2014年6月19日木曜日

段丘における建設工事の諸問題

段丘面は一般に安定していると思われがちですが、メモ書きです。
1) 切取りと開削
 岩石段丘では、後面段丘崖からの段丘堆積物の落石、切り取り法面が急傾斜している場合の層面すべり。段丘礫層の基底に及ぶ開削は地下水の低下に注意する。
2) 盛土と基礎
河成段丘面の名残川、支谷閉塞低地、上流の段丘を侵食する段丘開析谷を埋める過去の谷底堆積低地には軟弱地盤が分布している。ローム段丘では、風化火山灰の支持力が小さいので、重量構造物の基礎は段丘礫層や基盤岩に求める。
3) トンネル
谷側積載段丘では、固結岩と非固結岩砂礫層が交互に切羽に露出するので、掘削工法選定に注意。薬液注入の地下水汚染も留意。岩石段丘でも、段丘堆積物の基底部に位置するのであれば、砂礫段丘と同様に落盤や地下水湧出を招く。
段丘面の最大傾斜方向と直交する方向にトンネルを掘削する場合には、トンネルが地下ダムになってしまい湧水や地下水圧の上昇を招く。
4) ダムと池敷
一見岩石段丘にみえても谷側積載段丘である場合があるので、埋没谷の位置と規模を調査数する。砂礫段丘に段丘開析谷がある場合、貯水池からの漏水に気を付ける

谷側積載段丘 - Valley-side superposition-

段丘は一般に形成時期と起源で分類することが一般的です。起源とは、堆積低地が段丘化したフィルトップ段丘とフィルトップ段丘が侵食されてできたフィルストラス段丘(砂礫侵食段丘)。侵食低地を起源とするストラス段丘(岩石侵食面段丘)です。
 鈴木先生の段丘分類法の一つに、段丘堆積物の厚さによる分類があります。段丘崖の比高に対する段丘堆積物の厚さで、砂礫段丘、谷側積載段丘、岩石段丘、サンゴ礁段丘に分類する考えです。このうち、谷側積載段丘という用語は個人的あまり聞き覚えがありませんでした。貝塚先生が1952年に地理学評論で、Valley-side superposition という用語で短報を書いておられました。
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/grj1925/25/6/25_6_242/_pdf
 基盤岩石の表面起伏に対して河川がどの位置を下刻するかによって、ひとつのフィルトップ段丘が前面段丘崖を見る限り、部分的に砂礫段丘にも岩石段丘にも見えるというもので、一様な内部構造をもたす砂礫岩石交錯段丘ともいえるとされています。
   相模川流域の津久井湖周辺では、関東の地理学科の学生が伝統的に段丘地形の巡検を行っているようですが、教科書的な段丘だけでなく一見するとだまされやすく、古くても価値のある文献があるのだということを学ぶのにいい論文と思います。