2011年4月29日金曜日

千葉の地盤調査(2)

 先日千葉に地盤液状化の調査に行ってきました。新しい知見が得られましたので論文にするつもりです。それにしてもなぜここだけ電柱がそろって傾いているのか、、、ここは新旧の埋立地の境界だと思っています。古いほうは50年くらい前の埋立てだと思いますが、当時そこまでしか埋め立てられなかった地盤条件があるんではないかと思っています。

2011年4月28日木曜日

千葉の地盤調査(1)

 空地や公園になっているところが大体埋立地です。都会のど真ん中に周囲の道路と違和感のあるオープンスペースは、まず埋立地とおもってよいのです。やはり液状化は深刻でした。さらさらとしつ砂が大量に噴出しています。

2011年4月27日水曜日

建築関連雑誌の取材

 今日は建築関連の専門誌の取材を受けました。編集者は若い人でしたが、建物だけでなく地盤も重要だということを感じているとのことでした。既にメールのやりとりもさせて頂きました。

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 おっしゃる通り、住宅建築には地盤の問題が必ずつきまといますが、とりわけ意匠設計に携わる方にとっては、残念ながら関心の薄い分野であるようです。我々としましては、今回の震災を機に少しでも読者の関心を得られるような記事制作につとめて参りますので、今後ともご協力いただければ幸甚に存じます。

「自然は雄弁に語る」
これが真理なのだと改めて教えていただきました。
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 ここまで褒めていただけると恐縮してしましいますが、お二人も、建築は衣装が”花形”で、地盤条件を意匠の都合に合うように”片付けてしまう”ということが多いとおっしゃっていました。東日本大震災でも、建物そのものは全然損傷がないのに宅地が破壊されて結局住めないという事例が多々あったようです。地盤情報は”危険な情報””価値を下げる情報”とネガティブに扱われがちでしたが、いま価値観を換えるチャンス(いまかわらなかったらやばい)ですから、安全という価値の醸成にむけて、微力を尽くしてみたいと思っています。

2011年4月26日火曜日

想定外の液状化

 今日の神奈川新聞に「内陸でも液状化は想定外」という記事が載っておりました。もう想定外という言葉はさすがに聞き飽きました。要は「ハザードマップ」に記載されていない場所で”何かがおこる”と想定外という言葉を安易に使っているようにさえ見えます。以前あるいた我孫子市でも同じで、谷戸の軟弱地盤の液状化は「想定外」でした。明日は建築関係の雑誌の記者がこられるので、お互いの”想定”に対する考え方がどうか、聞き比べをしたいと思っています。

2011年4月25日月曜日

2万5千年の荒野 - ゴルゴ13より(2)

 さいとうたかおさんの先見の明、技術者倫理に対する問いかけ、綿密な描写、、科学とサスペンスを融合させたストーリー展開、、名作中の名作であり、新人研修にもいいと思い、社内で回し読みをはじめました。どういうリアクションがあるか楽しみです。

2011年4月24日日曜日

防災格言より

『 過去の教訓がそのまま役立つとは限らない。 
 行政は過去の例にこだわるが、 
 次の津波が以前の津波を超えないとも限らない。 』

 http://yaplog.jp/bosai/

 2行目がなんとも皮肉です。前例は「参考」であっても「基準」ではありません。古くからの集落が今回の津波に対しても安全な位置に立地していたのは、生活の舞台を作る地形が過去から繰り返されて出来たことを十分に踏まえていて、”記録に残っている前例以上の想定”を無意識に行っていたのではないでしょうか。

2011年4月23日土曜日

2万5千年の荒野 - ゴルゴ13より

 福島原発事故の発生以来、にわかに脚光を浴びているゴルゴ13ストーリーがあると聞きました。それが、1984年に掲載された『2万5千年の荒野』です。この作品は、原発事故以前から、かなり人気が高かったようです。

 さいとうたかをベストセレクション
 http://www.amazon.co.jp/product-reviews/4091794033/ref=dp_top_cm_cr_acr_txt?ie=UTF8&showViewpoints=1

