1本の葦には、川からきた海苔も海の海苔も、巻貝たちさせまとわりついていた。葦がそよぐとはそういうことだった。渚を縁どる葦むらとはそういうことだった。ながい間それは日本人の心性の中にすりこまれていた基層的な情景だった。
これは、石牟礼道子詩文コレクション 『渚』 に所収されている一節です。たった3行ではありますが、日本の原風景とそこに潜む情景が伝わってきます。最近英語の公用語化に関する話題が出てきていますが、Landslideひとつとっても、日本語は地すべり、崩壊、土石流、山津波、鉄砲水などいろんな表現があります。実務上の利便さはともかくとして、本来日本人が持ち合わせていた繊細な感性を鈍らせるのではないかと懸念しています。
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