昨日の記事で紹介した『土木建設・環境問題と地質学』から引用です。普段、あまり意識していなかったのですが、地すべりの断面図について、興味深い指摘がありました。
印象派・明解派・凡例派、それぞれの長短
ここに、少しふざけた図がかいてございまして、ご容赦願いたいんですがこの図5・3は、三本のボーリングで、ある地すべり地の図をつくったものでございます。
このいちばん上の、いわゆる凡例をつけた書き方というのは、非常に一般的なやり方でございます。
二番目に、非常に直截的に書かれた基盤と地すべり土塊。これは土木技術者が、このすべりの安定計算をするということから、よけいなものを取り去りますと、こういう図面のほうが非常にわかりやすいわけでございます。こういう形で斜面にのっておるものが、まだすべるかどうかを検討しようとしますと、こういう図は非常によろしいわけですが、この地すべり土塊を掘っていったら硬い安山岩が出てきた。土砂でなくて岩盤があるぞ。どうしてくれるんだ。ハッパがいるぞ。こういう問題になるわけです。
そういうことで、三番目の図は、地すべり土塊でありながらその中にある安山岩を表現して描いた、若干これはウソが入っておる図でございます。こういう図でみますと、三番目は印象派と書いてありますが、これと一番目は、基本的には同じことなんです。だけれども、地質について理解の少ない土木の方がおられるならば、三番目の話は非常にわかりやすいということになります。むかしの地形がこうなっておってそれがこういうふうにすべったんだ。この滑ったあとの断面積とすべる前の断面積と合うでしょう。よく断面図をみますと、体積が全然合わない。断面上に滑らないでよそへいっちゃうやつもありますから、かならずしも合わないのですが、こういう相互関係の矛盾のある図面がずいぶんあります。こういう体積関係が合うという図にして、こういう形で滑っておるんです。ボーリングの下にある砂利層というのは、昔の川の砂利なんですと言ういきさつ、これは相手方の地質学に関する理解度、あるいは調査の目的によって変えてやるというのが我々の使命だと思います
結構私は”印象派”の図面を書きます。民間・個人の専門家でない人からの依頼が多い時は、すごく”印象的な絵”を書きます。逆に、基礎調査などは”明快派の超手抜き”断面です。このような考え方は、CADの台頭とともに薄れていった気がしてなりません。
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