 曲がりなりにも”技術者”と呼ばれる職業についていれば、心打たれるセリフ・シーンが多く出てきます。

 ・慣れが一番恐ろしいんだ。設計どおりであれば、機械は99%完全なんだ。人間の注意でいかしきれない。それが事故だ。機械に負けるなよ。

 ・問題がマシンではなく、マンだ。心ある技師の育成が重要だ。

 そして、私の”ツボ”は、自分が作ったプラントゆえに図面にも寸分の狂いもないと、自分の命と引き換えにロスを守ったバリー技師の言葉。私も(設計図ではありませんが)図面に関わる職業ですから、自分の図面に絶対の自信と責任を持ったこのセリフに凄みを感じたのでした。

2011年4月22日金曜日

古今書院と20年

 私が初めて古今書院から「月刊地理」を買って、丁度20年になりました。言い換えれば、大学に入って、そして故郷を後にして20年です。今日、その古今書院から書籍案内が届いておりました。封を開けたら「シリーズ繰り返す自然災害を知る・防ぐ 全9巻」でした。
 このシリーズは、会社で全て購入しています。いま、改めて読んでみると、第2巻 津波と防災- 三陸津波始末-などは、予言的迫力がありました。大変皮肉なことですが、その土地の成り立ちは、災害を引き起こす自然現象の繰り返しです。そして、それぞれの環境にいかに暮らしを対応させてきたか、その因果関係が「地の理」です。私自身を振り返ってみると、自然災害を「知る」20年から、防ぐために伝える20年にシフトしなければと思っていました。しかし、20年ごときでなにがわかる、と地の底からメッセージを受けたような大地震でした、

2011年4月21日木曜日

用語の問題 - 宅地破壊 -

 谷埋め盛土の滑動崩落、腹付け盛土の崩壊、地すべり、とても重要な課題なのですが、言葉がカタイなあという話をしておりました。そこで、社長が「主婦感覚で」ということで、ちょっとした女性陣による”ブレーンストーミング”が始まりました。

 ・液状化は言葉のシンプルさと臨場感で(TVで流され)一般化した。
 ・地すべり、盛土、斜面、、その時点で専門用語である
 ・崩壊といえば、”家庭”,”学級”崩壊を思い浮かべる(両方ともあってはならんが)
 ・被災写真を見ていると、結果として「破壊された」印象が強い
 ・言葉はシンプルかつインパクトがあったほうが良い

 ということで、谷埋め盛土の滑動崩落や液状化など、宅地の変状・災害に対して「宅地破壊」という言葉を用いてはどうかという話になりました。特に理系の人たちは論理的に考える癖がついているので、破壊や崩壊のプロセスに違和感を覚えた場合、用語として使うのに抵抗があるようです。谷埋め盛土は、埋立地の液状化よりは場所を特定しやすいため、対策も講じやすいと思います。でも、意識・注目されないことには対策が進みませんから、まずはこのような災害形態があるということだけでも考えてもらう必要があるので、用語にもこだわってみました。

2011年4月20日水曜日

貞観・慶長津波の論文

 産総研の「地質ニュース」に、869年貞観津波と慶長沖の津波に関する論文がありました。2006年の論文です。

 仙台平野の堆積物に記録された歴史時代の巨大津波
  -1611年慶長津波と869年貞観津波の浸水域-
  地質ニュース624号,36 ― 41頁,2006年8月
 http://www.gsj.jp/Pub/News/n_index/index.html
 
