2013年5月11日土曜日

リアス式海岸

http://ir.iwate-u.ac.jp/dspace/bitstream/10140/1700/1/erar-v57n1p125-141.pdf 岩手大学教育学部の学生82名に,海岸線の屈曲を滑らかにした白地図を与えて,図上で「三陸リアス海岸」の範囲を示させた。その結果,幾つかのことが明らかになった。

まず,正解というべきものが少ないことで,地元出身の学生が多い(岩手県出身56名)にもかかわらず,適切な回答をしたものが僅か6名に過ぎなかった。これは,地理教育において地元の身近な事象について学習することがはとんどないこと,リアスという自然地理的事象を厳密に吟味して理解する機会が少ないこと,海岸線の屈曲をなくした白地図に本来の地形が示される地図を想起して重ね合わせることが難しいこと,などの理由もあろう。誤答の多くは南限を実際よりも北にしたもので,61名であった。その大半(51名)は大船渡・気仙沼付近すなわち岩手・宮城県境付近とした。次に多い誤答は北へはみ出したものである。北へのはみ出し42名のうち,青森県までのものは10名に過きず,多くは岩手県北部のみを含めたものである。

一部は,特有の地形景観であるリアス海岸と結び付いて,固有の地域名,つまり「三陸リアス海岸」が地名として用いられることが多くなったのである。 ところが,この名が美しい風景を有する海岸という印象を与えるために,三陸の岩石海岸一帯に拡大されがちになっている。地名は変化するものであり,その指し示す範囲が時代とともに変化することは当然で,三陸海岸の範囲が変わることは問題ではない。しかし,三陸リアス海岸という地形学的に明確な景観を示す術語を含むものが,その術語の定義に反するもの,つまりリアス景観ではないものも包括するようになることば間違いであろう。
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