2010年7月23日金曜日

車1台分の防災対策

 個人や民間の防災に関わる相談に関わっていると、本当にシビアです。今日は住宅リフォームのなかで、地盤補強ができないかという相談でした。当然、リフォームにかけられる予算には限りがあるわけですが、これが公共事業の急傾斜地崩壊危険箇所だと桁がふたつくらいは違うわけです。そして、規格にあっているかどうがが第一義として話が進められますので、どうしても一律、永久構造物となってしまいます。

 住宅リフォーム会社の方の話では、現在営業展開をするにあたり、少しは壊れるものをつくるがキーワードになっているのだそうです。永久建築物にすると高くつくので売れないし、買い手の理解も進んできたのだということなんです。特に住宅リフォームとなると、個別の物件ごとに損傷の度合い、周辺の施工条件、地形、地質、そして盛土の劣化など、ひとつとして同じ現場がないので、現地単品オーダーメイドになります。

 そして、公共事業と決定的に違うのは、予算の規模です。対策工の施工まで踏まえ、だいだい車一台分の予算だというのです。公共事業だと家1件分以上のことがざらです。そして、地表・地質調査費用はもっと少ない。そこで適切な結論をださねばならない。

 ただいえるのは、発注される額こそ違うものの、「技術者冥利」という意味では個人・民間の方がやりがいがあります。その辺は、私の論文に書いたところでもあります。

下河敏彦・稲垣秀輝(2010):市民社会にとっての地質技術とアウトリーチ,応用地質学会誌50(6),pp.345-349

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