 PDFをダウンロード可能

2011年4月19日火曜日

先人は知っていた

私が自然地理学を志したのは、一般教養の時間に「地図は悪夢を知っていた」という、伊勢湾台風に関する新聞記事を読んでからでした。それから20年です、、、、

2011年4月18日月曜日

砂防学会のメッセージから

 砂防学会のHPに、会長からのメッセージがありました。確かに砂防関連の土砂災害は目立ちませんが、東日本大震災で大きな被害、そして今後の危険性が増していることは確かです。

 http://www.jsece.or.jp/indexj.html
 同時に報道などでは必ずしも目立ちませんが、強い揺れで緩んだ地盤では、余震によるものも含め、斜面崩壊、地すべり等の土砂災害が発生し19名の方々が犠牲になりました(4月14日,国交省砂 防部調べ)。そして、土砂災害が多発する震度5強以上の地域は17都県233区市町村におよび、そこでの土砂災害危険箇所は約4万箇所と多くあります。これらの地域では、今後の梅雨期、台風期に備えて砂防関係施設の点検等の早急なる処置と、通常よりも弱く小さい降雨でも発生する可能性が高まる土砂災害への警戒が必要です。
 
 津波と原発に話題を奪われるなか、谷埋め盛土の地すべり、砂防・治山堰堤の基礎も相当変状しているはずです。まさに、暮らしに密着した、等身大の防災が必要です。

2011年4月17日日曜日

まず知りたいことは、、

 原発関連のニュースを見ない日はありませんが、妻が職場の井戸端会議で「原子炉の構造やメカニズムを解説されても、専門家でもないしどうすることもできない。まず、自分たちの住む地域が安全な状態であり続けるのか、それが知りたい」。もっともです。
 いま、あんしん宅地という宅地診断のプロジェクトを進めようとしていますが、なかなか進展しないのは、どうしても宅地の危険性(安全性)に関わる理論的説明が充実していれば、顧客もついてくるはずだという、ある種の思いがあるからでしょう。ただ、危険のある宅地については、やはりできるだけ客観的な事実に基づいて伝えなければならない、、意外とリスクコミニュケーションの技術は進んでいないのではないかと思う今日この頃です。

2011年4月16日土曜日

活断層調査はなんだったか、、

 だいぶお酒が入りました。大震災以降沈滞ムードを解消するにはいい飲み会でした。上司が、「結局何億もかけた活断層調査ってなんだったか、、」とつぶやきました。
 私が大学に入学したころ「新編 日本の活断層」が”新着コーナー”にありました そして、卒業を控えた時、阪神・淡路大震災が発生しました。 そのあと活断層調査に膨大な予算がつき、私もリニアメントの判読の仕事に携わりました。 
 ところがその後発生した内陸地震は、いずれも”目立たないリニアメント”でした。2000年鳥取、2005年福岡、2007年能登半島など、、、そして、連動する巨大地震としては、俄然注目されていた東海・東南海・南海ではなく、どちらかといえば”単体?”でM7~8クラスの地震が注目されていた東北で連動した巨大地震が起こりました。ここは謙虚になって、無理に予知しようとなどど思わず、基礎的な研究を積み重ねる方がよいのでしょうか。

2011年4月15日金曜日

国道6号線の位置

 下山先生のブログに、国道6号線がどのような場所を通っていたか、今回の震災の津波の到達範囲とあわせて示されていました。


建物をつくるとはどういうことか-16・・・・「求利」よりも「究理」を


「陸前浜街道」は、明治の頃の道筋を基本的に踏襲しています。そして、「陸前浜街道」は、大半が津波の浸水を免れている、ということも分るはずです。と言うことは、「陸前浜街道」が結んでいた町々の「旧市街地」もまた浸水を免れていることになります。(略)scientific であるということは、「数値化すること、計算すること・・」では、ありません。(略)。私たちの目の前に広がって在る「歴史」事象は、単に、学校の歴史教科の教材ではありません。それらの事象には、この大地の上でしか生きることのできない人間の、大地の上での生きかたの経験と知恵がつまっているのです。それを認識し理解できない、というのならば、いかに「科学的」であろうが、到底 scientific であるとは言い難い、と私は思います。


