はなく、やや減少気味にさえ見えると述べられています。また、豪雨災害が増え続けているといった漫然としたイメージが先行してしまうことを懸念しているとも述べられています。私はこの要因として、奇しくも90年代から広まった「地球温暖化」のイメージ先行、情報網の格段の整備があげられると思います。災害がリアルタイムで”伝わる”ので、事実よりもインパクトがあるのです。
”豪雨の頻発という漫然としたイメージ”ということでいえば、最終氷期から後氷期に至る気候変動に伴う地形変化もあげられると思います。いまでこそ、結構市民権を得た感のある後氷期開析前線は、空中写真で抽出しづらい地形要素であるため、生みの親ともいえる羽田野誠一氏は、周辺の方々からいろんなことを言われたと聞いています。
それは、最終氷期の対して”冬のイメージ”が強すぎるのではないかという意見です。羽田野氏は、あまりにも明確に自信を持って、かつ連続的に線を引くものですから、空中写真で見えないものを心眼で引いているのではないかと懐疑的な意見も受けたようです。
当然最終氷期には、降雨量の数値データがありませんから、イメージで語るしかありません。地形学・地質学の楽しみでもあります。数値はイメージを絶対化する魔力を持っていますから、間違った方向に行くと、なかなか取り返しがつきません。
2万年前頃は、最も寒かったと言われていますが、冬季の雪は少なかったようです。
返信削除「この時代は、日本海の表面水温が低下した結果、蒸発量が減少し、それにともなって冬の降雪量も減少したことは予想されている。」安田喜憲(2007):環境考古学事始、洋泉社、p.76
いつも有意義なコメント有難うございます。
返信削除私は九州は福岡県の出身ですので、地形変化は豪雨で起こるという感覚が染みついております。もちろん日本海側の調査にも行ったことがありますが、雪の量、泥質な山(丘陵)、、この辺の自然観をもっと養えれば、地すべりに対する見方も違ってくるのかな、と思っています。