なぜそこにあるのか、、、を常に問い続けなければいけません。

2011年4月14日木曜日

都会の華は東京タワー その憂い



都会の華は東京タワー、そんな歌詞の歌がありました。
桜が綺麗です。しかし、その奥の東京タワーは少し曲がったのだそうです。
少し憂い顔でしょうか。

2011年4月13日水曜日

新しい応用地質学会に向けて

 今日届いた応用地質学会誌の巻頭言に、上記のタイトルで千木良先生が寄稿されていました。内容はネガティブで、会員の高齢化や減少など、まるでいまの世相そのものを反映したかのような文章でした。中身を見てみると、論文が1本、解説記事が1本、物足りなさを感じるとともに、この論文・解説とも深地層研究所と電力中央研究所の方で、論点は「高レベル放射性廃棄物の地層処分」に向けた基礎研究と言った感じ。論文を作成、査読、印刷されている間は、東日本大震災は起こっていなかったでしょうから、なんというタイミングでしょうか。
 東日本大震災は、あらゆる専門家に対して新しいデータやパラダイムの変換をもたらすでしょう。地質学・応用地質学の新しい方向性は、2011・3.11から始まるといえます。

2011年4月12日火曜日

冷静であるために

 私は1995年の阪神・淡路大震災を経験しています。大阪在住だったので、建物の激しい被災はなかったのですが、震度5強のゆれは(しかも寝起きの時間)は衝撃でした。下宿の大屋さんやおばさん、近所の方は悲鳴を上げて外に出ました。
 でも、私はそのとき妙に冷静だったのを覚えています。今にして考えてみれば、兵庫県南部地震の発生する2ヶ月前に猪名川町というところで群発地震が発生していて、私の指導教授が住民にそのメカニズムを解説するというので、その資料作成をしていましたし、関西の自然災害史や活断層地形なども研究の対象にしていたため、”ああ、どこかが動いたな”という感覚がありました。
 今度の東日本大震災に関しては、ちょっとうろたえました。まさか、あれほどの長距離にわたり断層が連動するとは、、、そして、2年ほどまえ、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術の文献を調べたこともありますが、その課題が、こんなにも早く現実に直面するとは、、、
 原発の処理には10年単位の時間がかかるといいます。別の言い方をすれば、いまの小学生が社会人になる時間です。この間に、”放射能と理科離れを食い止めて”自然科学のリテラシーを国民的に高めておけば、mっと冷静かつ自立した対応ができるのではないかと思います。この東日本大震災で、日本の地質構造や地盤と災害の関係など、大変多くの貴重な知見・データが得られるはずですから、私たちも学び、伝えていかなけれればなりません。

2011年4月11日月曜日

M7に”慣れる”

 今日は1日に4回も緊急地震速報がありました。先日も福島県でM7.1の地震があったばかり。M7といえば普通の大地震の本震なみです(兵庫県南部地震がM7.2ですから)。数年に一度の頻度だったのが、ここ一ヶ月に集中しています。いかに、M9の本震がすさまじかったか。

2011年4月10日日曜日

疑心暗鬼が生んだ招かれざる危機

 明日で東日本大震災から1ヶ月です。長かった、、。いろんなことがありましたが、さすがに???と思い、そして困ったのは、買いだめでした。災害心理学がご専門の広瀬先生は、次のようなコメントを残されています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110410-00000121-san-soci

 そもそも、モノが作れなくなったわけではなく、わが国は生産力も備蓄もある。本当の危機ではないのに危機を起こしている。東京女子大学の広瀬弘忠元教授(68)=災害・リスク心理学=は「買いだめにせよ放射能からの避難にせよ、政府が『冷静な行動を』と呼びかけたことが意図とは逆に集団心理をあおった。こうした際に倫理的な呼びかけは逆効果なだけで、政府は買いだめや避難をしなくても大丈夫であることを裏づけるきちんとしたデータを示し、論理的に人々を安心させることが重要だった」と指摘する。

2011年4月9日土曜日

上司からのメール

ツイッター的内容ですが、文字数の関係でこちらに載せました。

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震災時の緊急調査・点検は、私もかなりやりましたが、大変勉強になります。与えられた調査は当然やるのですが、いろいろなところに自然災害の本質やヒントが隠れています。それを、記録したり、頭に入れておくと、これからの技術者としての技術力や幅をもたせる大きな力になっていきます。いかに、生の現場を見ているかは貴重な経験です。
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実は、この震災後、一番乱用された言葉に「基準値」があると思います。値の何倍かに翻弄されることなく、どこまで自分の「基準”知”」で行動できるか、それが技術力なのかなあと思ったりしています。震災後、いろんな自問がおおくなりました。

2011年4月8日金曜日

住宅被害は"意外”と少ない、、とのこと、、、

 京都大学防災研究所の調査報告で、住宅被害に関するものが2編、グーグルアラートで届きました。

 http://wwwcatfish.dpri.kyoto-u.ac.jp/~goto/eq/20110311/0402report.pdf

 M9.0や数百キロに及ぶ断層、大津波を見慣れてしまうと地味に見えます。

 また、千木良先生のグループは、長野県の”余震”で発生した地すべり・崩壊を中心に調査しておられ、住宅については「家屋の被害はかなり局所的で,主に 6 強の地域に限られるようである」とされています。

 http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/web_j/saigai/20110406_jiban.pdf

 大地すべり、いわゆる地すべりの巣の輪郭をつくるのは、やはり直下型地震によるものだと思った次第です。

2011年4月7日木曜日

M7.4の「余震」

 M7.4の余震がありました。川崎の自宅もかなり長い間揺れました。川崎の自宅では震度は3くらいだったのですが、長かった。M7.4といえば、普通は「本震」です。今回の東日本大震災をもたらした「本震」はM9.0です。いかにすさまじかったかがわかります。私の生業である斜面・渓流の防災は等身大。でもこういう調査を積み重ねることも大切で、自然現象のいろんな”スケール感”を体得できるのだと思います。

2011年4月5日火曜日

砂防学会の意見交換会中止

 私も発表する砂防学会の意見交換会が中止(自粛?)されました。

 砂防学会ホームページ 
 http://www.jsece.or.jp/indexj.html
  
 学会に行く目的の半分(それ以上か)は、研究発表会後の意見交換会で人脈を広げ、多くの知識を吸収することにあるのですが、それができないのは残念。特に20代から30代前半にかけての気鋭のある人材には貴重な場なのですが、、
 昔の仲間と、コアな飲み会をするか、、、

2011年4月4日月曜日

千葉県と香川県

 今日香川大学の山中先生が会社にこられ、ディズニーランド周辺の地盤液状化の研究報告をしてくださいました。先生の話によれば、今回の東日本大震災の被害、土地条件、香川県で想定されている南海地震を想定した地盤災害を考えると、震源との距離感、埋立地の被害など、千葉県の埋立地と類似する条件が多いとのことでした。決して対岸の火事とせず、不遜な言い方かも知れないが、今回の震災がもたらした地盤工学に関するデータ、壮大な実験として、地域防災に役立てなければならないとのことでした。

2011年4月3日日曜日

新しい宅地の谷埋め盛土の被害


 今日は宅地の被害調査をしておりました。上の写真は千葉県の新興住宅地です。ちょっとアングルがわかりづらいのですが、最大で50cm程度隆起した箇所や、道路の真ん中に一直線に発生したクラック、波打った道路などが随所で見られました。上の写真は、丁度切盛境界にあたります。そして、聞いた話では、この宅地が平成13年に開発された比較的新しい造成地だということでした。街区ひとつ違えば段丘の平坦面となり、まったく変状がありません。このほか、段丘の開析谷下流部の液状化、陥没亀裂など、多数発生していました。
 このような被害は、今回の震災で、最も報道されていない地味な部分です(上の写真周辺には、かなり傾いた家もあります)。でも、これからの生活再建、土地の購入など考える際に、避けて通れない、そしてURBAN LANDSLIDEとして、どこにでも潜んでいるリスクです。
 

2011年4月2日土曜日

東日本大震災でなかなか報じられない被害 - 地すべり

 原子力発電所と大津波被害は毎日報じられますが、私が長らく携わってきた斜面・渓流の災害についてはなかなか報じられません(渓流はあまりないようですが)。そんななか、今日のGoogleアラートで、今回の地震による斜面・地すべり、谷埋め盛土の被害についての報告が届きました。

 独立行政法人土木研究所 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震による地すべり・斜面崩壊調査(速報) http://www.pwri.go.jp/team/landslide/topics/tohokujishin2011-1/h23.3.31.pdf

 これをみる限りでは、2004年新潟県中越地震や2008年岩手・宮城県内陸地震で起こったような地形発達史を劇的に変えるような大規模な地すべりは発生していないようです。やはり奥羽山脈の地すべり地形を形成したのは、直下型地震なんだろうと考えます

 京都大学防災研究所 斜面災害研究センター 仙台市における宅地谷埋め盛土の地すべり
 http://landslide.dpri.kyoto-u.ac.jp/landslides-in-Sendai.pdf

 前者の地すべり地形は、地震や豪雨、融雪をきっかけとして発生した地すべりが、何万年と繰り返されてきた結果です。それは、豊かな生態系・地下水をもたらしました。しかし、後者の方は、本来繰り返されてはならない”URBAN LANDSLIDE”です。特に注目すべきは緑ヶ丘地区でしょう。引用しますと、

 太白区緑が丘では、緑が丘3 丁目と4 丁目で顕著な谷埋め盛土の地すべりが発生した。変動した範囲は広く、約150 棟の住宅が巻き込まれた。この地区は1978 年宮城県沖地震の際にも同様の地すべりが発生し、対策工事が実施されていた。3 丁目地すべりの北部ブロックでは、鋼管杭列の前面で圧縮、背面で引張の変位が認められる。杭は5 列設置されていたので、複数個の浅い小規模なブロックが連続する移動形態となっている。この事と地上に現れた杭頭の変位から推定して、鋼管杭は一定の効果を発揮したが、地表変位を完全に抑止出来なかったことが、広範囲の住宅被害に繋がったと考えられる。
 4 丁目地すべりでは、谷壁に貼り付けられた薄い盛土が変動した。地表変位は3 丁目地すべりに比べて大きい。1978 年宮城県沖地震の際にも同様の地すべりが発生し、地下水を排除するため集水井が施工されたとされる(現地では未確認)。

 とされています。注目度は低いですが、ボディーブローのように効いてくるタイプの災害です。そして、津波と比べると場所を特定しやすくハード面での対策もしやすいと思います。首都圏にも谷埋め盛土は無限にあります。喫緊の課題のひとつです。

2011年4月1日金曜日

時代と場所

 長い三月が明けました。世紀の大地震があってから特になががった。今日の神奈川新聞には、内陸部でも宅地被害が起こっているという旨の記事がありました。沿岸部の大津波では、「此処より下に家を建てるな」との石碑があり、その言い伝えを守ったゆえに助かったといいう話もありました。

 今日は新社会人が世に巣立つ日です。私の会社にも新人が一人入社しました。私は、自分が新人だったころ、初めての上司と同じ年齢になり、そして大震災の直後に社会人になる共通点があります。親と時代は選べないといわれますが、家を建てる場所、職場は選べます。

 家を建てる場所に関しては、職場よりさらに慎重に選ぶ機会があるはずと思います。ツイッターで防災科学技術研究所の井口さんは  「地震から3週間近く経ってようやく住宅地での地すべり災害が報じられ始めたようだ。これらのほとんどはおそらく盛土地盤。一方液状化による家屋の被害広い範囲に及んでいる様だ。もうそろそろ住宅tを立てる際には、宅地がどんな地盤か、造成前はどんな地形だったかを調べることが常識となってほしい。」  とおっしゃっています。

 まったくの同感であるとともに、ずっと前から言い続けたことでもあります。今回の地震では、首都東京が地震の「恐怖感」を共有しました。この機運をミスリードすることなく、長い人生の土台を安定させるためのアウトリーチが、今後我々専門家にますます求められてきます。

http://www.jstage.jst.go.jp/article/jls/46/2/90/_pdf/-char/ja/